料理人の勘違いは客側にも大きな原因がある

連日友里ブログで取り上げ、友里掲示板でも盛り上がりを見せる「美かさ」の穴子問題。友里が注視する「料理人の性格」に関する問題なだけにいくらでも書けるので、ネタ不足な連休には有り難かった。
しかしもうこれでやめておこうと思う度に、タイムリーに「美かさ」を不自然に擁護するブログ(逆に友里を批判する)のURLが掲示板に書き込まれる不思議。
今回はKYスレ(一人二役と言われている検索君を隔離するためにつくったスレッド)に再び友里批判と「美かさ」擁護のブログ紹介がありましたので、反応させていただきます。?

まずは件のブログをご覧下さい。

http://d.hatena.ne.jp/shuu2no_geneki/20100429/1272497369

人をとことん信じるというのはある意味美しいことですが、そこに冷静で第三者的な判断がまったくないとしたら、単なる世間知らず、もとい、お人好しに終わってしまいます。

このブログの主宰者は何を言いたいのか。上から目線で難しく書こうとするからか、かえって真意が伝わりにくい文章になっております。
「目が利く職人が産地を使い分けて安定した食材(以下穴子に限定)を提供することがある」という発言にまったく異論はありません。現にそうやっている都内有名天麩羅屋も実際に存在します。
しかしこの後がまったく意味不明。

看板に泥を塗るという言い方がある。あるいは暖簾を汚すなんて言い方もある。
普通、理想の対語と言えば現実だが、男にとっては、多くの場合それは「妥協」という言葉に置き換えられる。

とありますが、じゃ、「美かさ」の穴子はどっちなんだと。

その日は「気に入った活け物の穴子」が品薄だったのではないだろうか。

と極めて盲目的に「美かさ」を擁護していますが、「江戸前穴子」と「活け」に拘っていて入手できなかったか、目が利く「美かさ」主人が産地に拘らず探したがそれでも気に入った「活けの穴子」がなかったという事なのか。

2009年1月に発売された「新版 田園都市レストラン」に「美かさ」の紹介記事があるのですが、定番の穴子は

時期によって変わる美味しい産地を選んで仕入れる

と明記されています。
よってこのブログの主宰者は「産地に拘らず活けの穴子がなかった」と言いたかったのでしょうが、肝心の事実に目を背け、店の都合よく解釈して擁護するのはいかがなものか。

私はこの時期の鮨屋や天麩羅屋で食べた経験と店主達に直接聞くことにより、

この時期、江戸前穴子(広く解釈して小柴、金沢文庫、羽田沖などです)は、築地の仲卸にありいつでも仕入れることが出来た。?
それらは旬(梅雨時)と比べると質は落ちるかもしれないが、良い物は充分客に提供できるレベルだった。(実際食べた私もそう感じた)?
穴子は仲卸で「活け締め」にして持ち帰るものなので、まともな穴子はすべて仲卸のところでは「活け」のはずである。

この検証結果をすっ飛ばし、単なる思い込み、もとい、思い入れだけで

その日は「気に入った活け物の穴子」が品薄だったのではないだろうか。

と判断するのは、ただの甘やかしでしかありません。

私は江戸前の穴子にだけ拘れと言っているのではありません。「美かさ」で穴子が欠品していた時期でも、まともな「江戸前穴子」が都内の天麩羅屋に沢山存在していた事実を、このブログの主宰者はどう考えるのか。

