週刊現代掲載記事 ワースト10店

行ってはいけない過大評価の人気店 ベスト10
評価本や雑誌で絶賛の店へ行ってはその不味さ、CPの悪さに唖然の繰り返し。その憤りの集積が3年前の友里征耶デビューのきっかけであります。絶賛記事と食後感のギャップは何故あるのか。自称料理評論家の山本益博氏、ジャーリズムの欠片も持ち合わせない自称レストランジャーナリストの犬養裕美子氏を双璧とするヨイショ系ライターや有名グルメブロガーが、味やCPに関係なく書いた煽り記事を信じたことが間違い。料理人や経営者への接近、いや癒着が元凶なのですが、元々味がわからない人達だと言った方が的を射ているかもしれません。今回は「食材の秋」を意識しての「過大評価」な人気店を斬りつけます。
「六本木 浜藤」フグ料理
HPでは天然フグ以外にも使用食材に拘っていると力説していますが、「浜藤てっちり行進曲」や店主の応援歌を聞くとまともな店には思えません。べた褒めしているブロガーはこの店が串揚げの「法善寺串の坊」系列であることを知っているのか。「ピザーラ」経営の「ジョエル・ロブション」を持ち出すまでもなく、廉価店経営会社が運営する高額店にCP良い店なし、は定説であります。半年クローズしているので理論的に固定費のってCP悪くなるのは当然。皿にこびりついた薄い刺身はかなり前に盛り付けたもの。ぶつ切りを追加して天然とはいえ質の凡庸さが確認出来ました。白子焼きは皮が厚く、から揚げも期待はずれ。歌にまでなったてっちり、生米から造った〆のリゾットもフグが並なので滋味を感じません。最初からヌルいヒレ酒を頼んでフルコースで3万円前後。この食後感ではCP悪すぎです。この店のフグが最高と信じたら、今後のフグ人生を誤ります。
「ル・マンジュ・トゥー」フレンチ
マスコミの絶賛に勘違いした谷シェフ。リニューアルの工事現場で、コックコートを羽織って脚立に登り、図面を見ている写真が雑誌にありました。下手なポーズを作るよりCP良い旨い料理を造れ。彼の口癖は「僕は天才じゃない」だそうです。引退するまで精進して客が満足する料理を造りたい、と考える真面目な料理人が語る言葉ではありません。謙遜したつもりで内心は「天才に近い」と思っているのですからお笑いです。今春、リニューアルした店は値上げして小ポーション8皿のコース(1万円)だけ。スプーンに乗せた玉子はトリュフを節約してピュレをかけた一口料理。そして旨みを感じない馬肉とエスカルゴ。アスパラ料理は肝心の頭の部分がありません。ランド産鳩も血のソースが緩くて凡庸。パンはバケットのみ、メープルシロップと果糖をかけるフレッシュチーズの後、山盛りのデザートで腹具合を一杯にさせる方針はいかがなものか。皿数を増やして価格を上げ、食材を落としたこのリニューアル。谷シェフが「儲けの天才」なのは間違いないでしょう。
「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」フレンチ
スタッフが嫌な思いで勤務しているのですから、支払額に見合う上質なサービスに巡り合うことはありません。シェフとマダム、性格がかなりキツイそうで、労働条件が悪いだけでなく従業員に対してかなり高飛車だとか。オープンして3年足らずで、ロオジエに勤めていたマネージャーなどサービスのプロやソムリエが皆辞めてしまいました。HPではマネージャー、ソムリエ、キュイジニエ、パティシエ、サービス、レセプションとすべてのポジションを募集していますから、ベテランは残っていないのでしょう。小田原という立地の妙が後押しして、都心の客を中心に人気が出たのが勘違いの元。鼻っ柱の強いシェフとマダムが増長しての青山への移転。オープン時にあった1万円以下のコースをやめ、1万5千円、2万5千円とグランメゾン級の価格設定にしましたが、食後感が良かったと食通の方から聞いた験しがありません。山本益博氏とは疎遠ですが、もう一人の大御所、犬養裕美子氏の掟破りのバックアップが、実情を知らない方や業界人を呼び込んでいます。オープン前の段階で雑誌や自著に絶賛記事を書いた犬養さんの罪は重い。秋の白トリュフ料理は異常に高いので要注意。勘違いしたシェフとマダム、素人同然のサービススタッフ、これでも貴方はナリサワを訪問しますか。
