伊丹十三監督の映画「たんぽぽ」が切っ掛けではないと思いますが、立地も良いのかこの不景気でも集客が順調なのが日本橋の洋食店「たいめいけん」。元は屋台の「ラーメン店」だったと地元の老婦人から聞いた記憶があります。月刊誌「めしとも」の洋食特集でこの秋3回訪問しての結論は、まったくの「名前倒れ」でありました。
料理は傑出したものを感じないのですが、特に1階は2階より価格設定をかなり安くしているのでオープンと同時にいつも行列が出来ています。価格なりの食後感(満腹になるだけ)なのですが、何も考えない一般客を引きつけるこの「ブランド力」には脱帽です。
今回は2階店に限定。実際の普請は別にして1階よりゴージャス感を出しており値付けも結構高い。でも忙しい客には有り難いことに、2階は昼でも並ばずに飛び込みで食べることが出来るのです。1階の店前に並んでいる行列客を横目で見ながら、その脇を通って2階へ上がっていけるわけですから、上から目線の客や優越感に浸りたい客の接待にはもってこいかもしれません。特に味わいに無頓着な客ならば、その時点で接待は成功です。
料理は価格に見合うかと言うとつらい普通レベルの洋食。その中でも高額(3400円)のビーフシチューは、ドゥミグラスソースがあまりに甘酸っぱすぎて私の好みではありません。肝心の肉も脂の塊で原価をケチっているとしか思えない。ハヤシライス(2400円)も同じく甘酸っぱさが際立っている代物。薄切り肉や野菜の量はまずまずながら、添え物のラッキョウがわずか3ヶはケチりすぎではないか。タンポポオムライス、伊丹十三風と銘打った名物料理でありますが、玉子の使用量が多いだけで、中身のチキンライスにプロの調理を見ることが出来ません。普通のオムライスより300円高い(2700円)のは、いくらトロトロ玉子とは言えふっかけ過ぎと判断します。最悪だったのが蟹コロッケ。蟹のツメ付きで素人客を喜ばせる演出のようですが、何気にツメ部分を触ってビックリ。冷たいではありませんか。造り置きして冷凍にしていたと推測します。洋食の定番ハンバーグもヌメッとしていて限りなくレトルトに近い食感。支払いは立派な高額店ですが、実態は限りなく「ファミレス」に近い店です。