年末に見た映画2つ

年末年始と1週間以上自宅に籠もってじっくり休養しております。起きているときは酒を飲むか、食事をするか、もしくはTVを見るだけか。昨日も学生駅伝をついつい見てしまった。自分も歳とって嗜好が変わったなとあらためて感じてしまいました。

選手は必死に自己だけではなく母校の名誉をかけて頑張っていますが、世俗的な見方をさせていただくと長距離(広く言えば陸上競技)をやっている人のモチベーション維持は大変ではないかと。
超有名選手(以前のQちゃんこと高橋選手など)は招待選手としてそこそこのギャラが貰えて、コマーシャルでも稼げるでしょうが寿命は瞬間的。はっきりしたプロというものが存在していないのが日本の陸上競技だと思います。
球技しかスポーツ経験がない友里にとって、ただ走ったり跳んだり、投げたりするだけの単純な競技を、苦しい練習含めて続けていく気力(忍耐力)には脱帽するばかりであります。

トップアスリートの人たちでさえ、賞金が出るレースなど限られておりますので、彼らの生活設計としては現役を続けることを前提にした

陸上競技に力を入れている企業

への優先的な就職くらいしか役得はないのではないでしょうか。うまく世渡りできれば、現役引退後の監督やコーチといった職につくことは出来るでしょうし、世界に通用する選手になれば、協会の年寄りに取り入ることにより、協会の理事などに潜り込んで生計を立てることができるでしょうが、その確率は非常に少ない。昔

陸上は自分なりの哲学を持っていなければ続けられない

と聞いた記憶があるのですが、ゲーム性がないだけに一生続けていくのは難しいスポーツであると思います。

医学的には素人でまったくの暴論とも言えるのですが、私は

一生の心拍数は限られている

と信じております。何10億回なのかはっきり言えませんが、その人の心臓が打つ回数には限りがあるので、無理に心拍数を増やす行為をしたら心臓の寿命が縮まるという暴論であります。
心臓をエンジンに例えてみればわかるという機械工学的な考えでありまして、医学的な根拠はまったくないかもしれません。自身も球技を通して(エアロビなど有酸素運動も)心拍数を上げることをしているので考えと行動は矛盾しているのですが、最近は無駄に心拍数を上げてはいけないのかなと思うようになりました。
稼ぐことが難しく、限られた心拍数(あくまで友里の偏った思い込みです)を消費するとしたら、長距離競技は大変なスポーツであると考えます。

イントロが長くなりましたが、本日のお題は年末に見た映画の感想です。期待して見たもの、期待しなかったもの、と鑑賞前の先入観は異なりましたが、鑑賞後感はどちらも

たいした映画ではなかった

でありました。個別に短評を書きます。

相棒 劇場版
「相棒」シリーズ最高の出来とか水谷豊が

ゾーンに入った

とか言っていたのでかなり期待して臨んだのですが、期待はずれでありました。警視庁幹部を人質に取ったシーンはあっけなく冒頭で終わり緊迫感はほとんどなし。
真相(警察幹部の暴走行為)を暴きたいという犯人の執念も私には無理がある設定だと感じました。何より全体が間延び過ぎ。たいした謎解きもなく誰でも結果がすぐ想定できるなど脚本も安直。
まだ劇場版(マラソンをベースにしたもの)の方がマシでありました。最後の

驚くべき結末

というのも、内容が平坦で盛り上がりに欠けるので無理に造ったのでしょうが、この結末の切っ掛けと動機があまりに貧困、無理があります。
この結末が何だか書いてしまうと、アンチの方々から「ネタばらし」と批判されるので具体的には書きませんが、

今後のシリーズでは回転寿司での会食シーンがなくなる

と書きますと、相棒ファンにはおわかりいただけると思います。ドラマとしては味あるシーンでしただけに、この映画の盛り上がりと引き換えでは、失うものが大きかったのではないかと考えます。

スペースバトルシップ ヤマト
宇宙戦艦ヤマト世代としては、キモタク、もとい、キムタクが古代進では

夢が壊れる

とブログで書いた手前、見に行かないわけにはいきません。大晦日のシネコンでありましたが、客入りは半分くらいだったでしょうか。
友里掲示板では

意外に良かった

というご意見もいただきましたが、キムタクの

滑舌の悪さ

に加え、黒木メイサとの中途半端な恋愛シーンも不自然。
相棒劇場版が間延びと評しましたが、このヤマトは壮大な物語を

端折りすぎ

ていて、まったくストーリー的に物足りなかった。
学生時代、日曜19:30より30分のアニメを毎週見ていた友里。イスカンダルまでの数多いエピソード(復路は少なかった)で不覚に何回も落涙した記憶がありましたが、この実写版ではまったく感情移入できませんでした。佐渡先生がなんで女性(高島礼子)なのかもまったく疑問。ミスキャストというより、性別を勝手にいじるなと私は言いたい。
だいたい何の役をやっても演技が同じという役者

キムタクと柳葉敏郎

を2名も出演させてしまったら、他の役者の演技力にも悪い影響を与えてしまうではないか。貴重なバイプレーヤーだと思っていた山崎努もまったく良い味を出していなかっただけに、この2名のワンパターン演技者の

罪は重い

と考えます。
キャラがあっていたのは西田敏行くらいか。橋爪功も見ていて吹き出しそうになる演技で緊迫感なんてまったくなかった。

相棒と同じく最後に盛り上げたかったからか、アニメにはなかった結末も私には理解できない。主人公を犠牲にしなくても、盛り上げる脚本を書くべきではなかったか。
若い頃の思い出ですから美化してしまうのかもしれませんが、昔のアニメを知らない人は別にして、ヤマトファンだった人にはオススメできる出来ではないと考えます。

やっぱりワインと食材は先入観だ!