「キャンティ 飯倉本店」イタリアン
マスコミに露出していませんが、日曜だというのに年配客を中心に満席な老舗店。メニューの料理は少なく高い値付け。前菜は生ハムとメロン、エスカルゴなど古臭いモノが2千円以上、パスタはバジリコ、トマト、ナポリ、とこれまた日本式ネーミングで2千円以上、メインは仔牛、若鶏、牛ヒレしかありません。価格は4千円以上。メニュー外の前菜ワゴンサービスは、適当に選ぶと一人4千円前後になってしまいます。バジルのパスタは、本場のジェノヴェーゼとは違う昔の日本風。トマトソースも同じ。おススメのフィオレンティーナは、仔牛にホウレンソウのグラタンが乗った変なもの。食後のチーズはラップでくるんだままでした。ここはイタリアンというより高いイタリア風「洋食屋」。当時本物を知らない人にはウケたでしょうが、日本でも地元専門料理店が注目を浴びる時代です。本物を知っている客がこの料理で満足できるはずがありません。安い1万円以下のワインを1本頼み4名で総計8万円ほど。この雰囲気、この食材、この調理では余りに高い店であります。
「ピアット スズキ」イタリアン
正に居酒屋といった人口密度が高い繁盛店。「ヴィーノ ヒラタ」出身のシェフ、深夜営業、の2つがウケているのでしょうが、私にはCP悪く量が少ない業界人向けの店としか思えません。ワインの値付けも高く、前菜、パスタが2千円前後、メインは肉系がカツレツ、仔牛のTボーンと種類が少なく力を入れているとは思えない。また秋だからと気安くメニュー外のフレッシュポルチーニを頼んではいけません。4人分のタリアテッレで一人当たり4千円弱の請求額に驚きました。料理はフルに食べるとワインを1万円以下に抑えても2万円を突破。深夜営業、パスタで終了可、傑出した料理ナシ、ハーフボトル多し、人口密度高し、と本格イタリアンではなく業界人好みのワインバー。この客層をターゲットにしている限り、料理やCPの改善は望めません。料理やワインをCP良く味わいたい方が訪問する店ではありません。
「桃花林」 中華料理
オークラの料理店の中では盛況で稼ぎ頭だとか。昔からの年配常連客に支えられているこの店は、ジレンマに陥っているそうです。中華料理の悪弊、「化学調味料の使い過ぎ」からの脱却を試みると、今迄の味に慣れた常連客から「味が落ちた」とクレームがつくとの嘆きを漏れ聞きました。最近は舌の肥えた客の要望で、高額店は使用しない傾向にある「魔法の粉」。店を育てる常連客が桃花林の「化調放棄」、すなわち近代化を妨げているのですから皮肉です。広東料理の店ですが、コース料理はボケ味の四川や上海料理が入っていてCPも悪い。では単品料理が良いかというと、鯛の広東風刺身は口中に残る後味が気になります。貧弱なフカヒレ姿煮は上湯ベースではなく醤油を多く使ってラクしています。空芯菜の炒め物は肝心の茎の歯ごたえを感じずベチャベチャ。海老の紹興酒風味石焼き蒸しも特製つけダレが最悪。〆の焼きソバも後味悪いと、あまりに化学調味料入れすぎです。この店の味に慣れてしまうと、貴方の「舌」はまともな中国料理だけでなく上質な和食、特に出汁の味わいがわからなくなる危険があります。
「築紫楼」中華
