やっぱりワインと食材は先入観だ!

今年は久々に自宅での正月。元旦は購入したお節らしきものを食べながら日本酒やシャンパーニュを飲んで過ごしました。
日本の伝統行事ではありますが、このお節や雑煮を二日以降も食べ続ける気にはなりません。一日で飽きてしまったというと怒られるかもしれませんが、今日はカレーか麻婆を食べたい気分であります。

最近は元旦から営業している店もあるようです。菅さんが大好きな遊玄亭(叙々苑チェーン)ですが、他店が閉めているだけにこの時期は大盛況のようです。また、京都の料理店も稼ぎ時ですから元旦は別にして営業しているはず。叙々苑以外にも、ホテルのレストラン(寿司も含めて)やあの細っ腹な「しみづ」もやっていると聞いております。
正月早々から外食が出来るのですから、年々お節を必要としなくなる環境となってしまったということでしょう。
しかし市場は閉まっているこの時期に、どうやって寿司を提供するのか。この時期は漁師もさすがに仕事をしていないでしょうから、市場を通さない直買い付けも困難なはず。鮪などは冷凍を使用すれば良いのでしょうが、貝や白身はどうするのか。かなり熟成させた(させすぎた?)ものを出してくるのではないかと想像します。

さてお節やシャンパーニュを飲みながら日中からTVをつけて時間を潰した元旦。正月に限りませんが、どのチャンネルもジャニーズと芸のないお笑い芸人の番組ばかり。
歌や踊りといった芸術性?のある芸を披露するジャニーズは未だマシとしても、何の生産性もない吉本を中心とした芸人のおちゃらけ番組には辟易です。
正直彼らのトークは全然面白くない。番組スタッフの無理な造り笑い声をオンエアさせているのは、そのつまらなさをごまかすためではないか。こう言っては自信過剰と言われそうですが、友里のトークの方が遙かにウケるのではないかと思ってしまいます。

そんな中でブログネタになるかと無理してみたのが正月恒例TV朝日の

芸能人格付チェック

であります。落ちぶれたタレントや芸人を集めてきて、ワイン、食材、楽器など高価なものと廉価なものの2つからどちらが

高額か

を当てさせる番組であります。
途中見逃したものもありましたが、友里が注目したのはワインと牛肉の比較でありました。
まずはワイン。DRCのモンラッシェとカリフォルニアの確か数千円のワインをテイスティングするものです。
ワインの中身をバラしてからの味見では、当たる可能性が高くなると思うのですが、それでも半数以上のタレント・芸人がはずしていたでしょうか。だいたいワイン好きでも滅多にDRCのモンラッシェを飲む機会はありませんから、飲んだことのない人(カリフォルニアワインも)には無理なのかもしれません。しかし番組でこのモンラッシェを

100万円相当

と紹介しておりまして、私はひっくり返ったのです。そんな古酒を出して良いのかと画面をじっと見てみるとただの

2000年もの

ではありませんか。日本でのリリース価格は10万円台半ば、現値でも数十万円の代物をこんなに大袈裟に表現してしまっては、また純粋無垢な視聴者を混乱させてしまうことになります。

そしてこの番組の最後を〆たのが牛肉。神戸牛(100グラム2万円?)と国産牛(100グラム1000円)の食べ比べであります。
確か国産牛と紹介されていましたから乳牛ではないか。これが100グラム1000円なら高すぎると思うのですが、神戸牛で100グラム2万円なんて肉があるのか。

あら皮より高いではないか

と私は憤慨したのです。
乳牛と神戸牛はまったく別物でありまして、また霜降り肉大好きな(大味好きな)タレント達ですからこれは間違えないだろうと見ていたら、

ほとんどのタレントや芸人がはずしてしまった

のです。
彼らは味がよくわからない人が多いですから、脂べっとりの和牛は大好きなはず。唯一食べ慣れた高級食材だと思っていたのですが、それでも国産牛との違いがわからなかった。
私が昔から訴えている定説、

ワインや料理の味わいは先入観に左右される

は立派に証明されたと考えます。

その他で興味深かったのは「演出の比較」であります。
結構有名な映画監督と素人の芸人の二人が、同じ男女の演じ手を使って告白シーンを撮ったと思って下さい。
どちらがプロの監督の作品かを当てるのですが、トリックなど人気作品の監督が、芸人の方を

