勘違いの極致、ミシュランガイド出版記念パーティ

11月6日発行の日刊ゲンダイに、ミシュランガイドの発売日3日前、11月19日に行われる出版記念パーティーの記事が載っておりました。
なんでもミシュランの星獲得を噂されている店へ招待状が届いているとか。
「カンテサンス」、「赤坂 菊乃井」、「ガニエール」、「銀座のある老舗寿司店」などなど。
しかし、ミシュランいやガイドブック総責任者のナレ氏は何を勘違いしているのでしょうか。評価対象者を自身の出版のお祝いに駆けつけさせるという傲慢さ。厨房を放り出してでも駆けつけろ、ということですから、まともな思考とは思えません。
星獲得→海外含めて注目度急上昇→千客万来→利益増大 の図式が考えられますから飲食店経営者、シェフが星を獲得できるかどうかに神経をつかっているのはよくわかります。しかし、評価する側が対象者をはっきり言えば呼びつけるこの傲慢、何を考えているのか。
有名店であろうと老舗であろうと、「俺様に一目置いて揉み手で駆けつけてくる」といい気になっているとしか思えません。評論側に評価対象者が媚びへつらう、これは形を変えた「癒着」といっても過言ではないのではないか。周りに媚びへつらうシェフをはべらした出版パーティーを開いて注目度を上げ、販売部数を上げたいのでしょうが、こんな見え透いた傲慢戦略に尻尾を振って駆け付けるシェフも情けないというもの。
11/19は平日の月曜ですよ。昼か夜か知りませんが、シェフたちにその間は店を離れろ、と強要しているようなものです。現に、「カンテサンス」は営業日なので最初は断ったそうですが、どうしても出席をとの要請で「臨時休業」にして馳せ参じるそうです。当日の予約を断ったのかどうか知りませんが、19日に行こうと思っていた客を無視し、ミシュランの傲慢さにひれ伏した岸田シェフやグラナダ社の志の低さにがっかりしました。所詮単なるタイヤ会社が発行するガイドブックではないか。
有名・人気シェフを周りにはべらして悦に入るナレ氏の姿が思い浮かびますが、ミシュランガイドの発足精神はこんな軽薄、傲慢、勘違いだったのでしょうか。
フランスからトロワグロも駆け付けると聞きました。他にも東京へ支店(提携店も含めて)を出している3つ星シェフ(たとえばガニエールとか)の多くが馳せ参じると思うのですが、プライド高いフランスシェフが3つ星もらえずファーストクラス使ってパリから来日するとは思えません。つまり駆け付けるフランス人シェフの関係店はどれも高評価であることが誰でも推測できます。
10/29のブログにも書きましたが、今回の東京版は日本語版と英語版のみ。
東京へ食べに来る外人は英語で充分との判断だそうですが、パリの3つ星店の主要客であるアメリカ人くらいしか対象に考えていないということだと思います。伊藤章良氏も言っているように、本国フランスには内容を見てもらいたくないのかも。
この東京版出版に際して星付きシェフの異常なまでの肩入れ(各プレス発表に同席するなど)は何なのか。お互い共存共栄をはかっているとしか思えません。
伊藤章良氏が言っているように、3つ星シェフの店に甘い評価をして本場物やミシュランなど格付けに弱い純粋な「カモ客」・日本人を取り込み、更なるフランス3つ星シェフの東京上陸を促すツールの位置づけではないかと思ってしまいます。
評論家、評価本の指摘に耳を貸す、その批評を真摯に受け止めることは店、シェフに必要でしょうが、媚びへつらう必要はありません。マスヒロさんへのペコペコ以上のミシュランへのご機嫌伺い、あまりに料理人としての矜持のなさに友里は誠に残念であります。
でもこうやってミシュランに問題提起すること自体、ミシュランの宣伝になってしまいますから、友里もナレ氏の術中にはまってしまって、ミシュランガイド拡販や3つ星店の更なる東京上陸に一役買ってしまっているのかもしれません。

