本日で友里征耶の「行っていい店わるい店」はお休みさせていただきます。半年にわたりお付き合いいただきまして有難うございました。さて最後の店はどこにしようかと考えた結果、来月の参考になればと4月限定の料理を出す店にしました。
どこが「江戸料理」なのかさっぱりわからない大塚の「なべ家」。客を呼び込むため季節毎に、手を変え品を変えた料理を出してきます。5月の「川鱒」や6月の「鮎」の時は店名と違って鍋を出しませんが、4月限定の料理は、大谷浩巳氏などヨイショ専門のフードライターたちが絶賛している「ねぎま鍋」であります。
昨年4月に訪問。突き出しは、うるめいわしと甘い玉子焼きは本当にワンパターン。これが「江戸料理」だと開き直られたらそれまでですが、どうってことないもの。しかもこの玉子焼き、口に含む瞬間、油の匂いをモロに感じます。毎回一品変わる突き出しの皿は、鮪のヌタ和えでした。まったく凡庸だったのは予想通りであります。
続いてお椀の代替なのでしょう、「豆腐粥」の登場です。出汁はカツオが強過ぎですし、安くて手間のかからない椀タネですから調理は楽なものです。
造りは鯛とさよりで、炒り酒が添えてあるだけの平凡な質でありました。
毎回こんなもの出さなくていいと思う「出汁入り蕎麦」も健在。蕎麦は他店から仕入れているとも聞きましたが、この出汁が甘すぎて話になりません。
そしてメインのねぎま鍋。ぶつ切りというか角切りが一人4片にセリ、若布、白葱、ウドなどが添えられています。身が厚いとはいえ、かなりお歳を召された女性スタッフは火入れに寛大なようで真っ白になった鮪を鍋から取り上げます。かなり大量に胡椒を掛けることを推奨されますが、脂がしつこい鮪(質が良くない)を使っているからと読みました。そして〆は白飯にこの出汁をかけた「汁かけご飯」であります。うーん、油臭い玉子焼き、カツオ強すぎの豆腐粥、平凡な質の造り、出汁に鮪と野菜入れただけの鍋、と高度な調理レベルをまったく感じないこの「江戸料理」。お酒を飲んで一人2満数千円でしたから、「ねぎまコース」は1万8千円ほどと読みますが、家庭料理の延長線上としか思えないだけに、4月限定という「釣り文句」に引っかかって訪問する必要はないでしょう。