この値付けでなぜ客が入るのか、リル ナゴヤ

名古屋地区が活況と聞きますが、ここまで景気がいいとは思いませんでした。無茶苦茶値付けが高いのに連日盛況なのが名古屋駅前ミッドランドスクエア42階の「オーベルジュ・ド・リル ナゴヤ」。フランスはアルザスの3つ星と東京の1つ星「ひらまつ」を経営するひらまつグループのコラボ店です。
天井は吹き抜けのように高く超ド級のシャンデリアは木製と内装は豪華過ぎ。ダイニング系デザイナー森田恭通氏の作ですから成金的になるのは仕方ないのですが、本店のオーベルジュへの訪問経験ある同伴者はその乖離に驚いておりました。
ワインリストも宝石箱のようなゴージャスな装丁で高いものしか揃えていない。アルザス料理店なのにトリンバック社のリースリングを1万2000円以上しか揃えていないのはいかがなものか。ネット小売りで2000円チョイのものがあるのになぜ提供しないのだ。ノンヴィンのシャンパーニュも1万500円。ネット小売りでは4000円未満ですからこれまた高い。地代や内装費が高いのはわかりますが、これはやり過ぎというものです。
料理はアラカルトの他、コースが8400円から最高値2万6250円と値幅広すぎでコンセプトに疑問。初回と言うことで我々はスペシャリテを盛り込んだ2万1000円コースにしました。
コロッケなど一口タイプのアミューズは凡庸。ウニのカクテルもズワイやニンジンムース、トマトジュレなど今どき珍しくないレシピで普通。スペシャリテのフォアグラテリーヌは濃厚で塩が利いて美味しかったけど、他店との違いがわかりません。グルヌイユのムースは酸っぱすぎるソースがイマイチ、オマール赤ワインソースも殻の出汁の使い過ぎか濃すぎてオマール自体の質がわかりません。メインの蝦夷鹿だけは美味しかった。
期待の割に傑出する料理はなく、請求額をみて食後感は最悪になりました。5万も6万もする高いワインを薦めるソムリエに抵抗して安めのワイン(といっても絶対値は高い)を適度に飲んで一人5万円弱。13%のサービス料も利いているでしょうが、これではまともな自腹客は訪問できません。平松宏之氏には、あの西麻布の「ひらまつ亭」から有栖川へ移転した頃の良心的なワインの値付けを思い出していただきたい。自腹客をないがしろにし、経費族しか相手にしなかったら料理のクオリティは保てません。