今年は久々に自宅での正月。元旦は購入したお節らしきものを食べながら日本酒やシャンパーニュを飲んで過ごしました。
日本の伝統行事ではありますが、このお節や雑煮を二日以降も食べ続ける気にはなりません。一日で飽きてしまったというと怒られるかもしれませんが、今日はカレーか麻婆を食べたい気分であります。

最近は元旦から営業している店もあるようです。菅さんが大好きな遊玄亭(叙々苑チェーン)ですが、他店が閉めているだけにこの時期は大盛況のようです。また、京都の料理店も稼ぎ時ですから元旦は別にして営業しているはず。叙々苑以外にも、ホテルのレストラン(寿司も含めて)やあの細っ腹な「しみづ」もやっていると聞いております。
正月早々から外食が出来るのですから、年々お節を必要としなくなる環境となってしまったということでしょう。
しかし市場は閉まっているこの時期に、どうやって寿司を提供するのか。この時期は漁師もさすがに仕事をしていないでしょうから、市場を通さない直買い付けも困難なはず。鮪などは冷凍を使用すれば良いのでしょうが、貝や白身はどうするのか。かなり熟成させた(させすぎた?)ものを出してくるのではないかと想像します。

さてお節やシャンパーニュを飲みながら日中からTVをつけて時間を潰した元旦。正月に限りませんが、どのチャンネルもジャニーズと芸のないお笑い芸人の番組ばかり。
歌や踊りといった芸術性?のある芸を披露するジャニーズは未だマシとしても、何の生産性もない吉本を中心とした芸人のおちゃらけ番組には辟易です。
正直彼らのトークは全然面白くない。番組スタッフの無理な造り笑い声をオンエアさせているのは、そのつまらなさをごまかすためではないか。こう言っては自信過剰と言われそうですが、友里のトークの方が遙かにウケるのではないかと思ってしまいます。

そんな中でブログネタになるかと無理してみたのが正月恒例TV朝日の

芸能人格付チェック

であります。落ちぶれたタレントや芸人を集めてきて、ワイン、食材、楽器など高価なものと廉価なものの2つからどちらが

高額か

を当てさせる番組であります。
途中見逃したものもありましたが、友里が注目したのはワインと牛肉の比較でありました。
まずはワイン。DRCのモンラッシェとカリフォルニアの確か数千円のワインをテイスティングするものです。
ワインの中身をバラしてからの味見では、当たる可能性が高くなると思うのですが、それでも半数以上のタレント・芸人がはずしていたでしょうか。だいたいワイン好きでも滅多にDRCのモンラッシェを飲む機会はありませんから、飲んだことのない人(カリフォルニアワインも)には無理なのかもしれません。しかし番組でこのモンラッシェを

100万円相当

と紹介しておりまして、私はひっくり返ったのです。そんな古酒を出して良いのかと画面をじっと見てみるとただの

2000年もの

ではありませんか。日本でのリリース価格は10万円台半ば、現値でも数十万円の代物をこんなに大袈裟に表現してしまっては、また純粋無垢な視聴者を混乱させてしまうことになります。

そしてこの番組の最後を〆たのが牛肉。神戸牛(100グラム2万円?)と国産牛(100グラム1000円)の食べ比べであります。
確か国産牛と紹介されていましたから乳牛ではないか。これが100グラム1000円なら高すぎると思うのですが、神戸牛で100グラム2万円なんて肉があるのか。

あら皮より高いではないか

と私は憤慨したのです。
乳牛と神戸牛はまったく別物でありまして、また霜降り肉大好きな(大味好きな)タレント達ですからこれは間違えないだろうと見ていたら、

ほとんどのタレントや芸人がはずしてしまった

のです。
彼らは味がよくわからない人が多いですから、脂べっとりの和牛は大好きなはず。唯一食べ慣れた高級食材だと思っていたのですが、それでも国産牛との違いがわからなかった。
私が昔から訴えている定説、

ワインや料理の味わいは先入観に左右される

は立派に証明されたと考えます。

その他で興味深かったのは「演出の比較」であります。
結構有名な映画監督と素人の芸人の二人が、同じ男女の演じ手を使って告白シーンを撮ったと思って下さい。
どちらがプロの監督の作品かを当てるのですが、トリックなど人気作品の監督が、芸人の方を

