絶妙なパスはでなかったが、絶妙なタイミングでの引退宣言

早朝からTVでは「中田引退」一色です。新聞もスポーツ紙だけでなく一般紙まで一面扱い。
ここまで大きく扱われると本人も予想していただろうか。
まだまだ働ける年齢での電撃引退ということで、私はすぐあの江川卓氏を思い出しました。ボロボロになるまで現役を張って賞味期限がきれるより、ちょっとピークを過ぎた辺りで潔く引退宣言してサプライズを世間に与えたほうが、今後の営業に有利だと同じように考えたのでしょう。マスコミに対する不信感、多趣味、業界人好き、芸能人好き、自分は野球バカ(サッカーバカ)ではないとの自負、と二人はかなり被っていると思います。
週刊誌などでは、予選敗退の戦犯の一人に挙げられていたのが、一夜にしてまたヒーローにカムバックし、賞味期限が延びたのですから中田選手は笑いが止まらないでしょう。
ワールドカップの予想もそうですが、新聞などマスコミはイケる(売れる)とみると皆同じ方向へ向いてしまいます。サイドから、違った見方で論評しませせん。
今回の電撃引退劇、友里流に斬らしていただければ、すべて計算済みの行動。引退宣言を記者会見ではなくHPで流したようですが、公開時刻は朝刊の締め切りに充分間に合うよう(記事の差し替えができる)配慮したのが見え見えです。昼間だったら夕刊や夕刊紙に載ってしまい、これほど大きく扱われなかったでしょう。ワールドカップもないし、宮里選手も撃沈し、政治や経済でも大きなニュースが流れないであろうと見たところでの絶妙な発表なのです。もたもたしていては商品価値がどんどん下がる。オシム監督のニュー代表選出にはずれる可能性も考えたかもしれない。次シーズンも海外クラブが拾ってくれるという保証もない。さりとて日本でプレーするのはプライドが許さない。脇を固めるブレーンもいいのだと思いますが、如才ないというか計算高い面が私にはどうも鼻についてしまいます。
TVではベルマーレ時代やペルージャへ入るときの映像を流しておりました。当時の顔に現在の彼にない「純粋さ」を感じた人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。人の生き様は顔相に表れてくると言いますからね。
ピッチの中央で何分も一人寝そべり号泣した場面。この引退発表の計算された布石といえるでしょう。直後は「目立ちたがり屋」、「自分の売込みしか考えていない」とか批判の声もありましたが、すっかりこの引退劇で消し飛びました。
自分の価値が落ちる前のこれ以上ないタイミングでの引退宣言。選手寿命はなくなりましたが、TVやマスコミでの商品価値はむしろ上がり、業界人寿命はいくらか延びたと考えます。
絶妙なパスを出さなかったが(出せなかった)、これ以上ないタイミングでの「絶妙」な引退宣言でした。
最後に。中田選手の顔はちょっと見、マイク・タイソンに似ていると思うのは私だけでしょうか。

3時間以上かかる鮨屋なんて考えられない、八左エ門

鮨屋を特集した雑誌がかなり出回っていますが、その中で私が注目したのが神奈川の鮨屋。トップ3として、「はま田」、「渥美」の他、この「八左エ門」が取り上げられておりました。
以前は希望が丘にあったというこの鮨屋。主人のお祖父さんの名前をとったと聞きましたが、知る人ぞ知る名店だそうで、数年前に新子安へ移転してきました。
新子安で客単価1万5千円前後の鮨屋が成り立つのか、確か浅妻千映子さんもべた褒めしていたと記憶していたので、私は短期間に2回訪れました。
なぜ2回続けざまに行ったかというと、初回でまったくこの店の良さがわからなかったからであります。
もしかしたら自分の体調不良かもしれないと万全を期したのですが、2回目の方がより落胆する結果となりました。
メニューにはお任せ(ツマミ2皿と握り)で1万3千円とあります。この地ではかなり強気の設定です。
初回は我々を含めて2組だけ。やっぱりこの値付けでは無理なのかと思ったのです。
主人しかいないので、ビール出しから酒の燗つけ、そして刺身、握りに最後はお茶出しからお勘定まで
彼が一人でこなします。ツマミは一皿に3種、たとえば白身、鮪、鮪、タコなどを切ってきますが、客同士の不公平感をなくすためか、部位を満遍なく振り分けます。つまり、腹側から1枚出すともう一つは尻尾側というように神経質とも思えるほど。だからこれだけでもすごく時間がかかるのです。
しかし、タネは木箱ではなく発泡スチールから取り出され、山葵はケチっているのか指先で一つまみしか出さず、タネ質もそれほどのものを感じません。
握りはというと、赤酢と塩だけとの酢飯と聞きましたがそれほど特徴がありません。常連はしょっちゅうスタイルが変わると言っていました。
コハダや白身が2貫でることもありますが、総数は10数貫で支払いは1万5千円前後。都心の有名店より2?3割は安いですが、満腹感には至らず初回は不満が残ったのです。
良い印象を受けた店なら1度で充分かもしれませんが、悪い印象の場合はもう一回試す友里ですが、たいていの場合初回の印象は覆りません。果たして数週間後の訪問でまったく駄目出しとなりました。
2回目に入店してみてびっくり。なんとその日は満席です。
しかし2組の時と同じようなペースでやっていますから、ツマミや握りの間隔がかなり長い。「次郎」のように矢継ぎ早にでるのも困りますが、次の握りがでるのに何分も待たされるのは尋常ではありません。
19時前に入店して、終わったのは22時半近く。相変わらずタネ数少なく握りは10数貫。グランメゾン級の時間がかかり、腹八分どころか昼のお任せ並みの貫数ですから、かなりの客が満腹感なく帰るのではないでしょうか。
常連いわく、「4時間かかるときもある」。なんだこりゃー。
主人の素早いテンポを見るのも江戸前鮨の魅力の一つとしたら、この店はまったく違います。都心の高級店と同じクオリティのように雑誌で紹介されていましたが、そう持ち上げるのが可哀想というもの。
「さわ田」のようにツマミ、握りと各10種以上出るなら3時間近くでも楽しむことはできますが、この品数で3時間以上。希望が丘で数人の客前で握っているのが精一杯ではないでしょうか。
間違っても、常連や業界の口車に乗って都心に出てきてはいけません。

