カンテサンスでの追い返し(ウエーティングまで入店してます)に関して

ここまで盛り上がるとは思いませんでした、カンテサンス・岸田シェフ判断の友里一行追い返し事件。掲示板はもとより友里ツイッターもかなり盛り上がっております。

その中で、少数意見でありますが友里批判&岸田シェフ擁護の意見を紹介させていただきます。

1、店のメニューに友里を満足させるものがないから入店を拒否しただけ
2、店にないものを求める客を出禁にしてなにが悪い
3、イヤなら、嫌いな料理なら行かなければよいだけのこと
(以上、要約)

3はヨイショライターがよく使う友里批判であります。一般客ならその通りでしょうが、一般客目線と副業とは言えレストランの批評を仕事にしているのですから、好きな料理を出す店だけ訪問していては商売にならないんですね。

1と2を主張されている方はその前提を大きく勘違いされていると思います。友里は店の看板から推測して、店にないものを要求して批判をしているのではありません。
たとえばローストビーフ専門店と称する店で

ワイン煮込みがないのはおかしい

と批判するのはお門違い。中国料理店や和食店で

牛ステーキがない

と文句を言う客もおかしい。(最近は出す店もありますけど)
しかしカンテサンスの看板は

(現代風)フレンチ

なんですね。その看板のもと

メインの火入れものはソースなしの低温ローストばかり

がおかしいと申しているのであります。低温ローストは数あるフレンチ火入れの調理法の

one of them

現代風といってもフレンチは低温ローストだけではないのです。それは最近のフランス(パリだけでも可)で

3つ星だけではなく流行のネオビストロを訪問したら誰でもわかる

ことなのであります。ソースのある料理や煮込み料理より

ソースなしの低温ロースト料理を探すのが至難の業

であると考えます。
ところがカンテサンス・岸田シェフは、

ソースなしの低温ローストが現代風なフレンチ調理法

と日本の純粋無垢な客や読者を啓蒙しているのですから罪は大きいのではないか。
その例として、Invitation 2007年5月号に掲載された岸田シェフの発言を転載します。

あっちに行っていろんなシェフと会って、パスカルが一番現代的な料理を作っていた。彼の考えでは、「ソースはおいしいっていうのは知ってるよ」と。でも、ソースがおいしすぎて、素材よりもソースがおいしいのはもったいないんじゃないかと。
素材がよくて、塩と火加減がしっかりしていればおいしいだろう。
素材を尊重するなら、ソースが旨すぎちゃいけないんじゃないかと。
彼はよくいっていたんですね。
そういう考え方に触れているうちに、僕もちゃんとした素材があるなら、きちんとキュイソンしてやればいいという考え方になってきた。
今の僕はソースの素晴らしさも、パスカルのやり方も理解しているけど、どちらかを選ばなくてはならない。混ぜる事はよくない。
料理にはコンセプトが必要なので、いいとこどりというのはできないと思います。だから僕はより現代的なほうを選んだ。

この岸田氏のレトリックに気づく人は純粋無垢な人は皆無ではないか。過去に何回も主張しましたが再度書いてみます。

確かに素材がよければ、塩と火加減をしっかり管理して調理すれば美味しいのは誰もが認めるところであります。 しかしだからといって

ソースがおいしすぎて、素材よりもソースがおいしいのはもったいないんじゃないかと。

このように結論づけるのはおかしい。

高額店なら素材の良さを殺さずより昇華させるソースというものを考えるべきではないか

彼の主張を換言すれば

自分(岸田シェフ)が造るソースは店で使用する素材の良さを打ち消してしまう
自分(岸田シェフ)は素材をいかすソースが造れません

と岸田氏が言っていると友里は受け取るのであります。

素材を尊重するなら、ソースが旨すぎちゃいけないんじゃないか

と岸田氏は言っております。しかし私は彼が

旨いソース=素材の良さを消してしまう味の強いソース

と勘違いしているのではないかと思うのです。
よいソースとは素材と共存できるもの。食材の質の高低にそれぞれあったソースというものが存在するのではないか。

確かに質の悪い食材に使うソースは、素材の質をごまかせるもの(味濃いソース)が必要でしょう。居酒屋や廉価な和食店の味付けが「濃い」のと同じであります。
しかし、質が高い食材や個性ある食材の場合は、食材の良さを更に引き出すソースというものがあるはず。