プロ監督の作品

と判断しておりました。
要は高いか安いか、プロか素人かは絶対的な判定基準がないということであります。世の中、正に

言ったもの勝ち

であります。鮨屋で

大間の鮪  淡路の鯛

とか食べる前に言われると、例えそれが別の場所で釣られて単にその港で水揚げされただけにものでも

美味しい

と感じてしまうのが人の感性なのであります。
成金を中心に大人気のワイン生産業者

DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)

白ではモンラッシェ、赤ではロマネ・コンティが最高峰でありますが、少ないながら古めのものから新しめのものまで飲んだ友里の経験から言わせていただくと

どこが美味しいのかよくわからん

ロマコンは確かに色が薄かったですが、それ以外は前もってDRCだと言われると

それらしき特徴の香り

を感じるだけのこと。ワイン名を告げられず、目隠しして他のワインと飲み比べさせられたら、10年以上世界一ソムリエという称号を引っ張っている

田崎真也氏

でも判断を間違えることがあるのではないでしょうか。
料理もワインも、そして音楽や絵画、演劇など絶対数値で表せないものは生産者、作家、作者、指揮者、演奏者などの

名前がすべて

であると私は考えるのです。

立地の妙による過大評価

と同じく、一般客だけではなくその道のプロも間違えるのが

先入観による思い込み

であるというのが本日のお題でありました。

謹賀新年

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年は2週間ほどダウンしてしまった咽頭炎など体調不調が何回かありました。もう歳だから無理をするなというサインだったのかもしれません。年末には身内の不幸も重なりまして予定していた旅行のドタキャンもありました。
今年は平穏無事な1年をおくりたい(友里征耶をやっているかぎり無理か)と思っております。

政治の混乱が収束せず景気は相変わらず不透明なまま。一部の大会社だけが利益を上げ、その経営陣(特に社長)の年俸だけが億単位と派手になるだけの日本。アメリカの悪いところだけ模倣してしまったこの不毛な10年、果たして取り返すことが出来るのでしょうか。

料理業界も曲がり角に来ているのではないか。一世を風靡した「エル・ブジ」もやっと閉店。この10数年は味わいを軽視した奇を衒うサプライズ料理が全盛でありましたが、そろそろ純粋無垢な一般客も気付いてきたのではないか。
料理は見た目の盛りつけや意外性、そして皿数の多さ(小ポーション)より肝心の

食材や調理技術による味わい

が重要であるということであります。
別に高額で高質な食材を使えば良いというのではなりません。せっかくの素晴らしい食材も

生焼けの低温ロースト

で提供しては意味がないからであります。なんとかの一つ覚えというのでしょうか、似非料理評論家や似非フードライターだけではなく、素人のブロガーまでが

完璧な火入れ

とか称して、中身が赤い(魚の場合は妙に照りがでている)生焼き調理を絶賛している不思議。低温ロースト、もしくは長時間ローストは、食材の良さを最大限に生かす調理法ではなく、火入れの失敗を限りなくゼロにすることができることによる

仕入れ食材を無駄なく最大限に利用できる

という店側の都合が隠れているのです。
露出がかなり減った過食のオコチャマ・来栖けい氏がブログなどで盛んに自慢している肉料理ですが、換言すれば彼のような素人でも時間をかければそれなりに仕上げることが出来るのが

低温ロースト 長時間ロースト

であると証明しているわけです。
しかしここ数年、日本だけではなく本場欧州でも

ビストロ(トラットリア)回帰

が目立つようになってきたはず。パリではネオビストロと称しておりますが、多皿、低温ロースト、フルーツピュレやエスプーマを封印し、低温調理人が提供できない

ソースや煮込み

に力を入れた料理を提供してきております。東京でも新規オープンする店は自称も含めて

ビストロ

が大半を占めるようになってきております。
原則前菜とメインの2皿で完結の料理単価5000円しない店が連日満席のパリ。確かに料理単価数万円のグランメゾン系3つ星店も客は入っておりますが、日本では中途半端な規模の

多皿・低温(長時間)ロースト・ソースなし・煮込みなし

だけに頼る店は厳しい時代に突入すると私は考えます。
昨年末の訪問で脱カンテサンスに舵切りしたと感じたフロリレージュに加えて、ユニッソン・デ・クールなどソースを造れる料理人の台頭により、一世を風靡した

カンテサンス Hajime カ・セント

などのシェフ達は方向転換を余儀なくされる年になるのではないか。はっきり言えば

ソース造りや煮込み料理を習得するための再修業

の必要性を感じ始める転換期がこの2011年であると予想します。

最後に今年の抱負と言いましょうか、予定を挙げてみます。
4月頃に友里征耶初のオススメ本を鉄人社から出版予定。6月過ぎには宝島社から飲食店(飲食業界)の問題点を更に掘り下げた問題提起本を予定しております。

今年も一年、読者をかえりみず魂を売って店宣伝に明け暮れる自称料理評論家、自称フードライターたちの駆逐を目標に、剝がれかかった覆面を手で押さえながら店評価を続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。