最近は業界の裏話などディープな情報をいただいており、ネタ切れを心配することが少なくなりました。ここにあらためて御礼申し上げます。
本日のネタも読者の方からの一報であります。
来年2月の3日間、世界的に有名なシェフたちを呼んで、東京フォーラムで開催される「世界料理サミット」をご存知でしょうか。
http://www.zakzak.co.jp/top/2008_02/t2008021931_all.html
http://www.tokyotaste.net/jp/greeting/greeting.html
参加予定のシェフは、フェラン・アドリア(エル・ブジ)、ヘストン・ブルメンタル(ファット・ダック)、トーマス・ケラー(フレンチ ランドリー)、和久田哲也(テツヤ)、ガニエール、ロブションなど錚々たる顔ぶれ。
業界の人材育成、交流促進、日本食文化の普及、食育に対する関心の向上などを基本方針にしているようですが、有名シェフによるデモ、イートインによる料理の提供、スポンサーのワークショップ、食育の普及・推進、展示会などで構成されるようですから、業界関係者だけではなくグルメ、一般人、ミーハー客を最大のターゲットにしようとしているのではないかと考えます。
実行委員会(理事会)の理事長がキッコーマンの茂木会長、その他理事には味の素、外食産業向け卸、そして三國氏、村田氏、脇屋氏、片岡氏など有名露出料理人まで名を連ねていますから、その思惑が見えてくるというものです。
活動実態があるとは思えない「日本フードアナリスト協会」の検定試験委員である力石氏(飲食業界、ホテルなどのコンサルグループの代表)や田崎信也氏も嗅覚するどいのか理事になっておられます。そしてあの服部校長も実行委員長に就任。服部学園関係者として、校長の妹さんや息子さんまで理事になっています。この理事構成、ちょっとおかしいと思いませんか。しかも息子さんまで服部姓ですから驚きです。小山薫堂氏も理事になっていますから、理事のステイタスってまったくないに等しいのではないか。
このメンバーを見てしまうと、この「サミット」の狙いの一つが見えてしまう気がします。商売上手な方、「食育」を商売にしようとしている方がかなり集まっていると思うのは友里だけではないでしょう。
しかし、「食育」とは「国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組みを指します。」とあります。
最近は自宅で出汁をとっている家庭がどのくらいあるでしょうか。業務用加工食品に必ずと言っていいほど入っている味の素、もとい化学調味料、いや旨み調味料でしたっけ。鈍感なJ.C.オカザワはてんこ盛りの「忠弥」の煮込みや焼きトンを絶賛していますが、私も必要悪というか廉価な料理には避けられない魔法の調味料だと思います。でも、その利便性から本来の「食文化の継承」が阻害されてはいないでしょうか。
堂々と「食育」をテーマにしている催しに、旨み調味料会社が参加しているところが私には理解できません。
決して存在を否定しているわけではありません。混ぜ山葵と同様、それなりの食材や調理には必要だと思いますが、自称とはいえ「サミット」と崇高なタイトルをつける会合に、表だって「旨み調味料」がでてくるのにちょっと違和感を覚えるのです。
化学調味料が大好きなマスヒロさんやJCも理事に就任されると完璧な理事構成になりますね。
「世界料理サミット」とは」何だ?
「モウラ」更新 松濤のフレンチ「シェ・松尾」
月曜に予告しましたとおり、今日の「モウラ」ではミシュラン調査員がいい加減な調査・取材をしているのではないかといった問題提起をしております。
レストランは松濤の「シェ・松尾」。
このフレンチは良いワインリストがあるとして「葡萄マーク」がついているのですが、渡されたリストを見て頼もうとした我々へのソムリエの発言に唖然、仰天!
