景気の回復が滞っているこの時期にこれほど繁盛しているとは思いませんでした「五代目 野田岩」。丑の日のある7月は、昼は行列、夜は満席で予約が入りません。平賀源内が煽っただけで旬でもない時に食べる必要はないと8月になって昼にフリで飛び込みをはかったところ、簡単に出来ました。暑い中、行列までした「野田岩信者」にはご苦労様と申し上げたい。
デビューして6年、友里はこの「野田岩」に対し一貫して「天然偽装」をやめるべきだと指摘してきました。「吸い物の肝や肝焼きに釣り針が入っていることがある」と箸袋で注意を促し、店主が「天然鰻に拘っていて4月から12月までは天然鰻を、それ以外の時期は養殖鰻を出している」と発言していたら、純粋な客は冬以外の鰻は全部天然だと勘違いするではありませんか。しかし冬だけではなく春、夏、秋も仕入れる鰻の大半は養殖鰻なのです。天然鰻なんて1日に何匹もでません。それは仲居さんに天然鰻を注文したら、都度厨房へ確認しに行くことから誰でもわかることなのです。
さてこの日、メニューを見てビックリ。「白焼き」は今まで100%天然と言っていましたが、不漁の際には養殖を使うとの明記に変更。逆に天然鰻を意味する「中串」や「筏」がメニューから消えています。箸袋の「釣り針記述」は健在でした。
まずは霞ヶ浦の天然鰻という「白焼き」をオーダー。いつもより身が厚かったですが、風味や旨みがまったくない。ただの柔らかい「蒸し魚」であります。続いて違いを確かめるため、養殖と天然の蒲焼きを両方頼みましたが、やはり蒸しすぎで柔らかすぎです。天然鰻は風味(悪い意味での「臭み」)があるが味が薄い。同伴者にも確認させましたが、ブラインドで食べたらこの「野田岩」では、「養殖」の方が脂も乗っており美味しく感じるのです。私は世にはびこる「天然鰻神話」に物申したい。天然なら何でも美味しいというのは嘘。時期、産地(川)、場所(上流か下流か)と行き先(上りか下りか)に加えて、個々の個体差で味はまったく異なると。産卵で海へ帰る前の下り鰻(河口付近で餌を沢山食べた大きなもの)で当たりの鰻を「直焼」で食べたら、「野田岩」が仕入れる小さ目の「蒸しすぎ天然鰻」なんて食べる気がしなくなることを広く知っていただきたいのです。