スッポン料理の相場

最近スッポン料理をウリにする店へ行く機会がありました。一つはこの4月ころに読者の方に情報をお願いした「喰切り 江ぐち」。そしてもう一店はネットなどで関東一のスッポン料理と評価の高い「懐石 四つ葉」です。
どちらも「すっぽん鍋」をメインにしたカウンター主体の割烹屋ですが価格がまったく違います。「江ぐち」は時雨煮、胡麻和え、マグロ握り2貫、子鮎の煮浸し?、アイナメの酒蒸など小料理がついて鍋と雑炊で3万円。一方「四つ葉」は造りとしてヒラメがつきますが後は鍋と雑炊で1万5千円と半値です。
小料理が5皿つくとはいっても私は予約の際、「3万円と4万円の2コースです」と言われて驚きました。1万円の違いは鍋に大き目のフカひれが1枚加わるだけであります。フカひれの相場は昔コラムで述べましたとおり、ある程度の質ならば1万円は仕方がないかもしれませんので、オプションを除いた3万円という価格が高いかどうか。
「東京情緒食堂」では移店前よりスッポンを2倍に増やしたと言っていますが、私や同伴者の鍋に入っていたスッポンは部位がよくわかりませんでしたがわずか1片だけ。以前は半切れしか入れなかったのか、1回のコースで2匹ちょっと使っているとも述べていますが、何人分の1回のコースなのか。まさか一晩の全員の1回のコースで2匹しか使っていないということではないでしょうね。でもそう思うくらい身が少ない。スープを取る段階で身が崩れてなくなるということはないでしょう。コークスで高熱をかける「大市」でも身はもっと入っていたからです。また、丸で仕入れるという割には肝やエンペラ、首など素人でもすぐわかる部位がなかった。少なくとも、2人で1匹も使っていないのは明白です。
一方の「四つ葉」。鍋自体がおいしいかどうかは別にして、スッポンは丸ごとで二人で1匹は使っておりました。前肢、首、エンペラ、肩甲骨、胸骨、骨盤と部位が盛り沢山。スッポン肉を堪能することが出来るのです。「江ぐち」の後に「四つ葉」を訪れて、「何だ、スッポン鍋は味は別にして1万数千円で充分提供できるではないか」と私は確信したのです。
老舗でブランド価値があり個室対応の「大市」で2万3千円ほど、「さくま」は色々と他の料理がでてきて3万円ほど。
それに比べると、ビール、日本酒、焼酎が飲み放題とはいえカウンターが主体の「江ぐち」はスッポンの量も少なく高い設定ではないか。スッポンがメインといいながら、マグロ握りなどを出し、一応「会員制」とうたって客単価を倍増した戦略。以前の店は1万5千円程度だったと聞きますから、「会員制」としながら飲食店紹介雑誌で住所や電話番号を公開する手法といい、この主人も勘違いではないでしょうか。詳しくはもう少し後になりますが、「店評価」という別ブログで述べさせていただきます。ただいま準備中なのでしばしお待ちください。
では、相場であろうと思われる「四つ葉」のスッポン鍋はどうなのか。この店の鍋は、我々が抱いているスッポン鍋とまったく違います。おそらく鍋の肉は別調理で味付けをしているのでしょう。出汁(スープ)とスッポン肉は別盛りされていて、主人は客前へ出す寸前に鍋に投入してきます。出汁の味わいは滋味を感じない薄め、そして肉は異常に味濃い目です。例えは極端ですが、「フライドチキン」を思わせる濃いお味。鍋に肉片をいれて酒、醤油、水だけで加熱して出汁をとる「大市」などの調理とはまったく違う代物でした。
これまた詳しくは秋頃出版予定の本で、簡単には「店評価ブログ」で述べさせていただきたいと思います。

