多くの方の予想通りと言いましょうか、キリンとサントリーの統合交渉が決裂したとの報道がありました。
上場企業と非上場企業(しかも創業家が支配)がどうやって統合出来るのか興味津々だったのですが、企業風土の違いと言うより創業家社長とサラリーマン社長の考え方があまりに違いすぎて決裂したと言えるでしょう。
決裂の原因はいくつか挙げられているようですが、主因は創業家の扱い。合併比率の主張の差はすなわち、創業家(佐治家など)を排除するかしないかであります。
大マスコミである新聞社はじめよくサラリーマンが社長をやっている会社は、「経営の独立や透明性」を主張して大株主や創業家を経営陣から排除したがります。サラリーマン社長が、横から口を挟まれて自分が思うように経営できなくなることを嫌っているだけなのですが、その大義名分がこの「独立と透明性」。
しかしこの理論で行けば、株を沢山持っている人や創業家は全員、企業コンプライアンスを守らない不透明な考えの持ち主で、しかも経営者としては「アホ」で使い物にならないということの裏返しであります。
現トヨタはどうかわかりませんが、確かに上場・非上場を問わず創業家の経営者の中にはアホで経営者としては使い物にならない人も多くいたでしょう。でも、それはサラリーマン社長も同じ事。
現在のJALを挙げるまでもなく、大企業でさえ、官からの天下り社長やサラリーマン社長も、ろくでもなく無能な人が沢山いたはずです。
問題は創業家かどうか、株を多く持っているかどうかなど全く関係なく、当人の資質だけのこと。
創業家の人でも経営者として有能な人もいるはずです。サラリーマンだけが有能であるはずがない。また、試験勉強が出来るのと経営判断もまったく別物であります。高級官僚がうまく会社経営できないという歴史がそれを物語っております。
会社の経営は出自で判断するのではなく、個人が有能かどうかで決めるべきもの。単に「ゴマすり」が旨いだけで出世街道を驀進するする人が大会社には多いのですが、真に会社や不特定多数の株主、そして取引先や社員などステークホルダーのことを考えたら、「ゴマすり人間」ではなく、扱いにくくて小生意気でも有能な人間を役員や後継者に選定するべきと私は考えます。
昨年11月のトップ会談(加藤キリン社長と佐治サントリー社長)で、キリン側の合併比率の提示(1:0.5)に佐治社長が激怒したとありますが、これは加藤氏が佐治氏へ面と向かって「あんたはアホだから新会社の経営に口出さないでくれ」と言ったようなものではないでしょうか。
少なくとも、「あんたは私より無能だ」と言っているのは間違いない。
本当に佐治氏の能力が新会社に必要だと思っていたら、このような態度には出なかったはずです。
要は、株を沢山持っているか持っていないかではなく、会社にとって真に役に立つ有能な人間を経営者に選ぶという「内規」を確立すれば良いだけのことだったのです。
大株主だろうが創業家だろうがサラリーマンだろうが元官僚だろうが、無能な人が社長になるのは、ステークホルダーにとって悲劇以外の何物でもありません。