会社と創業家社長、どちらが大事なのか

ますます深みに嵌ってしまうのではないか、トヨタ。昨晩の記者会見で豊田社長は、米国の公聴会には出席しない意向を発表しました。?

私は本社でバックアップしたい

と言っていますが、アメリカの議会に出席する子会社社長に対し、アジアの島国でどのようなバックアップができると言うのか。
公聴会へ出席すれば「議会の格好の標的になってしまう」、「トップが徹底的な批判を浴びれば更にイメージが悪化する」との判断だとトヨタ関係者の解説を新聞は載せていますが、事態はそんな悠長なことを言っていられる場合なのでしょうか。
あのアメリカ人気質を考えると(水に落ちた犬でも叩く)、公聴会で豊田社長を叩く以上に、「逃げた、逃げた」と更に敵意をむき出しにしてくるのではないか。アメリカが弱いものにはカサになってかかってくる気質だというのは、歴史が証明しているからです。

私がトヨタ幹部なら、「社長、ここは一つ生け贄になって下さい」と背中を押して公聴会へ出席させるでしょう。議会から現地法人の稲葉社長が言い負かされても、本社の豊田社長が言い負かされても、もうたいした違いはないのではないか。「逃げた」と突っ込まれないだけマシではないかと私は考えます。

トヨタほどの規模であります。社長の「替え」はいくらでもあるでしょうが、トヨタ自体の「替え」はありません。創業家というバックグラウンドで一応社長に迄登りつめたのですから、ここは身を犠牲にしてでもトヨタを守った方が得策ではないか。
ボロボロになって豊田社長の求心力が無くなり交替したとしても、アメリカ、いや世界に

トヨタは創業家社長をも取り替えてカイゼンを徹底する会社だ

とアピールできる絶好の機会となるかもしれないのです。

名古屋の記者会見で英語を使うより、公聴会で矢面に立って日本語で自社の正当性を主張することの方が、現在のトヨタにとって最善の策だと私は考えます。
昨日の記者会見では、あらためてこれまでの「拡大路線」を反省しているようですが、それならまずは歴代の社長に対し引導を渡すべきではないでしょうか。
歴代のトップの責任を追及しない自民党と同じく弱腰のままなら、真のカイゼンは成し遂げられないでしょう。

今度は長続きするか、ピエール・ガニェール

契約がなかなかまとまらなかったからか、オープンが当初よりかなりずれ込んだと言われているANAインターコンチホテルで再開する「ピエール・ガニェール」。この3月19日にオープンが決まったようです。

http://www.anaintercontinental-tokyo.jp/pierre_gagnaire/index.html

昨年のうちに、青山店のシェフだったフランス人がANAホテルに入っていると漏れ聞いていましたが、青山では結果的に失敗したガニェール、溜池山王のホテルで今度はうまくいくのでしょうか。本日は私の見方をちょっと書いてみます。

「厨房のピカソ」と言われていることは本人も認めているようですが、それはすなわち天才肌の料理人だと言うことではないでしょうか。つまり人々が驚き評価する料理は、彼しか造れないということです。
例えのピカソ、弟子が書いた絵はあくまで弟子の絵でありまして、ピカソの絵とはまったく違うでしょう。レシピを渡すから大丈夫だとの反論もあるでしょうが、私はその人達に聞きたい。

?ピカソの絵を模写した弟子の絵をピカソの絵と有り難がるのか。

拙著「グルメの嘘」にも書いてありますが、カラヤンがタクトを振るからカラヤン指揮として聞きたがる人が多いわけで、スコア(レシピに当たる)が同じでもカラヤンの弟子が振る音楽はまったく別物ではないでしょうか。
天性や感性に依存する職種ほど弟子には真似できないものでして、ガニェールの造る料理は例え一番弟子でも正確に再現できないものだと思います。

36階の「イタロプロバンス」跡に再開するようですからかなりの大箱になるでしょう。(イタロプロバンスは80席くらいあったはず)
あのガニェール料理を他人(弟子)が大勢の客に対して提供できると思って有り難がるのは、純粋な読者(ミーハー客)か業界人、文化人くらいのものではないでしょうか。