恵比寿のバス通りにあった小さな店が、多店舗展開すると誰が予想したでしょうか。確認しただけで恵比寿店の他、広尾店、丸の内店、日本橋三越店、八重洲店、名古屋店に加えて、ゴージャスな銀座店まで出していました。こんな短期間で料理人を養成できるのか、「フカヒレ」で有名だが本当は何料理なのか。各店舗のベースが違うのですから呆れます。恵比寿店は四川ベースでコースは3800円から。広尾店は活け魚と黒毛和牛をウリにコースは6千円から。三越店は北京ダックを自慢しコース価格も10500円とアップ、名古屋店は中部国際空港にあるのでスピードメニューや香港風焼き物がウリ。八重洲店は数百円の小皿料理も出す麺専門店です。勘違いの極地は銀座店。豪華な店内で、水槽の魚や10種のフカヒレをウリにしています。最高55000円のコース設定ですから身の程知らず。このチェーン店のウリであるフカヒレはすべて醤油煮がベースです。調理レベルがわかる上湯ベースでないところがミソ。他の料理も調理レベルは低く化学調味料など添加物に頼りすぎです。わざわざ出かける本格中国料理ではありません。
「喰切り 江ぐち」スッポン
神宮前で評判だった鼈をウリにした割烹が西麻布へ移転してきました。当初は住所や連絡先が未公開でしたが、最近の雑誌では「紹介者が必要」としながらも店データを開示しています。私は雑誌に載る前、西麻布付近を散策中、「会員制」と書かれた板の横に張られた電話番号を発見、即「紹介者無し」で予約を入れたのです。(笑)ワイン以外の酒類が飲み放題とはいえ、鼈鍋と雑炊の前は、時雨煮の先付け、トロ握りの他、小料理3皿だけで3万円。鍋にフカひれを加えると4万円です。滋味を感じない鍋の鼈は、肢肉がわずか1塊。丸ごと仕入れているとのことですが、エンペラや肝が見当たらず甚だ疑問。鍋は造り置したものを熱した小鍋に移し変えてくるだけですから有り難味もありません。料亭でも鼈の仕入れ値は4千円前後と聞きました。食後感を考えると余りに高い店であります。
「分とく山」 和食
長島茂雄氏の要請でアテネ五輪へ弟子連れ食材もって選手の食事を造りに行った野崎さん。長島氏も贔屓の店とは知りませんでしたが、このドキュメンタリーを放映しては更に客足が遠のくというものです。芸能人、業界人、プロスポーツ選手の溜まる店に旨いものなし、これも定説であります。今も盛況のようですが、食通の方は通っていない、少なくとも再訪はしていないはず。1万5千円のコース料理はCP悪く満足できないと言うことです。野崎氏は毎日店に出ているのですが、いかんせん出る料理がほとんど駄目。特にお椀の出汁が力不足で炊き合わせも期待できません。造りも質が悪く、名物の鮑の磯焼きは、よくこんなトコブシみたいな小さな鮑を見つけてきたと感心、岩海苔の強い味が見事に質の悪さをカバーしておりました。〆のご飯物まで10皿ほどの料理はどれも一流高級和食のレベルに到達するものはない。元弟子が近所に開いた「霞町すゑとみ」の方がレベルは高く価格も3千円安いという現実。利益を追求した店はCPが悪いという証左と言えます。分店の飯倉片町店、伊勢丹店も同様。この店の料理で満足していたら、京都の名店ではあまりの美味しさに腰を抜かすことでしょう。
「田吾作寿司」 すし
今年の訪問寿司屋ワースト1、いや友里寿司史に残る店となるでしょう。練馬駅から徒歩10分以上、主人と女将の小さな店ですが、知られざる名店と言われていますのでずばり書かせていただきます。この店の「創作寿司」が美味しいと感じる方、鮨巡りを一からやり直ししてください。ツマミの合間にも握りを出すお任せスタイル。お土産の太巻きをいれて一人1万5千円以内で終わるのですが、出てくるツマミや握りは基本が出来ていません。酢飯は家庭用の「スシの子」を使っているのかと思いました。不味い。当然コハダ、カスゴといった江戸前仕事も基本から駄目、タネ質も都心の有名店よりかなり落ちます。では得意の創作寿司はというと、「アン肝レタス巻き」はアン肝、奈良漬を酢飯と共にレタスで巻いたもの。鮨通にはキワモノと感じるタネの取り合わせで、濃い味のタネが口中でバラバラ。のんべえ巻きは海鼠腸、ホッキ、アオヤギを海苔で巻いたもの。癖の有るタネをどうして一緒に使うのでしょうか。腕の良い職人が質のよいタネを使ってCP良く提供すれば、黙っていても客が来るはず。腕が無いから話題造りで創作に走るのでしょうが、基本あってこその創作料理。まずは主人に酢飯の切り方から勉強し直していただきたい。