本物志向ではない郷土料理の入門店、インカント

ほとんどの州の料理を網羅していると思われる料理の多さとワインがウリのイタリアン。広尾駅からちょっと離れておりますが巷の評判は良いようです。店内の照明に加えてソムリエの性格も暗いからか、イタリアで感じる活気さはないですが料理の種類は半端ではありません。
オススメはインカントコースというプリフィクススタイルが6800円。アラカルトメニューからすべての前菜、パスタ、メインが選べる(300円から500円の追加料金の料理もある)システムは使い勝手がよいのですが、それぞれ15種はある料理、3皿を選び出すのが大変です。
郷土色を演出したいのか、各料理には「州名」が明記されておりますが、北と南では料理の傾向がかなり異なります。中国料理にも言えますが、一人の料理人がすべての郷土料理を習得することは不可能に近いはず。果たしてイタリア全州網羅的なインカント料理を2回食した結論は、「イタリア郷土料理の入門店止まり」でありました。
まずはアミューズが3種。マダイのカルパッチョが2回の訪問とも被っておりました。スープやキッシュを含めて可もなく不可もなし。温野菜(バーニャカウダ風)やカリフラワーのピクルスなど野菜料理は量があるものの郷土色を感じません。シチリアの代表的な鯖とフェンネルのショートパスタは悪くはないがシチリア専門店のデュープ感がない。蝦夷鹿と牛の赤ワインラグー、ピーチ(太麺)でトスカーナ風とわかりますがこれまた地元色が薄い。サルディーニャの屋台風という馬肉もどこがサルディーニャなのか理解できませんでした。トスカーナ風黒豚のヴァプールに至っては、火入れが強過ぎるのがトスカーナ風なのか。無難な調理で万人受けする「イタリア郷土料理入門店」と判断した次第です。
ワインは安くない。3万円前後のレアワインに関しては、中目黒の「イカロ」より5000円から1万円は高い。グラスワインは白・赤で20種ほどあるようですが、抜栓されたボトルは密封式のバキュバンではなく抜いたコルクをねじ込んだだけのものもありました。見た目も悪いですから統一していただきたい。
イタリア地元料理の経験が少ない方には良いですが、本場を知っている方には物足りない郷土料理店と考えます。