都内の天麩羅屋や鮨屋にあった江戸前穴子は「美かさ」主人の目に適わなかった

と言われてしまえばそれまでですが、それならば

この1週間は2回しか穴子が入りません。
寿司屋で穴子、ありましたか。

なんて聞かずに、「美かさ」主人は正直に

都内の有名天麩羅店には穴子がありますが、築地に私の目に適うものがなく質の悪い物ばかりなので仕入れなかった

と言った方が、信奉者や地元客の信頼をより勝ち取ることができたはずです。

さすが「美かさ」の主人は凄い。都内の有名天麩羅店より上質の穴子を使っているんだ

と何も考えない信奉者や地元客は思い込んでしまうからです。

でもそうは言わなかった。いやそこまではさすがに言えなかったのでしょう。あまりのホラになってしまうからです。
このブログの主宰者は、「美かさ」主人が絶対に正しい、凄い職人だという前提に立っております。
まずはその偏った思い入れを肩からおろし、ニュートラルな頭になって、「美かさ」の穴子欠品問題を再検証することをオススメします。

都内の有名天麩羅店へ行って穴子や「美かさ」について聞くのも良いでしょう。
また「美かさ」の主人に

都内にはいくらでもあったそうだけど、ここでは扱えない質の悪い穴子だったのですか。

と聞くのもいいかもしれません。主人が何と答えるかで、更に彼の性格がわかるというものです。
件のブログの主宰者には、思い込みを捨てることによって世界が広がる、と私は助言させていただきます。?

以前は6000円台だったと聞いた「美かさ」のコース天麩羅。上述のムック(2009年1月発売)では7350円とあります。そして1年経って再び値上げたのか今は8000円。
私が思うに、この店の高評価は6000円時代に形成されたのではないでしょうか。

最高のタネ質でもなく最高の揚げ技術でもないけど、6000円なら非常にお買い得。そんな店が宮崎台にあるんだから有り難い。

都内有名店と数千円の差になってしまった現在の状態で、更に賞賛を続けるのは「褒め殺し」でしかないと考えます。

料理人のいう「納得」の意味とは?

本日も「美かさ」の穴子欠品問題に関するネタであります。アレルギーなのか、喉が痛痒く咳が止まらず、目はしょぼしょぼ、鼻はずるずるで顔は熱っぽいと、体調最悪で新しいネタを考え出す余力がありません。
友里掲示板もこの「穴子問題」で次々と色々な情報が書き込まれて盛り上がりを見せておりますので、それに便乗したいと思います。本日は掲題にあるように「納得」というお題であります。
よくヨイショ雑誌などで料理人は

食材は自分が「納得」したものでないと仕入れない

と公言している人が多い。
また、今回の「美かさ」での穴子欠品問題に関して、信奉者や好意的に見る方々は

夜2回の完全入れ替え制の店なので、同じ質、同じ大きさのものを20匹仕入れる必要がある。その日は「納得」いくものが必要な数だけ揃わなかったので、仕入れなかったのではないか。

と受け取られています。
あまり考えない人は、この「納得」と言う言葉を聞いて、

たいした店だ。「質」に拘っているんだな

と感心して、凄いお店だと思ってしまうでしょう。でもヘソが曲がった友里征耶は違うんですね。

まずは、「納得」≠「質」ではないかと。よく読んでいただくとわかるのですが、料理人はどこにも「納得がいかない質」とは言っていないはずです。
つまり、質が自分の要求する基準を越えていないから仕入れなかったのではなく、別の「納得」が出来ないから仕入れなかっただけではないか。

世には「それなり」、「ほどほど」、「身の丈」という言葉があります。店には想定した客単価がありまして、そこから食材費を設定しております。
高額和食や高額鮨では、松茸やマグロやシンコに店の威信をかけ、どんな価格でも仕入れて客に出す、ということが出来るかもしれませんが、普通の店ではそこまでの冒険が出来ないのではないか。また客への義理もそんなところまでないでしょう。
つまり、質は良いのだが(いつもと同じ)、品薄で値が高い。この値段では「納得」できないから仕入れるのをやめた、となるのは仕方がないことなのです。

「美かさ」の場合は、他の理由の可能性もあります。友里掲示板への書き込みでは、「美かさ」の穴子を担当している仲卸にはその日江戸前穴子がなかったとか。
他の有名天麩羅店や有名鮨屋では、江戸前穴子が切れていませんでしたから、有名店の仲卸は入手できたのでしょう。この書き込み情報を信じるなら「美かさ」の仲卸は

