銀座の「井雪」訪問

友里は、一般客、一見客が訪問できない店を原則書くことはしていません。山本益博さんと違って、「一般客」、「一般読者」に軸足を置いていますので、行けない店や食べられない「特別料理」の事を自慢げに書いても意味がないと思うからです。
また、キャパが小さくマスコミに露出してしまうと店の雰囲気が変わる、今まで支えてくれた常連客に迷惑がかかる、との配慮から頑なにマスコミやネットへの露出を拒む店についても書いていません。ただし、「東京カレンダー」などの取材に応じて、写真を載せさせ店名を明かしながら、住所や電話番号を隠すという「集客の仕掛け」をする店はきっちり取り上げてきました。一般客、一見客を拒絶する意味の「店データ未公開」の店が、なぜ一般客が情報を得るために購入する「宣伝雑誌」の取材を受けるのか。まったく矛盾しております。そういった意味では、一日1組、2組といった小キャパの店もこのような「煽り雑誌」にでる必要はないと思っております。
さて、今日はそのマスコミ露出をしていない和食店「井雪」についてちょっと書いてみます。
店データを公開しておらず、紹介制のような形をとっています。ではなぜ取り上げるかというと、ネットへの露出は制限していませんし、「東京レストランガイド」には住所は銀座としか記されていませんがレビューは載っています。また、エキサイトの社長のブログでは実名挙げて絶賛、多くのブログでも取り上げられていて歌舞伎座の反対側の路地を入ったところと所在も簡単にわかります。また、主人の修業店だった「京味」を訪問していることを告げると予約が取れるということも聞いており、完全な「紹介制」の店ではないと判断したからであります。
知人に連れて行ってもらった私の感想は、「ちょっと違うんじゃないの」。
カウンター7席と個室という小さなキャパで満席です。客層は業界人や経費族である会社役員が主体でしょうか。「京味」より年齢層が高いような気もします。
修業店と同じことをしていては駄目なので変えているとのことですが、料理ではなく接客も変えているところが感心できません。連れて行かれた一般客として直ぐ感じたのは、主人や女将の露骨な「常連重視」の態度です。いや、2回目の訪問でもいいのです、今後も通いそうな資金に余裕のありそうなそぶりをする客に露骨に媚をうる態度に失望しました。
確かに常連客は大事です。一見客より大事なのはわかります。より良い対応をとることも当然でしょう。私でもそうすると思います。しかし、それをあまりに露骨にやってしまっていいのだろうか。さりげなくするべきです。「京味」の西ざんも常連客を大事にするでしょうが、あそこまで露骨にしていません。というか、初めて訪問する客にも、ほとんど分け隔てない対応をしているはずです。
「確かに京味より1万円ほど安いけど、その価格なりの食材と質と調理。京味とは接客もぜんぜん違うなー」と、連れて行ってくれた知人も同じ意見でありました。
年配の経費族や業界人を狙った「わかりやすくやや濃い目の味つけ」、常連にはコースではなくいくつかの単品の後、出汁巻きやカレーを出していたのには驚きました。
京味より安いとは言え客単価2万5千円前後の高額和食屋です。カウンターの隣でカレーを食べられたら雰囲気ぶち壊しであります。
今はイケイケでしょうが、早く路線を修正したほうが良いのではないでしょうか。年配経費族、業界人向けでは料理のレベルを維持するのは難しく、露骨な「金持ちすりすり営業」はそのうち頓挫します。
しかし、京味出身の若い料理人にはこの傾向が共通しているのが不思議です。
同じく紹介制の赤坂「もりかわ」も、主人と女将が「有名人特別待遇」をしているところを目撃したことがあります。
西さんには、料理だけではなく接客の基本についても弟子にきっちり教えていただきたかったと考えます。