「ホテルの鉄板焼きに個性なし」は友里の定説であります。肉質、調理法、サービス、支払いと、どのホテルでも似たり寄ったりの「脂まみれ料理」だと思っていたのですが、ウエスティンホテルのミシュラン1つ星店「恵比寿」だけは別格でした。何が違うかというと、それは価格。なんと最高は5万円を超えるコースまで用意しているのです。他のホテルの倍に当たる高額コースに興味を抱き、今回は個室利用の接待という滅多にない店訪問での評価であります。
いくら接待といっても限度があるため選んだコースは上から2番目の4万2000円。清水の舞台というより、「恵比寿」のある22階から飛び降りたつもりの決断です。
まずは各自にドンペリが1杯。フレンチでは1杯4?5000円するこのシャンパン、無理に入れて高価格コースにする「商売上手」に脱帽です。
続くは伊勢エビのジュレ。バルサミコとトマトのソースが緩い凡庸な一品です。大トロの炙りは何のことはない鉄板でさっと火入れしただけのもの。これって「炙り」というかと突っ込む前に添えられた山葵をみて唖然。客単価5万円する超高額コースに堂々と「混ぜ山葵」が添えられているのです。客を舐めんなよ!
フォアグラは一昼夜西京味噌につけたものですが、質が良ければ鉄板でソテーしてバルサミコでシンプルに調理した方が美味しいはず。味噌に漬け込む必要はありません。
伊勢エビ(半身)も最近は有り難がる人は少ないのではないか。柚風味で、私には余計な一品。ドンペリと共に外してでも値下げしてもらいたかった。
かなり前から時間をかけて端の鉄板で調理していた鮑の岩塩蒸し、ガーリックか岩海苔のソースのどちらかのチョイスなのですが、こんなソースに頼る鮑に質を期待してはいけません。
サツマイモ、豆腐、万願寺唐辛子、椎茸といった焼野菜がこの日の唯一の納得料理。主役の松阪牛にも「混ぜ山葵」がでてきて興醒め。種々あった調味料では玉葱ソースが唯一○でした。
〆では各自ガーリックライスや饂飩などを別々にチョイスできる柔軟性はありましたが、値付けの高いワインリストから最安値に近い物を選んでも一人当たりの支払いが5万円前後。CP勿論×で総合評価も当然×。夜景がお好きな方以外は近寄らなくて良いでしょう。