1、築地内で力がなく、品薄?になって自分のところへ穴子を回してもらえなかった。
2、いくらでも入手は出来たが、価格が高くなるので付き合いのある店主が買わないだろうと「納得」して仕入れを回避した。

のどちらかではないか。どちらにしても、力がないか、ついている客(店)が知れているということで、たいした仲卸ではない可能性が考えられます。

また、他の仲卸同様の力を持ち、「美かさ」が取引する仲卸にも江戸前穴子があったとしたら、なぜ「美かさ」は穴子を買わなかったのか。

1、20人分の(2回転なので)同じ大きさの穴子が揃わなかったので購入しなかった。
2、品薄で仲卸が「美かさ」へ回さず、他の有力取引店を優先した。
3、品薄で価格が高く仕入れ原価の上昇を避けるるため、「納得」して江戸前穴子の仕入れを断念した。

の3点しか考えられません。

好意的に考えられる方、性善説の方は[1]を支持することでしょう。確かに高額天麩羅ではサイマキの大きさを揃えていると聞きます。しかし、街場の天麩羅店で、地元客が穴子の多少の大きさの違いを気にするものなのか。
隣客より多少小さいとしても、8000円コース天麩羅店で穴子が食べられない方が不満に思うのではないでしょうか。

また、20本くらいの穴子の大きさを揃えられないのか、といった突っ込みはしません。友里的に指摘させていただくなら、

身の丈にあったキャパに変更しろ

であります。厳しい仕入れ状態でも、自分の実力の範囲で供給できるキャパ、店運営にするべきではないか。

2回転で一斉スタートなんて詰め込みで儲けようとしないで、1回転にしたらどうか。同じタネを同時に出したい(揚げたい)だけなのですから、18時と20時で5名ずつ予約を取れば良いだけのことです。フルに回転させて儲けようとするから主人は忙しくなり、客も不便になってダメなのです。以上はあくまで[1]の性善説での問題提起であります。
真相は、その仲卸がまともなら、[2]か[3]であると思うのですが、どちらにしても

鮨屋に穴子がありましたか

なんて詭弁を弄した時点で「美かさ」の主人はアウトでしょう。この時期、普段の「美かさ」で仕入れる穴子に勝るとも劣らないものが、有名鮨屋や天麩羅店へ供給されていたことは想像するに難くない。第一、都内の有名高額鮨店と縁がなさそうな地元客にそんなことを聞くこと自体が失礼であると私は考えます。穴子を出せない理由は、

高いから仕入れなかった。
仲卸が他の高額店へ回してしまった。
仲卸の力がなく、仕入れていなかった。
実力以上にキャパを大きくしすぎた。

何事も「正直」が一番であります。

最近訪問した店 短評編 2010-18

「友里ブログを語るスレ」が加熱しています。と言いましても、紛糾しているのではなく、「穴子」や「客前での直前捌き」、そして「活け締め」に関しての情報交換です。
これも昨日コメント欄を閉鎖されてしまいましたが、「食べログ」の有名レビュアーだったfigeacさんの友里批判ブログに私が反応したのがキッカケでありました。

人は誰でも好きな店を批判されたくないもの。ケチつけられると自分の人格を批判されたような錯覚に陥ることもあると聞きました。思い入れを強くもつ人が世に多いということでしょうが、私など、オススメや高評価している店、例えば「京味」、「クチーナ・ヒラタ」、「トルナヴェント」、「四川一貫」、「御料理はやし」などに関して批判の意見を言われても?

そういう見方の人もいるんだな。

とか

自分の気付かないそのような面もあったのか?