青山ではなぜ客が来なくなったのか。リーマンショックという逆風だけが問題だと甘く考えているのではないか。
「ビル高層階」、「弟子任せ」、「大箱」と条件はかなり被っております。インターコンチネンタルホテルは青山での失敗の総括をしているとは思えません。
青山と比べて有利になる点は六本木や銀座に近くなることくらいか。同伴客には使い勝手が良くなるかもしれませんが、あの多皿料理がそのままだとしたら食事時間がかかりすぎ、あまり立地の恩恵はないような気もします。
「失敗」というレッテルが貼られてしまった東京ガニェール、同じ東京での再開は厳しいものがあると私は考えます。

アロマフレスカ、おまえもか!

昨日のノルディック複合個人、へそ曲がりな友里でも興奮してしまいました。ラスト1キロを切ったところで小林選手が大バクチをうったのかスパートしてトップにたった時であります。このまま逃げ切れると信じた人は多かったのではないでしょうか。
結果的にはスタミナ切れか失速してしまいましたが、私はこのイチかバチかの勝負、本人は悔いが残らなかったと思います。

日本人は失敗を恐れて無策のまま先送りするDNAを持っている人が多い。何かやって失敗するより、何もしないで現状維持。役人だけではなく民間企業のサラリーマンにもよく見られる習性ですが、あの岡ちゃん率いる日本代表もこのDNAをしっかり受け継いでいるのではないか。私はまったくの素人でありますが、パス回しに自己陶酔しているとしか思えません。
仕掛けて失敗するのを恐れているのか岡ちゃん。風貌が典型的なサラリーマン風(と言っても報酬は億単位だとか)ですから仕方ないのかもしれません。

さて昨日、読者の方から情報をいただきました。
交詢ビル、銀座ベルビア、ニッタビルなど「閑古鳥ビル」を銀座に乱造してきた三井不動産が、またまた閑古鳥の巣窟になりそうなビルを竣工させるというのです。まずはご覧下さい。

http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2010/0128_01/index.html

完成予想図を見る限りかなりの「鉛筆ビル」。

なお、当社は、当施設竣工後、越後屋から商業施設を一括賃借し、転貸事業を行うとともに、運営管理業務を受託いたします。

とありますから、敷地は越後屋単体跡なのでしょう。ビルの建設費を越後屋に出させ、商業スペース分を三井不動産が一括借り上げし、甘い言葉で誘い込んだ純粋なテナント主から賃料をいただくビジネスモデルであると考えます。
目先しか見ない純粋なテナントを見つけて来さえすれば、越後屋も三不も損をしないシステムなのでしょうが、肝心の誘い込まれたテナントはどうなのか。それは交詢ビル、ベルビア館、ニッタビルの惨状をみれば予想がつくと思うのは私だけではないでしょう。
中央通り沿いとは言え、立地は2丁目とそれほど恵まれておりません。あのベストな立地の交詢ビルでも閑古鳥なんですから。

そんなビルにあの予約困難店「アロマフレスカ」が入るというのですから私は椅子から転げ落ちそうになったのです。
しかも12階と最上階で、20席と50席2つの店舗にするというのです。おそらく20席は「アロマフレスカ」、50席は「カーサ ヴィニタリア」のような位置づけにしたいのでしょう。
この情報を知って、私は原田氏に拙著「グルメの嘘」を進呈しなかったことを悔やみました。
「ビル最上階」、「大箱」、「安易な銀座移転」と閑古鳥の要素が3つも揃った今回の移転。

1階が呉服屋、他のフロアにはレディス服飾(プラダ系)、美容院、婚礼衣装、脱毛サロン、カフェ、女性医療、全身美容、串焼き屋&串揚げ屋、チェーン展開寿司屋、飛騨牛屋、キノコ火鍋屋、野菜ダイニング、廉価イタリアンなど、よく言えば多種多彩、はっきり言えばテナント集めに苦労したのかコンセプトなく滅茶苦茶。
この手のプロジェクトは三不の中でも若い人が中心になってやっていると聞いたこともあるのですが、センスがあるとは思えません。今までの失敗(成功していない)を学んでいないのか。

結果は推して知るべし、と私は考えます。