大丈夫なのか、両ヒルズ

全国的に夏休みだった先日の日曜、久しぶりに表参道ヒルズへ行きました。近辺で所用をすませ、どうせ駄目だろうと車で立ち寄ったのですが、意外にもほとんど待たずに駐車できたのには驚きました。
店内は相変わらず鮪など回遊魚のごとく、客がグルグルと回っていましたが、オープン当初の熱気がありません。飲食店フロアの店は一部を除いて行列もありませんでした。六本木ヒルズと違って飲食店の割合をかなり減らしたはずですが、それでも間に合っていると言うことなのか。
ショップも順調ではないようです。客が入って購入しているのは、靴下など単価の低い店が主体で、ちょっと値が張る店では同じく活気がないのです。物珍しさを求める観光客がいくら訪れても、お金を落としてくれる客が入店しないのではテナントは辛い。森ビルが推進している再開発プロジェクトは根本的に見直す必要があるのではないか。無理してブランドなどを集めても、リピーターがわざわざそこへ買いに行く必然性がなければ、客は入らないからです。新規の客に期待しようにも観光客がほとんどでは多くを望めません。
駐車料金のチェックをしていたら、なにやら女性スタッフが近づいてきてサービス券を手渡して去りました。無期限有効の「六本木ヒルズ2時間無料駐車券」でした。兄貴分の六本木ヒルズも集客に苦労していることを自ら宣伝していたのです。
その六本木ヒルズへも行って驚きました。本館近くは観光客が居るのですが、「みかわ」や「次郎」など高額飲食店がある「けやき坂通り」地域はほとんど人通りがありません。
その本館部分でも、「ラトリエ ロブション」の前の広場は激変していました。アフリカフェアなるイヴェントの他、無料休憩所としてテーブルや椅子が設置されています。誰でも自由にそこへ持ち込んで飲み食いができるヒルズ側のサービスでして、ラトリエも廉価な飲み物やパンなどのテイクアウトをはじめていたのにはビックリ。一応高額店のその店先で、弁当やらペットボトルを広げたカップルや家族連れが溜まっているのですから、ラトリエへ入ろうとする客は興ざめし、イメージダウンではないでしょうか。
貧すれば鈍する、そんな言葉を思い出した六本木ヒルズ訪問でした。

アルキメーデ

マスヒロさんとは違ったヨイショ、紹介の仕方で生業に励んでいる「やまけん」さん。食材の生産地、生産者を不自然に持ち上げて紹介しているので前から胡散臭い人だと思っていたのですが、その彼と知名度はかなり落ちるでしょうがやはりヨイショ系のグルメ親父の古川修さんが絶賛していたシチリア料理店がこの「アルキメーデ」です。
神泉駅の出口のほぼ対面。赤いロゴの半地下の小さなお店であります。シチリア料理だというのにこの店はプリフィクスのコース(6000円)の1本勝負です。よって、小学生以下の子供の入店は不可。コース総量のボリュームがかなり多いのが特徴です。
最初に出る鹿熊豚のリエットとレバーペーストは可もなく不可もなし。他店でも出会えるレベルであります。しかし、その後つづく料理に驚きです。突き出しの人参のズッパのあと、シチリア風の前菜が小皿で
8皿くらい出てきます。カツオ、トリッパ、カポナータ、トマトモッツァレラ、ナスのフライ、鰯などなど。どれもシチリアテイストであることは間違いなし。その後が本日のパスタと5種ほどから選んだパスタの2種が一皿に盛られて出てきます。ペスカトーレなど傑出さを感じないまでもまずまずでしたが、早ここでかなり満腹になります。
メインはウリの鹿熊豚のロースやハラミなど各部位のローストを頼んだのですが、これが半端な量ではありません。肉は旨みもあり悪くはなかったがかなり大食いだと自負しているこの私が食べきれませんでした。こんなことは滅多にあるものではありません。
全体に塩をきつめに効かした味付けは悪くない。しかしシェフは大きな勘違いをしていると思います。量が多ければいいってもんではありません。つまり、料理と味付けのバランスとコースの構成が悪いのです。全体に濃い目の味付けの料理ですから、それほど食べられるものではありません。特にメインの豚は、ジュに醤油かモロミのようなものを加えているように感じるほど味濃いものでした。これだけ濃いとかなり胃に負担がかかります。絶対食べきれないので子供が不可なのでしょうが、一般男性でも無理でしょう。ではなぜ食べきれないほどの量のコース構成にするのか。量を減らして価格を下げろといった野暮は言いません。量が多いことをウリにしたいのでしょうが、残してしまっては本末転倒。家に持って帰って食べてもおいしいはずがありません。
そして8種の前菜も問題です。ほとんど知られた料理が出てきますから、一度に味わえるのはいいですが次回に行く気がしなくなります。シチリア料理は好きなものを選んで仲間とシェアして食べたいものです。前菜8種を丸ごとしょっちゅう変える事は不可能でしょう。初めての客には知られた料理を出さなければならないからです。二度目以上の客用に別の8種を用意することは出来ますまい。メインに牛や子羊といった別の食材を用意しているようですが、この量を味わってしまうと、メインの食材の違いだけでリピートする気がでるかどうか。
多皿前菜とビッグポーションのコース料理、その戦略がかえってリピート客を限定して自ら首を絞めることになるのではないかと私は考えます。

