奇を衒っただけの多皿料理、Fujiya 1935

「ミシュランガイド 京都・大阪版」で見事2つ星に輝いたスペイン料理店。ヨイショ系ライターの前評判が高いため、味のわからないミシュラン調査員なら星をつけると推測し、この夏先手を打って訪問しておきました。
洋食屋の息子が後を継いで「エルブジ風」のスペイン料理店に変更したとか。東京では代替わりしてフレンチにした洋食店がありますが、一時の勢いがなくなった「エルブジ」の模倣でこの先何年も大丈夫なのか。答えは数年後には出るでしょう。
完全お任せ多皿コースは8800円。まずは「モヒートのシャーベット」でスタートです。シャーベットと言っても泡だけ。何だこりゃ。ウニと鮑はチャコリ(白ワインベース)とバルサミコのソースでしたが、ポーション小さすぎで何食べたかわからない。「鮎の化石」というネーミングの料理には笑ってしまいました。なんと鮎の骨のフリット。中身はどうしたか気になっていたら、登場してきたのが「無脊髄の鮎」。残った鮎の中身なのですが、スポイトに入ったソースを垂らさせるパフォーマンスは時代遅れではないでしょうか。その他記憶に残らない小皿がいくつも出てきてメインに当たる鰻と豚で〆となります。
鰻のソテーは黄ピーマンのソース。この日唯一の「まずまず料理」でありました。かろうじて許容範囲。南の島豚は低温調理のようですが、色の割に火が入りすぎており、食材の質も悪いからかショッパイだけで旨みを感じなかった。デザートが2皿でコースは終わりとなりましたが、全部で12皿は出たと思います。
ワインはスペイン産の他、イタリアや日本ものがあり、5000円くらいから揃えているので頼みやすかったのが唯一の救いでありました。
ネーミングの凝り過ぎというか、変化球ばかりの奇を衒っただけの料理の連発。サプライズで一世を風靡した本家「エルブジ」も、さすがに息切れしたのか最近さっぱり評判を聞かなくなりました。
料理だけではなく何事も「基本」が第一。奇抜な手法とポーションの小ささで客の目を、食材の質や調理技術からそらせる戦略なのでしょうが、こんなことがいつまでも続けられるほど世の中甘いと思えません。基本に戻って質と腕でリピート客を増やす努力をしないと、本家同様早晩行き詰まると私は考えます。