天麩羅、サービスと見ていてあまりに痛すぎる、天ぷら ふる河

東京カレンダー12月号の「真・東京和食」特集に、この30年あまりで「みかわ」に2000回以上、「神田鶴八」と「コート・ドール」に400回以上、「誠」に300回以上、「水谷」に200回以上、「木屋町菊乃井」に150回以上通い続けた人がついに自分で天麩羅屋をオープンしたと紹介されていました。これら6店の高額店を少なくとも3450回行ったということは、年に115回の訪問。焦げすぎの「みかわ」の天麩羅を2000回も黙々と食べ続けた忍耐力に感心し、これだけ偏った店訪問をする拘りの塊の人の料理をぜひ食べてみたいと私は思ったのです。
油面からかなり奥に入った住宅街の一軒家。その食遍歴から偏屈な主人だとの予想は見事に大はずれ。夫婦(奥さんはなぜかコックコート姿)とも謙虚というか素人丸出し対応でありました。
その日の客は我々だけでしたが、オープンして1年が経つのにオペレーションがまったくダメ。未だに女将に主人は燗酒のつけ方はじめすべてについて指示をしております。その主人の段取りもプロとはとても思えません。
1万5000円のコースは千枚漬け、上海蟹の後「みかわ」で12回教えを請うた天麩羅が始まります。綿実油で揚げた天麩羅、キス、メゴチ、ハゼと衣は色濃い割に全然カラッとしておらず海老も尻尾は食べられない。皮をとった穴子や柿は面白いですが、蛤は衣が厚すぎで人参、ブロッコリー、蓮根もプロの天麩羅とは思えません。普通の穴子の天麩羅は出ず、〆は穴子の炊き込みご飯に穴子の天麩羅を刻んで乗せた丼物ですが、正直言って全然美味しくない。素人揚げでも未だかき揚げ丼の方がマシだったと考えます。
天麩羅、サービスと何をとってもプロとはほど遠い店。夫婦の必死さや直向きさをモロに感じ、「東京カレンダー」や「東京最高のレストラン」に付箋を貼った自店掲載部分をはにかみながら見せてくれる仕草を見ると、なんとも痛くてはっきり評価するのをためらってしまいます。結構飲んで一人2万円弱を安いと感じるか高いと感じるか。
それにしてもヨイショライターの大谷浩己氏、「東京最高のレストラン」で「そこらのプロの天ぷらよりおいしいのよ」って、彼はまともな天麩羅屋へ行ったことがあるのか大いに疑問であります。