友里のネタ本の一つ、「東京情緒食堂」を読んで驚きました。進出してきたとは聞いていた銀座「鮨 青木」の支店ですが、同じ建屋の地下にもう一軒鮨屋が出ているんです。その店名は「野じま」。主人は銀座「からく」出身とのこと。
しかし600、700あるという銀座でも同じビルに2軒寿司屋があるビルはそうはないと思います。思いついたのは「さわ田」のあるビル地下に確か旭川だかの寿司屋があったくらい。
それが住宅街の一角にある建屋に鮨屋が2軒。大丈夫なんでしょうか。西麻布の地番には街場寿司ではない予算1万数千円以上のいわゆる「高額鮨屋」がかなり乱立しています。先日のミシュランで星をとって一息ついている店もありますが、必ずしも集客が順調な店だけではありません。そんな激戦区になぜ進出してくるのか。私が思うに隣の六本木の方が鮨屋の数は少ないのではないか。地代が六本木より安いからか、隠れ家的にオープンできるからか、単に物件が余っているだけなのか。
寿司屋(鮨屋)は修業歴がそれほど要求されない職種というのが友里の定説。
「鮨 なかむら」のようにまったく修業していない主人の店もありますし、「さわ田」もそれほどの歴があるわけではありません。件の「青木」もオヤジさんが急逝して継いだはずですから、それほどの期間はないと思います。
つまり、蕎麦屋と同じで短期間で資金とやる気さえあれば独立できる職種なんですね。数年前に鮨屋のオープンラッシュが続くだろうと書いた記憶がありますが、本当にここ数年でどんどん増殖しているようです。
ざっと西麻布の高額鮨屋(寿司屋)を思いついただけ挙げてみますと、
青木、野じま、おすしやさん、藤森、廣瀬、いのうゑ、ゆう田、真、海心、まさ、はせ川、小笹すし、拓、山路、たか、などなど。
今回星がついたゆう田、真、拓もそんなに盛況だったかどうか。そして中村工務店が受け持った「青木」、かなりの投資額になるはずですからCPを期待できないのではないか。銀座の2番手だった人が店長を勤めているようですが、彼もそれほどの歴があったかどうか。確か関内の「はま田」の後に2番手になったはずですから、2番手の歴は数年のはずです。
鮨ブームが相変わらず続いているようですが、客単価2万円前後の鮨屋が同じ地番にこれほど多く存在する現実。フレンチで2万円払う人は少ないのに鮨屋では抵抗感がないというのは不思議であります。鮨ブームで修業に入る若い人も増えていると思いますが、このまま彼らが数年の修業後に独立していけるかどうか、私はこのまま増え続けることなくいずれ見直される時期が来るのではないかと考えます。
西麻布は高額鮨屋だらけ
銀座に超高額カウンター洋食屋はいかが?
本日は11/14の「洋食屋」の続編に位置するものです。
銀座や下町以外の土地で苦戦しているフレンチシェフ、イタリアンシェフに提案であります。思いきって銀座に出てきて、既存の高額洋食屋と違う、もっとその存在意義を強調する店を造ったらどうか。
銀座と言えばやはり「同伴客」の存在は無視できません。彼女らにとって、バッグ、時計そして食事もその判断尺度は「価格」のみであります。つまり、質よりもまずはどれだけ高いものを貰うか(すぐに換金するんでしょうけど)、高い店へ行けるかということ。高いけど内容は家庭料理の延長線上の「割烹 室井」が同伴系で流行っているのがその証左であります。
また、手間かからず調理時間が短いのも同伴には魅力。出勤の時間的制約があるので、時間を気にせずカップルは完食できるというものです。そうワインを沢山飲める環境ではないのでスポンサーはベロベロにならず、自店でボトルを追加させることもできます。
また、経費族である年配客の出没頻度も高いのが銀座。馴染みのクラブへ経費で通う前の食事や経費接待などの利用価値も多い。
大箱にせず、カウンター形式で客単価が数万円の洋食屋、ブランド食材だけを使って調理すれば、高いことが一番の魅力に思う女性を伴う同伴客(彼らも経費族でしょうけど)や年配経費族、接待族にはウケると思うのですがいかがでしょうか。
