XEXと出会って欲しくなかった、森本

ミシュランガイド2009年版では不掲載になると思っていた六本木の「森本XEX」。一民放のバラエティ番組で「和の鉄人」と祭り上げられてその気になった森本氏が、「サルヴァトーレ・クオモ」や「XEX」を多店舗展開する「ワイズ テーブル」と手を組んで六本木にオープンしたのが2005年9月。「和の鉄人」と自称している「アイアンシェフ」が選んだコンセプトは、鉄板焼きと寿司の融合でありました。アメリカでウケただけの似非和食料理人の凱旋が果たして日本の食通に受け入れられるのか。オープン直後に訪問した友里の感想は、「ただの鉄板焼屋」でありました。拙著「ガチミシュラン」の取材で久々に再訪し昨年の結論は、「単純に美味しくないだけの料理店」となりました。
現在はメニューが変わっておりますが、最高値のコースはどの料理も最悪。
バーニャカウダはアンチョビとガーリック以外に「蟹みそ」が入っていて仰天。車エビの鉄板焼きは黄身ソース。甘すぎてこれまたハズレの一品です。コースに入っていた中トロ、鮑、鰺の握り。スポイトで醤油をかけるスタイル以前に、肝心の酢飯、タネとも最悪に近い。牡蠣やウニだけではなくフォアグラにまでかかっていた甘い餡、鮑のジェノバ風と濃い味ソースの連続はいかがなものか。食材の質をごまかす手法としか考えられません。メインのわずか100グラムの和牛ロースにも驚きました。「森本ソース」なるものは、ゴマ油、ニンニクに生姜の合体で、質悪い肉の味を隠しております。100グラムですから肉は薄く、ミディアムレアを指定しても火が入りすぎます。肉自体も単に柔らかいだけで味わいに欠けるもの。コンセプトの中心である寿司と鉄板焼きの総崩れであります。濃い味料理の連続なのに、〆のガーリックライスだけが緩い味付けなのが意外でありました。
素材と鉄板焼きの技術を補う為に選んだ調理が「濃い味攻撃」。この料理のどこが和食と言えるのでしょうか。2年も続けてこの店に☆を提供したミシュラン、自慢の日本人調査員自体が経験不足で真の和食を理解していないという証左であります。
HPには「森本正治とXEXの出会い」とありましたが、出会って欲しくなかったと思うのは友里だけではないでしょう。