わざわざ条件の悪い場所に出店する意図は何だ、六角

都心や銀座へ移転してきた料理人の決まり文句をご存知でしょうか。築地で最高の食材を仕入れて料理を造りたい、銀座というレベルの高いところで勝負をしてみたい、というのがお約束のはずです。思惑がはずれて閑古鳥の店も多いですが、「さわ田」、「水谷」、「赤坂離宮」、「古拙」などなどその数は相当なものでしょう。
松坂選手の例を出すまでもなく、実力があれば最高の舞台と言われるメジャーでやりたいと思うのが腕一本で勝負する職業人の本能と言うもの。金銭面で破格の待遇を受けるという魅力もあるとは思いますけど。
ところが、日本球界の控え選手が韓国や台湾のリーグをすっ飛ばして、イタリアリーグレベルの環境へ行ってしまったと思えるのが麻布十番の「幸村」の弟子がやっているオアフ島の「六角」です。
最高レベルの相手と最高レベルの雰囲気で野球をしたいと思うように、料理人も夢は最高の食材を使って目の肥えた客を相手に腕を振るいたいと思うのが一般的ではないでしょうか。
しかしこの「六角」はそのような条件をどれも満たしてくれるものではないと考えます。
必要なら築地から空輸するとありますが、ハワイへ中卸が最高の食材を送り出すはずがありません。
ハワイまで行って和食を食べる人に食通はいないでしょう。ハワイ在住の方も、日本へちょくちょく寄らなければレベルの高い和食に遭遇することは難しい。失礼に当るかもしれませんが、ハワイは上昇志向のある料理人にとって魅力的なところであるはずがないと考えます。
昨年から「東京情緒食堂」などで煽り続けられていたこの「六角」。もう結構経ってしまいましたが私は昼だけ訪れました。
メイン通りではなく駐車場側に面している店舗は、人通りが少なく立地がわるいとはいえ、そこはアラモワナショッピングセンター。麻布十番の和食の弟子が、そうそうその入店権利を得られるとは思えません。あくまで想像ですが、日本へ入国の度に「幸村」を訪れるハワイ在住の常連の方が実力者で、スポンサーになって出店したのではないでしょうか。そう理解すると、日本球界からイタリアリーグへわざわざ行ってしまった理由がわかるというものです。
「幸村」のように和久傳の流れが見られる和食を期待したのですが、昼はまったく別物でした。
20ドル前後の、くろ豚トンカツ膳、天麩羅&鰻膳、釜飯&銀ダラ膳のような定食メニューしかないのです。
JC流に言わせていただければ、黒房下へもんどりうって転げ落ちた、といったところでしょうか。
刺身を別オーダーで所望するにも昼は用意していないとのことでした。
天麩羅は海老2野菜3で居酒屋レベルのもの。鰻は冷凍をチンしたのでしょうか。かなりベチャベチャでした。
だいたい、銀ダラ定食を頼んだとき、他の定食より15分遅くなると言われたのが不思議でした。銀ダラ西京漬けを焼くほうが天麩羅や鰻の蒲焼より時間がかかるものなのか。確かに「チン」では素早くできますけど。
30分はかかった銀ダラ。恐らく冷凍を戻すのに時間がかかったのではないかと想像します。
夜は68ドルの季節のコースと120ドルのお任せコース、そして単品では牛ロースや西京焼きがあるようですが、昼を食べると期待しろというのが無理ってもの。あの食材、あの環境で料理を造り続けたら、腕を磨きモチベーションも保つことは難しいと思います。