分とく山

総合 ×  味 △   サービス △  内装・居心地 △  CP △
オープン20年になるようで今年のとある日曜日、記念パーティをやっておりました。
1コースオンリーの和食として、誰でもわかりやすい味付けで多皿料理を提供したのはこの店が初めてではないでしょうか。今でこそ1万円、1万5000円コース1本という高額和食は珍しくありませんでしたが、当時としては画期的ではなかったか。
マスコミに有名で料理道具など通販事業にも勤しむ野崎洋光総料理長でありますが、実は「雇われ」で他店を食べ歩くことをほとんどしていないという実態をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
「東京グランドホテル」、「八芳園」といった宴会料理の比率の高いところで働いた後、20代後半と若く「とく山」へ料理長として入店、そのまま「分とく山」の出店と人生の大半を「とく山グループ」に捧げているのです。
他店を食べ歩くことなく20年も自店で創作料理を提供するにはかなりの想像力が必要でしょう。客の要望にも耳を傾けると聞きましたが、土台が宴会料理でその後もほとんど外気に触れていないですから、料理にはおのずと限界がでてしまいます。
良く言えば、誰にでもわかる味付けで質はともかく高額食材を使用した創作料理、はっきり言えば質を伴わない閉鎖された「野崎ワールド」の創作料理とうことです。
オープン当初と違って今は1億総グルメ時代。和食と言えば何でも同じというわけではなく、今は京都から有名店まで東京へ進出してきます。また京都へわざわざ京料理を食べに行く人も多い。同じ価格帯でももっと手の込んだ調理と質の高い食材を提供する和食が東京には存在している現在、江戸風でもなく京風でもない野崎料理、多くの人にわかりやく和食を広めた功績は認めますが、そろそろその使命は終わったともいえるのではないでしょうか。
私の正体がばれている店への訪問は慎重になります。予約は連れにしてもらったのですが、だまし討ちと言われないように、ギリギリの当日、友里が訪問すると店側へ連絡をしての訪問です。おかげで、カウンター内を見られたくないからか、はじめてテーブル席に座らされました。
レンコン豆腐は梅肉が強すぎか。続く前菜盛り合わせはクラッシュアイスの上に盛られているのですが、その中でニシンを真っ先に食べてくれとスタッフに言われました。何とニシンだけ温かいんですね。なぜ氷の上にこんな料理を配するのか不思議です。麩と桃の胡麻和えも食材がマッチしているとは思えませんでした。
お椀は鱧真丈。カツオの強い出汁は別にして、この価格なら鱧そのものを出してもいいのではないか。甘いだけで肝心の鱧の味がしません。
造りのカレイ、鮑、烏賊は普通、太刀魚はイマイチでありました。
夏タケノコに鮎塩焼きですが、すでに骨抜きされた鮎、1匹分ないのでは?焼きもかなり緩かった。
その他、ジュンサイ、鱸、鮑などのアイテム食材がでて〆のミョウガご飯となりましたが、ここのところ京都での食事が続いたこともあり評価基準が上がってしまっているかもしれませんが、以前の私の評価(低評価)を覆すほどの料理には出会えませんでした。
大量生産に近い野崎氏の「独学和食」。同じような価格帯で1つ☆の「小室」や「うち山」の方がまだ本格的な和食の雰囲気(調理も含めて)が楽しめるでしょう。「小十」の1万4000円弱の料理の方がはるかに完成度は高い。
敢えてこの店をオススメするとしたら、高額和食の未経験者か初心者向けだけか。
京料理を知っている人だけではなく、外食好きや和食好きな方にオススメするには無理がある店と考えます。
最後に。連れが是非書いてくれと言った酒類の件であります。
品揃えがプア。焼酎は「黒丸」主体に他に1種だけ。日本酒も常温は「八海山」の本醸造だけでした。
シャンパンやワインを揃える前に、肝心の和系の酒類の充実が先決であると考えます。