詳細は「モウラ」をご覧ください。
http://tomosatoyuya.moura.jp/
ワインの値付けを高くして本当に利益が増えるものなのか
料理の価格に比べてワイン価格が高過ぎると思ったことはありませんか。
「ジョエル・ロブション」のベルゼローゼ シェフは「日本には知識や価格に精通したワイン通が多い」みたいなことを言っていると一昨日のブログで紹介しましたが、私は逆に日本の客はワインの値付けに「鈍感」な客が多いと考えます。
店でワインをボトルで頼む客は自腹ではなく経費で落とす人が多いので、「高い安い」を気にしないということでしょうか。ソムリエのおススメに何のためらいもなく、高額なワインを頼む客も多いようです。
ノンヴィンのシャンパーニュに1万円以上、そのシャンパーニュのグラス価格が2000円前後の店も見かけますが、この値付けは暴利ではないでしょうか。例外を除いてネットでは5000円以下で個人でも簡単に買えるノンヴィンシャンパーニュ。小売りのワインショップの粗利は3割と聞きますから、店の仕入れは4000円前後と考えるのが普通でしょう。
それをボトルで倍以上、グラスに至っては2杯売ったら元取れることになりますから。(実際は8杯グラスでとれると思います)
料理はどんなグランメゾンでも一皿1万円を超える値付けは難しい。食材費や調理代がゼロとしても荒利は1万円ないわけです。
ところが、ワインでは保管期間など在庫のリスクがありますが、簡単に2倍、3倍の値付により何万円もの粗利が一瞬に稼げ、それを頼む寛容な客がいる。一度経験したら離せない甘美な営業方針なのでしょう。手間暇かかるレストランのメイン商品である料理より稼ぎがいいのですから、気持ちはわかります。
しかし、果たして総合的に売り上げ増大、利益利増大に寄与しているでしょうか。
具体的な例を挙げます。ワインの値付けの安い「ボン・ピナール」、すべてのワインが安い値付けなのですが、ノンヴィンのシャンパーニュの中では人気で高額な「グラン キュヴェ」という銘柄、1万6000円ほどで提供しています。
しかし、このシャンパーニュ、ほとんどの店では3万円前後としているはずです。ひどいところでは3万5000円近くの店もあるくらいです。
5?6年前、私はインポーターから直接7000円ほどで購入した記憶がありますが、その後ユーロ高、値上げがあったとしても、店売りの1万6000円以下であるのは誰でも想像できます。恐らく、仕入れは1万2000円から1万3000円くらいでしょう。
この「ボン・ピナール」、ワインの値付けは掛け率ではなく、仕入れ値に数千円を加えて売値にしていると聞きましたから、高級ワインになるほどお得感がでるわけです。
ワインの元値を知っている客ならば絶対にレストランで3万円の「グラン キュヴェ」を頼まないのですが、数千円アップの1万6000円ならば喜んで頼む客も多いはず。
ワイン好きというのは面白いもので、値付けが安い、つまり市場価格とそれほど乖離していない場合、2万、3万いやそれ以上高いワインでも頼んでしまう習性があります。しかも、次から次へとボトルを開けてしまうこともあります。
つまり高い値付けだと我慢して1万円くらいのワインを1本しか頼まないところを、安い値付けだと2万円以上のワインを2本、3本頼んでしまうこともよく見る光景なのです。
倍以上の粗利を取っても安いワイン1本では粗利は6000円ほど。3000円の荒利しかとらなくても2本飲んでもらえば荒利は60000円で売上は4万円、3本飲んでもらえれば粗利は9000円で売上は6万円増えます。
例え粗利が同じとしても売上が増えれば信用力は上がるはずです。
絵に描いた餅というのか、粗利の大きなワインでの儲けを夢見ながら実際は在庫の山で売上が上がらない店にするか、粗利は少ないけどワインの回転が早く、結果売上と荒利が稼げる店にするか、それは経営者の考え次第でしょう。
ワインに釣られた客も増えるでしょうから、少々料理に難があったとしても流行るというのも、値付けの安いワインの店の強みであります。