一昨年末に毘沙門天裏のマンション1階に移転した「石かわ」。カウンター7席のほか、個室が4部屋と大箱化が功を奏したのか見事ミシュラン3つ星に昇格しました。個室が接待客、カウンターは常連かミシュラン読者が主体と棲み分けしているようです。レストルームは豪華の一言。男女別でサティスの全自動、照明まで自動で点灯します。個人の和食屋でここまでの設備は初めて見ました。
この手の店のお約束で料理はコースオンリーで1万5000円と1万9000円の2コースです。久々の昨春訪問で1万9000円コースをオーダーしました。
この店の料理の特徴は、よく言えばしっかりした味付け、はっきり言えば濃い目の東京和食。ご飯ものを含めての9皿は、ほとんどがインパクトの強い味わいでありました。
ウニ、アスパラ、ウドの酢橘ジュレは見た目より強い味ながら悪くはありません。稚鮎などの揚げ物も質が良かった。アイナメと蒸しアワビのお椀も濃いめながら許容範囲内で美味しい。初ガツオのヅケタタキは新玉葱の揚げ物が添えられており、旨みの強さを全面に出したインパクトある一皿です。続いて出た松葉蟹なるもの、時期的には禁漁期間のはずで疑問。太刀魚とタケノコの焼き物で一息つきましたが、ミスジ肉の餡かけから更なる濃い味攻撃が再開です。続く真鱒の鍋物もこの一品だけでは誰でも美味しく感じる濃い目の調理。しかし最後の〆のご飯はやり過ぎでありました。新玉葱と子持ちヤリイカの炊き込みご飯、食材のミスチョイスというか、旨みの強い食材を無神経に使用しているとしか思えません。それぞれ単品で食べればそれなりに満足する調理なのですが、コースとしてのまとまりに疑問。例えるならば、4番打者ばかり並べたジャイアンツ打線のようなものであります。
高級食材の羅列ではないですが、ウニ、稚鮎、蒸しアワビ、カツオ、アイナメ、ふきのとう、クチコ、松葉蟹、ミスジ、太刀魚、真鱒、ヤリイカと種類は豊富。個々の皿は悪くはないがコースとしてのバランスが悪いのはもったいない。ミシュラン3つ星昇格直後の再訪でも相変わらず濃い味攻撃は健在でした。
お酒を飲むと3万円近くになる支払いを考えると、京料理の出汁に慣れた方には話のタネに一回の訪問で充分です。