久々のブログ更新です

長いお休みをいただきました。ようやくブログを更新させていただきます。
と言いましても、この1週間あまり、旅行に行っていたわけではありません。家にこもって新著の原稿をひたすら書いておりました。編集者からの無言の圧力というのでしょうか、そして共著の人へのライバル意識もあり、クーラーの中一日ほとんどPCと向き合っておりました。ただし食事時は別。残った店の取材を兼ねて、しっかり昼、夜は抜け出してました。
久しぶりに西麻布近辺の店に入ろうとうろついたのですが、結構店が変わっている(潰れている)ことに気がつきました。方角が悪いのか、風水に合っていないのか、同じ場所で何回も店が変わっているのです。たとえば香港ガーデンとドゥリエールの間の3階建てのビル。最初は中華が入っていたと記憶していますが、それがコラムでも取り上げた変なダイニング「もぐら」になり、パン屋になったと思えば昨年は「ディア スープ」というスープとパスタの店になり、この夏再び閉店となりました。対面のピッツェリア「サルバトーレ」も宅配はまずまずながら店内はさっぱりですから、この地域はもう賞味期限切れなのか。「和心」が相変わらず江戸前鮨がわからない業界人を呼び込んで一人勝ちのようです。
そして日赤商店街通りからちょっと広尾ガーデンヒルズ寄りへ入ったところのバブリーなビル。テナントが入っているより空室の期間の方が多い場所なのですが、ここもこの何年でテナントがどんどん変わっています。1階はドッグカフェとペットクリニックになっているようですが、あまり人が入っていません。昨年秋にオープンした地下のフレンチは、1年持たず撤退。なにやら工事をしていましたが、オープンしたようでちょっと覗いてみてびっくり。なんと店前のロゴは「まっくろう」(アルファベットなのですがスペル忘れました)。確認はしませんでしたが、味のわからない芸能人と業界人の御用達だった六本木の創作洋食屋の移転と読みました。店前のお祝いの蘭は2つ。江川卓氏とアーネスト・ジンガー氏でしたが、この二人を前面に出すということは移転してもまともな食通を相手にしないということでしょうか。ワインは当然「ミレジム」からの仕入れなのでしょう。しかし一昨年のロブションとパーカーのコラボの100万円ディナーの仕掛け人であるジンガー氏。アカデミー・デュヴァンの顧問という別の肩書きで出ていましたが、もともとはワインのインポーターとパーカーのワイン評価本の監修者のはず。TVの特集でも取り上げられていましたが、出席していた鰻屋「いちのや」の主人をレポートして店まで宣伝していましたからヤラセの一種といえるでしょう。なんだか見ただけで胡散臭くなる新店祝いでありました。
ようやくHPの体裁が整ってまいりました。後は店評価のブログの完成を待つばかりですが、肝心のソフトが間に合うかどうか。私は良くわからないのですが、ご希望のあったRSS対応もしてあるとのことですので、今後もどうぞよろしくお願いします。出版社の許可がでましたら、新著の概要など宣伝を兼ねてお知らせしたいと思います。