プロ監督の作品

と判断しておりました。
要は高いか安いか、プロか素人かは絶対的な判定基準がないということであります。世の中、正に

言ったもの勝ち

であります。鮨屋で

大間の鮪  淡路の鯛

とか食べる前に言われると、例えそれが別の場所で釣られて単にその港で水揚げされただけにものでも

美味しい

と感じてしまうのが人の感性なのであります。
成金を中心に大人気のワイン生産業者

DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)

白ではモンラッシェ、赤ではロマネ・コンティが最高峰でありますが、少ないながら古めのものから新しめのものまで飲んだ友里の経験から言わせていただくと

どこが美味しいのかよくわからん

ロマコンは確かに色が薄かったですが、それ以外は前もってDRCだと言われると

それらしき特徴の香り

を感じるだけのこと。ワイン名を告げられず、目隠しして他のワインと飲み比べさせられたら、10年以上世界一ソムリエという称号を引っ張っている

田崎真也氏

でも判断を間違えることがあるのではないでしょうか。
料理もワインも、そして音楽や絵画、演劇など絶対数値で表せないものは生産者、作家、作者、指揮者、演奏者などの

名前がすべて

であると私は考えるのです。

立地の妙による過大評価

と同じく、一般客だけではなくその道のプロも間違えるのが

先入観による思い込み

であるというのが本日のお題でありました。

謹賀新年

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年は2週間ほどダウンしてしまった咽頭炎など体調不調が何回かありました。もう歳だから無理をするなというサインだったのかもしれません。年末には身内の不幸も重なりまして予定していた旅行のドタキャンもありました。
今年は平穏無事な1年をおくりたい(友里征耶をやっているかぎり無理か)と思っております。

政治の混乱が収束せず景気は相変わらず不透明なまま。一部の大会社だけが利益を上げ、その経営陣(特に社長)の年俸だけが億単位と派手になるだけの日本。アメリカの悪いところだけ模倣してしまったこの不毛な10年、果たして取り返すことが出来るのでしょうか。

料理業界も曲がり角に来ているのではないか。一世を風靡した「エル・ブジ」もやっと閉店。この10数年は味わいを軽視した奇を衒うサプライズ料理が全盛でありましたが、そろそろ純粋無垢な一般客も気付いてきたのではないか。
料理は見た目の盛りつけや意外性、そして皿数の多さ(小ポーション)より肝心の

食材や調理技術による味わい

が重要であるということであります。
別に高額で高質な食材を使えば良いというのではなりません。せっかくの素晴らしい食材も

生焼けの低温ロースト

で提供しては意味がないからであります。なんとかの一つ覚えというのでしょうか、似非料理評論家や似非フードライターだけではなく、素人のブロガーまでが

完璧な火入れ

とか称して、中身が赤い(魚の場合は妙に照りがでている)生焼き調理を絶賛している不思議。低温ロースト、もしくは長時間ローストは、食材の良さを最大限に生かす調理法ではなく、火入れの失敗を限りなくゼロにすることができることによる

仕入れ食材を無駄なく最大限に利用できる

という店側の都合が隠れているのです。
露出がかなり減った過食のオコチャマ・来栖けい氏がブログなどで盛んに自慢している肉料理ですが、換言すれば彼のような素人でも時間をかければそれなりに仕上げることが出来るのが

低温ロースト 長時間ロースト

であると証明しているわけです。
しかしここ数年、日本だけではなく本場欧州でも

ビストロ(トラットリア)回帰

が目立つようになってきたはず。パリではネオビストロと称しておりますが、多皿、低温ロースト、フルーツピュレやエスプーマを封印し、低温調理人が提供できない

ソースや煮込み

に力を入れた料理を提供してきております。東京でも新規オープンする店は自称も含めて

ビストロ

が大半を占めるようになってきております。
原則前菜とメインの2皿で完結の料理単価5000円しない店が連日満席のパリ。確かに料理単価数万円のグランメゾン系3つ星店も客は入っておりますが、日本では中途半端な規模の

多皿・低温(長時間)ロースト・ソースなし・煮込みなし

だけに頼る店は厳しい時代に突入すると私は考えます。
昨年末の訪問で脱カンテサンスに舵切りしたと感じたフロリレージュに加えて、ユニッソン・デ・クールなどソースを造れる料理人の台頭により、一世を風靡した

