友里征耶 行っていい店、わるい店

Qサイト連載コラム 2003~2006年までの連載コラム

古川さんへの反論 修正後

4月7日(金) 第946回
-シェリーを特別扱いしないで-

これはキツイ言い回しを割愛し、タイトルも変更してオブラートに包んで書き直したものです。

古川さんの「シェリーのさらなる誤解」の掲載からはや2週間。
結構間が空いた亀レスになりましたが、かなり当初の論点と違ったところにポイントがずれてしまったようですので、友里が言いたかったこと、読者の皆さんへ誤解していただきたくなかったことを述べてみます。

それは簡単な一言です。「シェリーだけを特別扱いしないで!」。 私は、「シェリーは造り手の違いがでていない」とは言っておりません。「シェリーも造り手の違いが出ているでしょうが、それはシェリーに限ったことではないんです。」と言いたかっただけです。
古川さんの文調から、いかにもシェリーや日本酒だけ突出したように書かれているところを問題視しただけです。 スティルワイン、シャンパーニュ、そしてモルトだってシェリーと同じくらい、いやもっと大きいかもしれない造り手の差がでる飲み物だと思います。 鮨は顕著に現れにくいですが、料理だって同じ質の食材を使っても 「美味しさ」は料理人によってかなりの差がでるのはご承知のはず。 古川さんも、そこらの料理人よりおいしい料理を造ることができると述べられていた記憶があります。
ブルゴーニュはつまらないことを考えなければ、白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールのほぼ単一品種といっても良いでしょう。
私が再三訴えているように、最近のワイン、1980年代半以降のワインは、「濃くて早飲み」と、造り手の目指す方向性が皆同じになり、確かに個性というか、造り手の良し悪しがわかりにくくなりました。
ですから、若いワインしか飲まれない方は、「なんだ、ブルゴーニュは畑の格の違いはあるが、造り手の差はさほどないではないか」と思われるかもしれません。ボルドーもしかり。
しかし、それ以前のワインは、造り手によってシェリーに勝るとも劣らない格差が見られるはずです。 しかし、私は「ブルゴーニュの古めのワインが一番造り手で格差がある」とは言いません。シェリーもしかり、モルト、そして日本酒もあると認めています。 人には思い入れ、思い込みがあります。私はブルゴーニュが特に好きなので、思い入れがありますが、「ブルゴーニュが傑出して差がでている」とは書きません。 誰でも得て不得手や経験の多少があります。
私はそんなにシェリーを飲みませんが、スティルワインを飲む年間本数ではかなりのものだと自負しております。 逆に日本酒やシェリーはよく飲むが、スティルワインはそれほど知らず、特に古めのワインを飲まれない方もいらっしゃるでしょう。
アルザスやドイツのリースリングひとつとっても、摘む時期、摘んだブドウの選別、そして醸造方法で色、辛口から超甘口、味わいなど相当な差がでます。同じ造り手でもこのような差がでるのですから、造り手が違ったらなお更です。 日本酒の米、シェリーのブドウはどうか知りませんが、ボルドーや ブルゴーニュなどスティルワインは造り手(メーカー)が直接ブドウ栽培をしていることも多くあります。
畑の開墾や土壌制御、単位面積当たりの樹の本数、剪定方法、栽培方法なども造り手によって違います。 ワインを造る前段階、つまり原料であるブドウの段階で、造り手毎に大きな差、造り手の個性がでると言われています。 シェリーや日本酒だけが造り手の個性がでるのではなく、頑張って造っているお酒はみな個性がでているということをご理解いただきたい。

わざわざドメーヌシャンパーニュの件でメールをいただいて、私がお返事を出さなかったとのご指摘。
そうならば誠に申し訳ありません。返事をださなかったとの記憶がなく、ここにあらためてお詫びさせていただきます。
色々と読者の方からメールを沢山いただき、すべてお返事を書いているつもりですが、書き落としか読み落としてしまったのかもしれません。今後は気をつけます。 しかし、この経緯をこの件で突く意味があるのかどうか理解できません。

友里の「ネタ不足」は、あくまで自虐ジョークです。ネタ不足はご心配無用です。 古川さんのように、どこそこのバルバリー鴨、誰かがとった鱸、 あそこの酒造会社の純米酒、といった宣伝にも取れる特定業者の食材を数限りなく何回も繰り返しコラムで取り上げ、身内との宴会内容を記録的に何日にもわたってつづけ、ワインのコメントも「雑味がない」と通り一遍で面白みのないコメントに終始し、読者にさして必要ない専門知識を本から抜粋して列記するなどのコラム数稼ぎをこの友里にも許していただけるなら、私のコラムネタは湯水のごとく湧き出てきます。 日常的な友里の知人たちとの会食内容、そこそこ有名な人を囲んだ宴会、レアなワインを飲んだ自慢、そして専門書の書き写し、楽なものです。

シェリーの専門家、ドメーヌシャンパーニュ関係者など利害がからむ「特定の方」ではなく、ワイン全般に詳しい方、ある程度のレベルのソムリエ、常識あるインポーターにぜひ古川さんと友里の主張を判断してもらいたいものです。 両コラムを読まれている読者がいらっしゃったとしたら、 「友里氏は、知らない分野については机上の知識、あるいは業界の知り合いから学ぶ知識だけで片付けているようだが、シェリーのバリエーションを実践して飲んでみれば理解できるはずだ。」の
『シェリー』を『ワイン』に置き換え、『友里』も『古川氏』に置き換えた方が、はるかにすっきりするとお思いの方もかなりいらっしゃると私は確信しております。

私も理工系出身で先輩や知人からよく言われたことがあります。
「お前は理工系だから、視野が狭い」
古川さん、そしてこの友里も含めて、当たらずしも遠からずではないでしょうか。