飲食店はリスク管理が甘いのではないか

1月28日のブログに書きました「あぶらぼう」問題。「有毒魚」の名前だと知らずに似た呼び名の魚をその名で出してきたのはいかにも勉強不足というか、いい加減。その魚を使う事を決めた料理長の失態であります。経営側も素直にその失態や管理不足、料理長の教育の問題について反省の弁を述べればよかったのですが、ただ「良い勉強をさせてもらいました」とだけの木で鼻くくったような対応は、友里でなくとも誰でも憤慨すると思います。
リスク管理というのでしょうか、何かあったとき、不具合があたっとき、どう対処するかでその後の経過はまったく変わると考えます。パロマの不具合、近いものでは不二家もそうですが、リスク管理が確立されていない店や会社は後手後手にまわってしまって信用を失う事になります。畑違いですが、私の本業の機械関係では、クレームや不具合をいかにうまく処理するか、その如何によっては、不具合前より客の信頼を得る事が出来ると言われております。
この有名店の事件も、対応が悪かったからか近々ある週刊誌に取り上げられる可能性があります。実際私は取材を受けましたので、掲載が決まればブログにてお知らせします。
また、昨年私に降りかかった「家族に対する脅迫事件」。あとでその有名繁盛店の社長まで出て来て全面謝罪で終結しましたが、それなら最初から脅迫しなければよかった事。これを言ってしまったら後はどうなるか、といった思考が働かない、これもリスク管理がまったくされなかった事例であります。
そして、友里が関わった出来事がもう一つ。最初の「シェフ板」の黒本が発売された直後ですから、4年近く前の事です。
私が普段使っているカード会社から留守電が入っておりました。何でも、先日食べに行った際の会計で貰い過ぎたから返金したいので住所を教えてくれと要請されたとの事。今と違って「個人情報法」が施行される前ですから随分悠長な問い合わせです。その店名を聞いてピンときました。黒本で取り上げた店の一つで、創作しすぎでおススメしないような文調で記したのですが、かなり料理名を具体的に書いたのと、個室の客のことを書いたので特定されてしまったようです。
カード会社には、「返金したいなら店とカード会社が先に相殺し、その後カード会社と私が相殺すればいいので、個人情報を伝えないように」と言っておきました。
しかし数日後、今度は予約電話の記録を探し出したのでしょう、私の携帯へ何度かかけてきたのですが、そのときはまったく返金の話は出ませんでした。
当然現在もその店からは「払いすぎた」ことに対する返金はありません。
連絡先を知りたいがための見え見えの「貰い過ぎ」という嘘。こんなすぐ後でバレることをする、カード会社という第三者をも巻き込んで証拠を残すという、やはりまったくリスク管理を考えた行動だとは思えません。
私は言いたい。常連客や料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちは店主や料理人に良くしてもらおうとヨイショしてばかりですが、肝心の店の「リスク管理」などの重要なアドヴァイスを普段からするべきではないか。心地の良い言葉を並べ立てるより、現実的なアドヴァイスや苦言の方が店にとって有意義だと思うのは友里だけではないはずです。

近海生鮪が多すぎないか

漁獲量が制限されるという鮪ですが、中国本土の人が本格的に食べだしたら大変な品不足になると言われています。日本だけではなく、アジアや欧米も鮪好きが増えているということでしょうが、私はスシ店を訪問していつも疑問に思うことがあります。
ここ数年の鮨ブームで増殖の一途をたどる「独立スシ店」。3万円超える超高級店から1万円台半ばの店までかなりの確立で赤身や中トロを出すとき「どこそこで獲れた鮪です」と主人は囁いてきます。いかにも「近海の生本鮪」であるとのイメージを与えてくれますが、本当に全部「生鮪」なんでしょうか。
築地市場が扱っている「生鮪」は鮪全体のごく一部のはずです。数%ではないでしょうか。それほど希少な「生鮪」がどうして数ある沢山のスシ屋に登場できるのか。大半の冷凍マグロはどこへ行っているのでしょうか。スーパーや百貨店にも出ているでしょうが、主体は「メバチ」や「キハダ」のはず。「クロ」や「ミナミ」といった高額鮪の冷凍や、アイルランドだかの「畜養マグロ」はどこへ消えているのか。
最近は、スッポン料理店(『江ぐち』です)でもわずか2貫でてくるマグロが「久兵衛」と競ったと言っていましたから近海生マグロなんでしょう。高級スシ屋でない店でも「近海生」を名乗るマグロが出てくるのですから、その原資がどこにあるのか、私は不思議でなりません。
偶然私は築地のマグロ問屋のHPを見て気がつきました。都内の高額鮨店が仕入れていることで有名な「石司」、「石宮」、「樋長」なのですが、立派に冷凍物を扱っているのです。インドマグロ、メバチマグロ、アイルランド産なども扱っています。
仕入れは「石宮」だ、「石司」だと言われても、近海生鮪ではない可能性があるということです。
全国に売り出されている「魚沼産こしひかり」と名乗る米を集めたら、実は「魚沼産こしひかり」の生産量の数倍になる、と言われていたことを思い出しました。
私もどう味わっても「冷凍物」としか思えない「どこそこの鮪」を食べた経験があります。
希少な「近海生鮪」がこんなに多くの鮨屋に登場できるものなのか、納得できる業界の具体的な説明を受けてみたいものです。

店評価ブログを更新しました

先日出張の際、ある有名店の支店で昼のお任せを食べました。以前の料理長の時はマスヒロさんが絶賛していた人気店。そこでまったく聞いたことのない魚がでてきました。煮え立った小鍋(しかし加熱はしていない)でしゃぶしゃぶのように食べるのですが、容量が小さく野菜などが入っているので、一切れくぐらせたら一気に小鍋が冷めてきてあとはどんなに入れっぱなしにしても半生状態でその魚を食べたのです。不自然に白い脂だらけのその魚、帰宅して教えられた魚名でネット検索したらなんと「有毒魚」として流通禁止。ワックスエステルという身にある「蝋」が人間の体内で消化できず10数時間後に下痢などをおこすからだそうです。そういえばその晩、偶然なのかそれが原因なのか私も珍しくお腹を壊しました。その店で教えられた魚名は、岩手の『あぶらぼう』であります。
店へ確認したら、料理長はその魚自体の知識なく調べもしないで卸の「珍しい」というおススメだけで使用したとか。食べても自分たちは大丈夫だったそうですが、客に出すほどの量を食べたとは思えません。
また、魚名は良く似た『あぶらぼうず』と間違えただけで、こちらのほうは禁止になっていないから大丈夫とのこと。本店の総料理長も「今回は勉強させてもらいました。有難うございます」と木で鼻をくくったような対応だけ。調べもせず「有毒魚」の名前として客に食べさせ、たとえ名前の間違いだとしても有毒でない『あぶらぼうず』も食べ過ぎると脂で腹を壊す可能性があるといわれています。冷めた小鍋でくぐらせて半生で食べざるを得なかったその調理法に問題はないのか。不二家ではありませんが、まったく一般客だと思って馬鹿にした対応に頭にきました。
現在テナント元である百貨店のレストラン部門の責任者たちの最終判断を確認中であります。はっきり店側の対応が確定したら、詳細なことの顛末を夕刊紙やブログで述べたいと思っております。
さて、読者の方からおススメいただいた、京橋近くの鮨屋「ふじ井」と六本木の時はウシオ電機の系列でありましたが今は違うでしょう、西麻布の「maqereau」の2店を店評価ブログに追加しました。お暇なときにお立ち寄りください。