銀座の鮨屋 短評編 3

木挽町 とも樹
勝鬨のさ々木(先代)、第三春美寿司のオヤジさんのもとで修行。新津氏からも握りの手ほどきをうけたとのこと。本当かい?
ツマミが10種以上出てきて酒のみにはいいのですが、中には疑問の味濃い皿もありました。
前日に「次郎」で食べた影響もあるでしょうが、生姜に酢飯は甘めであまり好みではない。
「さわ田」と同じく朝倉さんの造った氷冷蔵庫は立派。投資額が多いからか、支払は2万数千円でしたが、CPはあまりよく感じなかった。
強いて挙げれば、煮アナゴと芝海老と鱧を入れているという玉子が○でした。
逸喜優
交詢ビル5階、確か碑文谷からオヤジが勝負に打って出てきたはずですが、事情があったようで今は当時の2番手がやっています。
3千円のチラシ、5千円くらいのお決まりもありますが、昼夜あまり流行っているように見えないのはビルのコンセプトが悪いからか。
久々に訪問しましたが、以前に比べると良くなっているように感じます。
寿司自体に特徴があるとは思えませんが、お好みやお任せで一人2万円前後、威圧感なく高額鮨屋の入門店には向いているでしょう。
青木
最近は「チーム青木」とか称して豪華な支店を計画しているとか。やはりマスコミ露出を繰り返していくうちに、勘違いしてきてしまっているようです。
すごく高い鮨屋なんですが、昼夜混んでいるのが不思議。悪くはないですが、それほど傑出しているタネ、仕事には思えないからです。きっと先代からのよい常連が今でも付いているのでしょう。
昼は3千円くらいのチラシ、お決まりがありますが、ここでは主人が対応する「お任せ」か「お好み」がいいでしょう。
江戸前で使わない九州の魚やエビを出してくるなどツマミは豊富。結構お酒が弾むからか、夜なら3万円を突破します。
寿司幸
この店のウリはワインでしょうか。「鮨にワインを」と盛んに純粋な客を啓蒙していますが、友里に言わせるとそれは無謀。ちゃんと鮨に最も合う日本酒があるのですから(しかもワインより安い)、売上増、利益増を狙った店の戦略に引っかかってはいけません。
皆さんもパリのフレンチが、ワインではなく日本酒を盛んに勧めていたら違和感を覚えるでしょう。それと同じことです。
実際、ワインをウリにしている他の鮨屋の経営者が「本当は鮨にワインは合いません」と私に言っておりました。特に白なんて絶対に合いません。無理して合わせてブルゴーニュか。
でもワインを取るとこの店、特徴がなくなります。合わないと承知で、勧められた赤ワインをデキャンタで頼んで、簡単に3万円を突破しました。私は接待されない限りもう行かないでしょう。
すし処 ととや
おっと好きな鮨屋を忘れていました。スキンヘッドの主人は見た目と違って怖くありません。
赤酢の酢飯、湯引いてから浸けこんだヅケ、旬の殻トリ(殻付きのトリガイ)が特におススメです。
昼夜ディープな一人常連客がたむろしているように、接待や多人数で利用する店ではありません。夜は2万数千円でしょうか。
ツマミは鮨タネが主体です。
すし おおの
ツマミ主体の店でしょうか。握りになったらお任せではなく「お好み」となります。
ツマミは種類も豊富でまずまずながら(毛蟹は勘弁してほしい)、酢飯は甘めで握りは形含めてあまりよくありません。
タネ質もそれほどではないか。でも2万円しないので、それほど文句は言えません。
江戸前に拘らない人には良いかもしれません。
久兵衛
最も有名な鮨屋を忘れていました。昼夜買い物客や観光客も多く混んでいます。未だに「田崎真珠」と提携して客を取っているのでしょうか。
ツマミや握りはコースになっているので明朗会計です。数いる職人はトークにも力を入れているようで、年配や女性の一見客でもゆっくり楽しめるでしょう。夜なら15000円から25000円の予算です。
しかし、有名な割にまったくツマミや握りに特徴がありません。タネなどセントラルキッチン化してしまったという情報も漏れ聞きました。
マスコミで店主として露出している今田親子、実はすでに経営権を他に渡してしまって、単なる「雇われ店長」みたいなものだと同業者から聞いております。
ほかけ
三越再開発で店が閉店してしまいました。どこかへ移転したのでしょうか。
価格の割に(2万円以下)、タネ質も悪くはなかった。再訪していた鮨屋だっただけに残念です。
(おわり)