犬養さんへの突っ込みネタを久々に見つけた

最近、犬養裕美子さんの店や料理人を無理に持ち上げた記事を目にすることがありませんでした。
よく考えてみれば、彼女のホームグランドは女性誌主体。友里が普段読む雑誌で出くわす機会はほとんどないのです。何か物足りない日々だなと思っていたのですが、読者の方から、「エル・ジャポン 7月号」に突っ込み満載の犬養ネタがあると連絡をいただき、この女性誌をはじめて購入しました。
若手シェフの注目店を7軒紹介する企画でありますが、書き出しに「今、最も女性から信頼されるレストラン・ジャーナリスト」と犬養裕美子さんが紹介されています。確かに男性で彼女の店評価というかヨイショ記事を信頼している人はほとんど居ないと思うのですが、女性で信頼している人が多いと言い切ってしまっていいのでしょうか。私が考えるに、「女性誌を出版している会社の編集者」だけが、何を間違えたか彼女を信奉、仕事を依頼しているに過ぎないと考えます。というか、彼女に執筆依頼すると雑誌が売れると勘違いしているのでしょう。未だにジャイアンツ戦が視聴率とれると勘違いしているTVマンと同じです。
いや、もうそんな化石のTVマンは絶滅に瀕していると思いますけど。
彼女はTVの番組にも出ているようですから、俄グルメの放送作家にもウケがいいのかもしれません。そこそこレストランで食べなれた方であるならば、男女に関係なく彼女の発言はおかしいと感じられるはずです。最近はまったく言わなくなりましたが、何万軒も訪問して食べたとの自慢話、数学を勉強された方ならば、男女を問わずそれが如何にいい加減な戯言かお分かりになるはずです。
今回の記事では、持ち上げた7人の料理人の正当性を示すため変な理屈をこねております。
「若く経験不足を感じているので、彼らは自分で素材を選び、考える意欲にあふれている」、と。
素材を探すこと、手に入れることに努力を惜しまない、多くを勉強しようと時間もお金も惜しまない、と力説しています。
いやに前のめりしすぎた記述。若くない料理人は、素材探求も勉強も若い彼らより怠っているというのでしょうか。そんなはずがないことは、雑誌の編集者や放送作家でない、賢明な男女を問わない読者の方にはご存知のはず。老若関係なく、あくまで個人の考え方、性格によるものです。若くなくとも日々精進している方はいらっしゃいますし、若くても天狗になって精進していない料理人は決して少なくないのです。
また、犬養さんは、「彼らが修業してきた店より高い料金はつけない。それが師匠に対する礼儀だから」と力説しています。彼女は、お気に入りの「メゾン ド ウメモト上海」の修業先、「シェフス」へ行ったことがあるのでしょうか。単品料理が主体で、最高でも上海蟹シーズンの蟹ミソチャーハンや蟹が5千円前後。「ウメモト」のように最高3万円近くするコースを出す店ではありません。
素材を考えるなら、わざわざオフシーズンにまで「冷凍蟹ミソ」を出す必要があるのか。いくら科学が進歩したといってもそこは冷凍物。年中単価の高くできる「蟹ミソ料理」を出したいだけの浅知恵であります。
この雑誌ではもう一つ面白い読み物がありました。「美食の王様」もとい、「美食のオコチャマ」の来栖けい氏が、この「ウメモト」で出版記念パーティを開いたときの様子を書いています。しかし、このパーティには、彼が本でイチオシしているメーカー関係者が参加しているんですね。商品も提供しています。
彼が昔からHPでも推薦文を書いて販売に一役買っていた「ルセット」。めでたく「パン本」では第一位にランクしていますが、ここの女社長はわざわざパーティへ参加し、挨拶までしていたと聞きました。
完全に官民癒着というか、店・ライター癒着の構造。若さゆえに、祭り上げられたらその喜びが忘れられなく歯止めが効かなくなるようですが、「美食のオコチャマ」を信じる人も男女を含めた読者にはほとんどおらず、放送作家や似非グルメ作家、そして女性誌の編集者くらいしかいないということをここに付け加えさせていただきます。