癖のあるジビエ、たとえば

フランス産の野ウサギや山鴫を塩で焼いただけで食べられるのか

確かに牛や豚(カンテサンスでは鴨も出ますか)は塩胡椒で焼いただけで食べられますが、ジビエなどの食材は焼いただけでは食べられないものも多い。つまり塩胡椒しかしない調理の店では扱う食材も限られてしまうんですね。

つまり、カンテサンスは「(現代風)フレンチ」との看板を上げているにもかかわらず

火入れは低温ローストに固執しているので、扱う食材も普通のフレンチと違って限定されてしまう

のであります。友里はカンテサンス信奉者や岸田シェフ信奉者に声を大にして言いたい。

現代風フレンチは、低温ローストだけなのか
現代風フレンチは野ウサギやベキャスなど癖のあるジビエを出さないものなのか

やっかみもあるでしょうが、同業者から

岸田シェフの引き出しは少ない

と言われてしまうのはここにあると考えます。
たとえば「京味」や「もりかわ」が、素材を尊重するので出汁が旨すぎちゃいけないんじゃないかと考えて

出汁を使わない料理

ばかり出してきて、果たして有り難く通い続ける客がいるでしょうか。
江戸前鮨屋が、素材を尊重するためには〆や煮きり、ツメをひいてはいけないのではないかと考えて

生の切り身で塩や柑橘系を使うだけの握り(小倉寿司はこれに近いかも)しか出さない

ようになったら鮨通はどう判断するのか。
何事も極端はいけません。

素材が負けるのを気にしてソースを一切造らない

はあまりに偏った、と言うか自分勝手な論理。
掲示板ではフランスで今や低温ロースト(長時間ロースト)に出くわすことはないとまでおっしゃる方も出てきております。

だから僕はより現代的なほうを選んだ。

2007年には現代的と思っていたようですが、最近岸田氏はパリへ行っていないのか。
いや当時でも、パリはアストランス以外のフレンチへ、岸田シェフは色々通った経験があるのか、友里は疑問なのであります。
パリで増殖するネオビストロ(1990年代から増え続けています)で

ソースなしの低温ローストメインがどれほどあるのか

友里は大いに疑問。いや3つ星にハードルを上げたとしても、アストランス以外で

ソースを一切出さない店

があるのかどうか。友里は再度問いたいのであります。

いや昨秋アストランスを再訪しましたが、かなりコース内容が変わってきておりまして、昨秋最後に食べたカンテサンスとはかなり違っておりましたことを、ここに付け加えさせていただきます。

なにを勘違いしたのかソースを封印してしまったため、使用食材の選択肢が限定されるカンテサンス。現代風フレンチではなく、

低温ロースト専門店
フレンチ(低温ロースト専門)

と表記していれば、友里は

ソースがでない、造れない
引き出しがない

と批判しなかったでありましょう。
またカンテサンスが会員制をとっており、ミシュラン掲載も拒否していれば

友里はカンテサンスを取り上げ批判することもなかった

のであります。

最後に。今まで友里はカンテサンスや岸田シェフ以上に厳しく批判した料理人がありました。
「幸村」や「かどわき」、「分とく山」などでありますが、いずれも

出入り禁止になっていない

ことをここに付け加えさせていただきます。
いずれの店も友里批判にかかわらず、カンテサンスと同じく

コンセプトを変更してない

のでありますが、岸田シェフと違って懐が深い(岸田氏が狭すぎるのか)のでありましょう。

引き出しが少ないだけではなく、懐も狭い自称フレンチ

それがカンテサンスの実態だと断言すると、また信奉者には怒られるかもしれません。

追い返しの説明をしたメートルから

コンセプトを変えていないから○○さん(友里の本名)を満足させる料理を出せない。追って岸田から事情を説明する

と言われましたが、現段階で説明はまだありません。
というか、食べログ見ると最近は

コックオーヴァンなど煮込みも出している

ではありませんか。以前友里も煮込みをここで食べたことがありますが、素材重視の現代風と言っておきながら

コンセプト変更している

と受け取るのは友里だけでしょうか。
おそらくリピーターには低温ローストばかりだと飽きられるので煮込みも出しているのでしょうが、友里の経験から言わせていただくとカンテサンスの煮込みは

付け焼き刃

低温ロースト専門店でソース料理や煮込みを求めてはいけません。