松阪牛のハンバーグ、シチュー、ステーキだけではなく、大間のマグロのフライに青森のヒラメのカルパッチョ、ブルターニュ産オマールのフライ(こんなの出来るか?)、玄界灘のフグのカラ揚げ、イベリコ豚のポークソテーやカツレツ、季節によってはタケノコ、マツタケ、白・黒トリュフ、そしてフォアグラやベルーガを使うのもいいでしょう。とにかく食材同士の相性など関係なく(濃いめの味にしておけば同伴カップルや年配経費族、業界人は大満足)、高級食材の羅列で客を釣るのです。村公一さんの鱸や鯛を使うのも高額化に貢献しますね。
銀座では、客単価1万5円千以上のカウンター家庭料理?「榮庵」がありますが、この店はワインをボトルで頼まなければならないので同伴客などには使い勝手が悪い店。「みかわや」など他の洋食屋も同伴や接待としたらちょっと物足りない価格なので、ここは思い切った値付けのカウンター洋食屋を開いてみてはいかがかというのが本日の提案であります。
和食の修業をした人が出した「鮨屋」が六本木で流行っている近頃、元フレンチシェフや元イタリアンシェフがもてなす「超高額カウンター洋食」、キャッチ的にもうけると思いますし、何しろ仕込み含めて手間かからず相当な付加価値を付けられますから魅力あるビジネスモデルだと考えます。
このビジネスモデルのステーキ版が集客に成功している「かわむら」です。
住宅街などで客単価数千円のフレンチ、イタリアンで集客に苦戦しているシェフの皆さん。安ければ入るというわけではなく高い方が入るという立地、客層は存在すると考えます。
ブランド食材に弱い業界人もふくめて他腹な客専門の店にチャレンジするのもいいかもしれません。
本日発売の週刊現代をご覧ください
まずは宣伝です。本日発売の「週刊現代」に、ミシュラン特集「行ってはいけない!『ミシュラン東京』」というタイトルで3ページの署名記事(P.190から)を掲載しております。
発売後、俄かに批判を始めた自称料理評論家やフードライターたちとはまったく違った切り口で展開、ミシュランが選んだ「行ってはいけない店」を15店、「納得できる店」を10店など列挙しておりますので、できればご購入いただいてお読みいただければ幸いです。
さて読者の方からも聞かれた「本当にミシュラン調査員は凄い人なのか」という質問にあっさり答えさせていただきます。
「フランスやスペインを担当している人でさえ、たいした人ではないと思いますよ」これが私の答えです。
昔はまともな調査員もいたでしょうが、今は能力があればどんどん独立してビッグ(昔こんな言い回しをして顰蹙を買ったタレントがいましたね)になれる時代です。
本当に皿(料理)だけで食材や調理を評価できるほどの能力があったなら、数百万円という報酬でミシュランに雇われる事に甘んじるはずがないからです。食評論やコンサル、プロデュースなどでとっくに独立している。
複数いる覆面調査と言う神秘性を隠れ蓑にしていますが、一人で覆面調査できるほどの自信のある人は居ないのではないか。
特に東京版は、料亭など雰囲気だけの店に高評価していますから、外人、日本人含めて調査員は正確な舌の持ち主ではないと思います。
「良いワインリスト」の店と言うのも何を基準にしているのか。ただ古いワインを並べているだけの「あら皮」、高い値付けの「キャーブ ひらまつ」、「トロワグロ」、「コジト」、「ロブション」など、調査員はどこを見ているのか。「サン パウ」や「カンテサンス」のようにアイテムだけでストックが1本とか品切れ続出の店にも葡萄マークがついていました。調査員は舌の能力とともにワインの知識や経験も乏しいと考えます。
星発表から2週間。これだけ出版系で批判されていますから化けの皮をはがされたというか、巷の熱気も冷めてくる頃でしょう。増刷されたミシュランがそろそろ店頭に並ぶようですが、企業協賛のロゴ入りミシュランが社内で有り余っている現在、更なる増刷はかなり先か、もしくはないのではないかと推測します。