と真摯に受け止めるのですが、盲目的な信者は過激に反応してしまうようです。

奇跡の海老」とか「別世界の天麩羅」と宮崎台の街場天麩羅をここまで賞賛してしまう姿勢にちょっと怖さを感じましたが、日頃から冷静に「美かさ」の天麩羅を食べていらしたのか。

もちろん嗜好の違いはあるだろうが、天麩羅を食べ慣れ、理解のある人間なら当店(注:美かさ)の凄さが分かるだろう。
ただ、未だに「楽亭」や「みかわ」「よこ田」を「信じている」ような客層には・・・・
まぁそれはそれで結構なのだが。

確かにピークを過ぎた「楽亭」、過大評価の焦げ天麩羅「みかわ」、そしてあれこれ指示がうるさい「よこ田」と、嗜好(好き嫌い)は千差万別。でもこれらの有名店より「美かさ」のどこが傑出しているのか、これらの有名店のどこが「美かさ」より劣っているのかの具体的な記述がありません。
海老に関しても私は「奇跡」とはまったく感じませんでしたし、この時期週に3回以上も江戸前の穴子を仕入れられない(仕入れられない仲卸と付き合っているのかもしれません)主人の仕入れるタネが素晴らしいと思う人がいるのでしょうか。
まずは盲目的に信じきる前に、有名口コミサイトの有名レビュアーなら、「検証精神」を少しでも発揮していただきたかった。

現在「友里ブログを語るスレ」で色々な情報が提供され、少しずつ穴子に関する疑問が解けてきていますが、いくつかの問題点がまだはっきりしておりません。

1、築地の仲卸から仕入れる場合、穴子はその場で活け締めしてもらうのか。それとも締めずに持ち帰る有名店があるのか
2、そもそも「美かさ」の直前捌きの穴子、「活け」のままなのか。築地で活け締めしているものではないのか。
3、活けの穴子の直前捌き、活け締めしていた穴子の直前捌き、活けの穴子の事前の捌き置き、活け締めしていた穴子の事前捌き置き、捌いた穴子をそのまま仕入れてくる、と天麩羅店の穴子にはこの5パターンがあるはず。穴子に限らず食材には「質」という大事な要素があると思いますが、それと無関係に「客前での直前捌き」が穴子天麩羅にとって最善の手法なのか。
4、「楽亭」、「みかさ」、「よこ田」など都内有名店は、客前で穴子の直前捌きをせず事前に捌き置いているが、その理由は何か。直前捌きと食後感は大差なしと考えてのことか。
5、「美かさ」の主人の腕は、本当に都内有名天麩羅店主人より上なのか。「美かさ」の扱うタネの質は、本当に都内有名天麩羅店より上なのか。

[5]に関する真相は、「美かさ」の主人自身が一番ご存じではないかと友里は考えます。
ここはぜひ、同業者や飲食関係者、そして築地関係者の方々からのご意見を伺いたい。

さて3店です。

宮葉
病気療養中だった主人が4月から復帰したと聞きまして訪問。夜の早い時間帯だけとのことでしたが、常連客もかけつけて元気につけ場に立っておりました。
酢飯は2番手が担当しているそうで復帰前後と物理的には変わるはずがないのですが、先入観からは主人の握る酢飯の方が美味しく感じました。

徳島の和食店(青柳系ではありません)
再訪する可能性があるので、例外的ではありますが敢えて店名を書いておりません。しかし、読者の方ならすぐピンと来ることでしょう。でも聞かれれば、具体的に答えます。
1回だけの訪問ですが「立地の妙」で過大評価(評価している人は限られています)の田舎料理店でありました。

コート・ドール
オススメ本の確認で訪問。しかし何回行っても、相性が良くないのかそれほど美味しいとは感じません。
ワインも高くなく、料理も悪くなく、ポーションも小さくない。勿論サービスも悪くはない。減点が少ないフレンチなのですが、私にはドーンと来るものを感じないのです。言われているほど「塩」が薄いとも感じないのですけど。
斎須さんがお酒を飲まないシェフだという先入観だけの問題なのでしょうか。