放送作家など業界人が3つ星確実と騒いでいる京都の創作和食店。結論から言わせていただくと、業界人が泣いて喜ぶ高級食材(質を問わず)を盛り込んだだけの「賄い料理」。京料理でないどころか、和食でもなく単なる「業界人料理」です。
のカウンター8席の小さな店で、お任せコース1本であります。
まずは由良の赤ウニが小さな箱毎出てきます。ミーハーにはウケるパフォーマンスですが、烏賊と海苔と一緒に食べるこのウニ、どうってことない質です。続く酢味噌で食べるトリガイもまったく凡庸。そして造りはトロ。京都の和食屋でトロを喜ぶ関東人は業界人くらいではないか。フランス人が東京で出るブルターニュ産オマールを喜ばないというのをご存じない。関西では東京に敵わない白身が沢山あるのにもったいない話です。薄造りは「あまて鰈」と言われましたから島根産の真子鰈のことか。東京では常磐ものが有名ですが、この日唯一満足するものでした。鮑は生の薄切りを七輪で炙って肝ダレで。嬌声を上げる業界人の姿が目に浮かびますが、夏でない時期、和食で鮑を食べたいとは思いません。
竹の子は湯がいただけのシンプル調理。長岡産とのことでしたが、上質のものと比べかなり固い。琵琶湖の稚鮎はスタッフが七輪で焼きますが、焼きが甘いというか小さすぎて蒸し焼きみたい。風味もまったく感じなかった。ここからはこの店が得意とする「濃い味」攻撃が始まります。鯛の子の次は伊勢エビと竹の子の煮付け。出汁は濃いだけではなくかなり甘かった。生節を挟んで再び伊勢エビが煮込みで登場。これまた甘いだけの出汁ですが、その後のタケノコにふられた花山椒が全然利いていないのはいかがなものか。業界人が泣き叫ぶ料理はまだ続きます。大トロの炙り見て私は「出た?」と思わずつぶやいてしまった。シャトーブリアンをわざわざカツするセンスも問題ですが、深みのないドミグラスをキャベツがべちゃべちゃになるほど掛けて食べるのも気持ち悪い。トドメは〆にでた辛いだけの鮑入りカレーで支払い額3万円台後半。あまりに高過ぎです。
質を問わない偏った高級食材を使用しただけの濃い味賄い料理の連続。これで星がついたら、ミシュラン調査員も業界人レベルの舌しか持っていなかったと言うことです。