京料理の有名店での修業歴がないと漏れ聞く佐々木氏のパフォーマンスが功を奏したのか、予約が取れない超人気の2つ星和食店。友里もやっとのことで建仁寺近くに移転後初めて訪問できました。
この店の特徴は、客が全員揃っての「一斉スタート」。17席前後のカウンターに18時30分に揃った客前で、料理が次々と端から出されていく様は圧巻でありますが、冷静に見れば単なる「ブロイラー方式」ではないか。有り難く入店する客が後を絶たないのが私には不思議であります。今回の初秋の料理は以下の通りでありました。
車海老やホタテ、柿の胡麻ソースの先付けはまったく凡庸。新イクラの小丼は山芋のタタキが乗っていましたが、甘すぎる酢飯にイクラがかなり濃い味調理で疑問。お椀はこの時期お約束の鱧松に冬瓜。甘めで濃い出汁は観光客向けで奥深いものではありません。
造りは煎り酒でいただく昆布〆の鯛。他にヤリイカや天然ハマチもありました。煎り酒は江戸前の調味料ではないかと突っ込む前に、〆た白身にこの調味料が合うとは思えなかった。続いて出たのが大トロの握り。刷毛がそえられて客が自分で醤油を塗るパフォーマンスであります。握りは一品だけかと思ったのですが、まだまだ続きます。金太郎鰯の握りは〆過ぎの鰯と酢飯がマッチせずこれまたがっかり。続いて紫ウニの握りまででてきたのにも驚きました。
子持ち鮎の揚げ物のあとまた出てきた江戸風が房州産の「蒸し鮑」。佐々木氏が3時間蒸したと説明しながら、壺のようなものから丸ごと取り出して客に切り分けて出すパフォーマンスなのですが、全然旨みを感じなかった。添えられた肝も変に酸っぱいだけでした。
コライユ入りの胡麻ソースをまとった伊勢エビも中途半端な出来でイマイチ。締めは単なる白ご飯でありまして、これで支払いが2万円台後半はあまりにCP悪すぎとしか言いようがありません。
伝統的な京料理を極めたてから考えたとは思えない「佐々木劇場」の創作料理の数々。18時30分一斉スタートの理由は、食べ終わった客が新幹線で東京へ帰れるからだと漏れ聞きました。20時過ぎにはそそくさと店を後にする客を見ると、通いつめる客はほとんど府外の人ではないでしょうか。話のタネに1回の訪問で充分と言えるでしょう。