有名作家までもが勘違いか

大麻所持、暴行傷害容疑につづいて、昨日は1つ星シェフの愛人問題が週刊新潮に大きく取り上げられていました。良く言えば天真爛漫なのか、吉野シェフのコメントは世間の風を読めない、浮世離れしたものでありました。まわりの人がチヤホヤするからなのか、舞い上がり勘違いしてしまった結果のようですが、ある意味接触範囲が狭い業界なだけに、広い視野をもつことがなかなか難しいようです。
しかし勘違いは料理人だけではないようです。数ヶ月前の古いネタを思い出してしまいました。
確か週刊文春だったと記憶していますが、エッセイやコラムで特に女性に人気のある林真理子女史の食スタイルの一面が書かれていました。有名人気作家、林真理子女史を取り上げて問題提起することは、飲食店ガイドのセミプロ、「さとなお」さんを遡上にするよりファンの反感をかい、叩かれるのはわかっているのですが、おススメレストランなどのコメントも多い女史ですので、思い切って書いてしまいましょう。
誌面では、お気に入りの寿司屋では大好きなコハダを食べ続ける様が書かれていました。普通の一般客がトロや穴子を数貫追加するようなレベルではありません。わんこそばのように、次から次へと握らせ食べ続け、その数は数十貫に及ぶとか。30貫近く食べると自慢しているのですから驚きです。
そこまで食べ続ける女史も何ですが、他の客をほったらかしたまま有名作家を特別扱いして握り続けるその寿司屋の主人は非常識そのもの。「林さんに全部出してコハダは売り切れです」と嬉しそうに話す主人は「職人の矜持」というものもまったく持ち合わせていないのでしょう。
1貫づつ一通り食べなければならない「お任せ」システムが良いとはいいません。「お好み」で食べるのは決して悪くはない。しかし、そこには大人というか社会人としての「一般常識」が働かなければならないのではないでしょうか。
他の客でもコハダ好きはいるはずです。未曾有にコハダが沸いてくとは思っていないでしょうから、自分だけが食べきってしまって罪悪感を持たないとしたら、自分はまったく常識を持ち合わせていないと開示しているようなものです。
有名だから、人気があるから、店の常連だから少々の我がまましても許されると考えているのでしょうが、有名人だからこそ、より襟を正し他人に迷惑をかけないように気をつける、というのが「賢者」の考えではないでしょうか。普通の思考の方なら、「コハダ買占め」を自慢すること自体、人格を疑われると危惧するはずですが、有名人気作家は既にそのような自己判断が出来なくなっているようです。私はこれだけ世間から「特別扱い」されている大物なんだ、と自慢したいのでしょうか。
料理人だけでなく、作家までもが周りからチヤホヤされて自分を見失いやりたい放題。
女史は古くは「青柳」、最近は「定谷」を絶賛するなど飲食店への影響力がかなりある人。また店側も女史の絶賛を集客に利用しているようですが、私はそのような店で一般客が楽しく過ごせる確率はかなり低いと考えます。

ここまで絶妙だったとは

一日ずれていたら大変なことになっていました、中田選手。引退発表を一晩遅らしたら、新聞では一面だったでしょうがTVでは大きく扱われなかったでしょう。まさか北朝鮮のミサイル発射情報を入手していたとは思えませんが、相当運が強い人だと思います。
もう一人、悪運が強い人がいました。ニュース配信では「カリスマシェフ」となっていました、「オテル ドゥ ミクニ」などミクニグループの総帥、三國氏の傷害容疑での書類送検。事務所で従業員を殴り、電話機を投げつけたといいますから、かなり興奮していたのでしょうか。この手の話は噂が直ぐに広がる狭い業界なので、刃傷沙汰や重傷を負わせない限りあまり表面化することはなかったはずです。結構日常茶飯事的に料理人は弟子を殴る風習があるようですから、少々のことで表沙汰にする人間は二度とこの業界で働けなくなってしまうと訴えることを諦めるからです。時代とともに従業員の考え方が変わってきたのか、今回はよほどひどい暴行だったのか。
いずれにせよ、夕刊紙や週刊誌の格好のネタになるはずでしたが、ミサイル数発で埋没してしまうことでしょう。
大麻所持や傷害と悪行で世を騒がせることは、すなわち料理人の地位を落とすことになります。「なんだ、料理の世界は相変わらずだな」と思われる可能性があるからです。今後どういう顔してマスコミに再登場するのか、ウォッチが必要でしょう。
本件は書類送検ということですので、おそらく示談成立で「不起訴処分」となると私は考えます。
ところで、保釈された山田シェフはどこかの厨房に入っているとの噂を聞きました。本当なんでしょうか。