最近訪問した店 短評編 2010-20

まずは自己宣伝です。今週、火曜日発売の「週刊朝日」で、拙著「グルメの嘘」(新潮新書)が取り上げられます。
出版して半年が経ってしまった「グルメの嘘」ですが、600文字超を使った紹介文ですので、結構大きく取り扱っていただくようです。どういう基準で拙著が選ばれたか、他の新書をみてみなければわからないのですが、これで勢いが落ちてしまった売れ行きが少しでも回復することを期待しています。
とはいえ、新書というのは同じ出版社でも毎月複数冊出してきますから、新陳代謝が激しいんですね。棚(販売スペース)は限られていますから、そして「新書」というくらいですから、店に並ばなくなる時期は早いと思います。一種の「使い捨て」みたいな面もあるかもしれません。

さて3店です。

ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタル)
メニュー構成は青山時代と変わっていません。コースとアラカルトがあり、ネーミング(東京へのオマージュ?)なども不変。多皿も変わりませんが、以前のように一気に3皿も4皿もでてくることはありません。
料理は悪くはないけど、どれも印象に残るものはなかった。満席ではなかったのは大箱(50名くらい?)だからかもしれませんが、それにしてはオープン1ヶ月の熱気はありません。
青山の失敗の責任をサービス陣(責任者だった渋谷康弘さんのことでしょう)の能力不足と断言し、自らの責任を逃れたガニェール氏が連れてきたフランス人の髭の支配人。奥さんが日本人で日本語が堪能とのことですが、その立ち居振る舞いやサービスを見る限り、「ロオジエ」にいるお飾り外人と大差ないと私は感じました。
ワインの値付けも高く(ノンヴィンシャンパーニュが13,600円以上)、勿論料理代も高い。
当初の鼻息と違って、ネットを含め話題にもなっていないようで、これはサービス云々の問題ではないのではないか。
料理やワインの値付けに見合った満足感を客が感じないのが盛り上がらない主因であると考えます。

幸村
さとなお氏が絶賛していた「花山椒」の時期に訪問。
驚いたのは幸村氏の会話。京都弁ではなく標準語に戻っております。東京生まれですからやはり無理に京都弁を使うのは不自然だと気付いたのでしょうか。
花山椒鍋は勿論「牛」を使用。野菜やホタテ、酒と味醂などを使用した出汁との事でしたが、私には味醂が主役のように感じた味わいでありました。結構加熱するので、花山椒の香りや「麻」が飛んでしまっています。今年は「堀兼」、「かどわき」で花山椒鍋を食べましたが、いずれも期待したものを感じません。もともとがたいした料理ではないのでしょう。実際、私の限られた京都での経験でありますが、「花山椒鍋」なんて出てきたことはありません。
いつ来ても「京料理」とは思えない東京の3つ星「京料理店」でありました。

新津鮨
こんな店名の鮨屋はありません。はじめて新津さんの鮨(ツマミも)を食べる機会に恵まれました。
「西麻布 青木」で週に1日、完全予約で開かれる「新津劇場」でしたが、彼のトークは面白く飽きない時間を過ごすことが出来ました。
タネの仕入れと仕込みは「青木」が対応。新津氏が担当するのは酢飯と握りであります。
「さようでございます」、「・・・でーす」とのお約束の口癖乱発は確かに面白かったですが、一人当たりの支払いが5万円ですから、食後感は人によってかなり分かれると考えます。