カンテサンス Hajime カ・セント

などのシェフ達は方向転換を余儀なくされる年になるのではないか。はっきり言えば

ソース造りや煮込み料理を習得するための再修業

の必要性を感じ始める転換期がこの2011年であると予想します。

最後に今年の抱負と言いましょうか、予定を挙げてみます。
4月頃に友里征耶初のオススメ本を鉄人社から出版予定。6月過ぎには宝島社から飲食店(飲食業界)の問題点を更に掘り下げた問題提起本を予定しております。

今年も一年、読者をかえりみず魂を売って店宣伝に明け暮れる自称料理評論家、自称フードライターたちの駆逐を目標に、剝がれかかった覆面を手で押さえながら店評価を続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

今年の色々面白ベスト1

ついに2010年の大晦日になってしまいました。言い尽くされた表現ですが

あっという間の1年

あと何年生きられるか(何回夕食が食べられるか)わかりませんが、今後もしばらく友里征耶として活動していきたいと思っております。

さて本日は今年訪問した店の中から、「サプライズ」、「性格の悪さ」、「緊張感」、「恥」、「再訪したい」と5つにカテゴライズしたベスト1を発表して2010年の〆としたいと思います。まずは友里征耶らしく

性格の悪い料理人

と思われる店から書きましょう。

☆今年一番性格が悪く見えた料理人の店  美かさ(宮崎台)
ご存じ「食べログ」などネットで大評判の天麩羅店。都内の有名高額店では穴子が充分仕入れられていた時期(4月)なのにお任せコースで穴子が出ない。
仕入れられないなら黙っていれば良いものを、純粋と見受けられる地元客に

ここのところ穴子があがっていません。寿司屋で穴子ありました?

と如何にも世間でも「穴子不足」であるような発言をしていたのには驚きました。
確認のため直ぐさま都内の有名天麩羅店を訪問し、築地市場の入荷量を確認し、穴子を扱う店関係者からも情報を得た結果、

美かさレベルの質が入手できないような穴子不足ではなかった

との結論を得たのです。
単に「美かさ」が取引している仲卸が江戸前穴子を入手していなかっただけではないか。自己弁護で間違った情報を発信して純粋無垢な地元客を混乱させてはいけません。
天麩羅自体も平凡でしたが、性格の悪さは突出しているかもしれません。

☆今年1番のサプライズ料理  Alinea(シカゴ)
食器デザイナーと連係してのサプライズ料理を提供する3つ星店。コース最初から驚きの連続でしたが、最後を〆たデザートには腰を抜かしそうになりました。
テーブルにラバー製のクロスを敷き、その上に直接盛りつけてきたからです。下記写真をご覧下さい。
料理自体の味わいはほとんど記憶に残っておりません。

Alineaのデザート

☆今年一番緊張した店  かどわき(麻布十番)
3月だったでしょうか。週刊誌で「産地偽装」や「焼酎(魔王)詰め替え疑惑」、「トリュフオイル多用のトリュフご飯」と糾弾された直後の訪問。
主人にはとっくに顔バレしているのですが、同行者がその「魔王」を頼み、そして続いて

トリュフご飯

をオーダーとどんどん突っ込んでいったのです。
「しみづ」のように追い出されるかと思いましたが、清水氏よりは度量がある門脇氏、真摯に対応していただきオイルの使用を確認しながら〆のトリュフご飯を食べ終わりました。

☆今年一番恥ずかしかった店  Per Se(ニューヨーク)
行った日と連れの選択(性別)を誤りました。私は知らなかったのですが、NY在住の小学校同級生(男性)と訪問した日がなんと

ゲイの日

だったとは想定外。メートルはニヤニヤしながら我々をラブシートのようなところへ案内したのです。
一応片言の英語で弁解したのですがそれがかえってやぶ蛇だったか。最後にすすめられるまま持参のカメラでツーショットを撮られてしまった。そのツーショット写真、ほとんどの人が我々をカップルと思い込んでしまうほどの出来映えでありました。

☆今年一番即再訪したいと思った店  Le Petits Plats(パリ)
星付き店やグランメゾンではありません。外観は普通のビストロなのですが、料理は手が混んだもので美味しかった。特にメインの煮込みが最高。直ぐさま

また訪問して同じものが食べたい

と思ったのです。下記の写真をご覧下さい。

Pied de paquets

今年も大変お世話になりました。2011年は新しく本を2冊(鉄人社と宝島社)出す予定であります。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

それではよいお年をお迎え下さい。