銀座の鮨屋 短評編 2

すし 椿
あまり評名の通っていない寿司屋に居た人を雇われ主人として抜擢したお店。カウンターが2か所に配置されている結構大箱な接待に向いている寿司屋であります。なぜか19時頃から、「女将」と称する人が出没し客にあいさつ回りをしていた場面に何回も遭遇しました。普通の鮨屋では見られない光景です。
この店も自家製カラスミ含めてツマミが豊富。次から次へと出てくるツマミに合わせて飲み続けると、それだけでお腹が一杯になる危険があります。
鮨タネはどちらかというと海鮮系に近いかも。種類は豊富であります。
酢飯はやや甘く、江戸前至上主義を唱える鮨通の評価は厳しいのではないか。
結構支払いも高く、好きな太巻きをオミヤにすると3万円を超えるでしょう。
鮨 青空(はるたか)
「すきやばし 次郎」で二郎さん、長男の次の3番手だった人が昨年独立しました。修業店の悪い点を修正、少ない良い点を継承したおススメ鮨屋です。
あの二郎さんや長男の威圧感を封印、ツマミにアン肝など酒肴も用意するなど「次郎」では考えられない営業方針。勿論酒飲みにも寛容で、2時間は粘れます。タネの仕事や酢飯も「次郎」と大差なく、支払は半額近い2万数千円ですから驚きです。
ではなぜ「次郎」のやり方を大きく修正したのか。主人はあのやり方(態度のデカさと客せかしに破格の高額請求営業)ではやっていけないと自覚しているからでしょう。
奈可田
銀座 奈可久、六本木 奈可久の修業元。元祖「氷柱」でしょうか。
ガラス戸はイマイチですが、内装はいかにも高額鮨屋といった感じ。
年配の常連が多いのではないか。主人を含めて職人や女性スタッフの数も多く、接待に向いているというか、接待専門に近い鮨屋であります。
極上な質ではないがまずまずのタネ。決してタネ数は多い店ではありません。
その日によって、もしくは職人によって支払額はかなりばらつきます。
ツマミ、握りで昼で2万円?3万円弱、夜は太巻きのオミヤを入れて3万円を超えました。
きよ田
伝説の雇われ職人、藤本繁造氏や、魚嫌いで自己流ながらこの店で雇われ主人をしていたのでなぜか過大評価されている新津武昭氏などを輩出した銀座の高額鮨屋。政財界のお偉方のサロンとしても有名だったそうです。
新津氏引退の後店じまいしましたが、マグロの仲卸の仲介で柏の寿司屋が暖簾を引き継ぎました。しばらくは「新きよ田」としていたのですが、昨年か一昨年、満を持して「きよ田」に戻しております。
勿論今つけ場で握っている主人は柏の寿司屋の元主人のはずです。
タネ質、特にマグロの質を誇っている鮨屋ですが残念ながらタネ数は非常に少ない。年配や小食な方でない限りツマミ、握りと食べて満腹になるかどうか。
自腹でない政財界のオジイちゃん達のサロンだった意味がわかります。
エビスと日本酒を飲んで、3万5千円。一応、紹介性のようです。
GINZA 鮨一
1階入り口のインターホンを押してからでないと入れない隠れ家的な鮨屋。
創作系のオツマミが多いので、正統江戸前とは言えないでしょう。職人の一人は札幌の「すし善」出身と聞きました。
カニクリームコロッケ、ホースラディッシュ(山わさびと言っている)など変わったものが出てきます。樋長から仕入れているという鮪の質はまずまずながら、他のタネ質はそう高いとは思えません。
昼夜とも値段を開示したコースがあるので支払はお任せやお好みを頼まない限り明朗です。
予算は昼で1?1.5万円、夜は2?2.5万円でしょうか。トビコの入った太巻きはあまりおススメできません。
やまいち
茨城県ひたちなか市(旧那珂湊)にあった照鮨さんが銀座に進出。
昼は前日までの予約のみ開業で、握り主体で1万5千円。夜はツマミや焼き物付きで2万円コースと一応明朗。
赤酢に黒酢を使っていると思われる酢飯は特徴的。タネ質は中の上くらいか。
煮切り、ツメ、炒り酒と3種を握りに使用しているのも面白い。
いやこの店の一番の特徴は、茨木訛りの主人のトークであります。乗ってくれば爆笑劇場に早変わり。
純粋に鮨を楽しむ店ではないかもしれません。
(つづく)