レミーのおいしいレストラン

先週末に映画を2本見てきました。「トランスフォーマー」は予告編とはまったく違って宇宙からの侵略者の恐怖感のないただのロボットとの友情を絡めた少年冒険もの。それなりに時間を楽しめましたが、昔の変身ロボットアニメを見ているようなものでした。
そしてこの「レミーのおいしいレストラン」。映画館内は子供連れが多かったですが、内容はある意味大人も楽しめるというか、飲食店への真面目なメッセージが込められていると私は思いました。
映画評論ではないので内容その他は省きますが、今は亡き天才シェフ・グストーが発する次のフレーズが頭に残りました。
「真の情熱があれば誰でもシェフになれる」。映画では主人公のネズミがシェフになるのですが、私はこの言葉は今の料理業界への問題提起ではないかと考えます。日本だけではないと思うのですが、この業界、「真の情熱」も持っているシェフがなんと少ないことか。換言すれば、「金儲けに情熱を注ぐシェフ」がなんと多いことか。
映画でもグストー亡きあと店を仕切っている料理長(悪役)が、「グストーブランド」を利用して、冷凍食品、中華食品、ブリトーなどのファストフードの販売に血眼になっている様が描かれておりました。アメリカでも儲けに奔りすぎる料理人や経営者が目立っているのでしょう。
最終的には主人公(ネズミ)と準主人公(料理の下手なシェフ)とその恋人が、ネズミと人間のための小さなビストロ「ラタトゥーユ」をオープンしてハッピーエンドになるのですが、ラタトゥーユを食べた超辛口の料理評論家が「料理を楽しむのを忘れていた」と感激した場面は考えさせられるものがありました。
不当な金儲けなどの邪心のない純粋に料理が好きなシェフの料理を食べると心が洗われるということでしょう。この友里でさえ料理を楽しめるようなシェフが増えてくることを期待するばかりです。(実際は私はその場ではたいてい仲間と楽しんで食べているんですけど)
しかし、この映画の監修、吹き替えを石鍋裕シェフが担当、応援レストランとして提携している店の中にクイーン・アリスがあるのは何かの間違いではないか。完全なミスキャストであります。
質を一切無視した多店舗展開を続けるクイーン・アリスグループ。中華、ヴェトナム、イタリアンから最近は日本料理にまで進出し、地方のホテルの披露宴コース料理のプロデュースまで請け負って稼ぎまくっているこのフレンチシェフに、天才シェフ・グストーのいう「真の情熱」があるとは到底思えません。エンディングにある「ビストロ・ラタトゥーユ」とはまったく重ならないのです。
画龍点晴を欠くというのでしょうか、せっかくよいメッセージをもった良質なアニメを造ったのに、配給会社の安易な戦略がちょっと残念でありました。
※芝浦工業大学教授・古川修氏との訴訟経緯ですが、先方の書面がエライ細かく沢山出てきたのでまだ読み切っておりません。近いうちに骨子をアップさせていただきたいと思います。