アルキメーデ

マスヒロさんとは違ったヨイショ、紹介の仕方で生業に励んでいる「やまけん」さん。食材の生産地、生産者を不自然に持ち上げて紹介しているので前から胡散臭い人だと思っていたのですが、その彼と知名度はかなり落ちるでしょうがやはりヨイショ系のグルメ親父の古川修さんが絶賛していたシチリア料理店がこの「アルキメーデ」です。
神泉駅の出口のほぼ対面。赤いロゴの半地下の小さなお店であります。シチリア料理だというのにこの店はプリフィクスのコース(6000円)の1本勝負です。よって、小学生以下の子供の入店は不可。コース総量のボリュームがかなり多いのが特徴です。
最初に出る鹿熊豚のリエットとレバーペーストは可もなく不可もなし。他店でも出会えるレベルであります。しかし、その後つづく料理に驚きです。突き出しの人参のズッパのあと、シチリア風の前菜が小皿で
8皿くらい出てきます。カツオ、トリッパ、カポナータ、トマトモッツァレラ、ナスのフライ、鰯などなど。どれもシチリアテイストであることは間違いなし。その後が本日のパスタと5種ほどから選んだパスタの2種が一皿に盛られて出てきます。ペスカトーレなど傑出さを感じないまでもまずまずでしたが、早ここでかなり満腹になります。
メインはウリの鹿熊豚のロースやハラミなど各部位のローストを頼んだのですが、これが半端な量ではありません。肉は旨みもあり悪くはなかったがかなり大食いだと自負しているこの私が食べきれませんでした。こんなことは滅多にあるものではありません。
全体に塩をきつめに効かした味付けは悪くない。しかしシェフは大きな勘違いをしていると思います。量が多ければいいってもんではありません。つまり、料理と味付けのバランスとコースの構成が悪いのです。全体に濃い目の味付けの料理ですから、それほど食べられるものではありません。特にメインの豚は、ジュに醤油かモロミのようなものを加えているように感じるほど味濃いものでした。これだけ濃いとかなり胃に負担がかかります。絶対食べきれないので子供が不可なのでしょうが、一般男性でも無理でしょう。ではなぜ食べきれないほどの量のコース構成にするのか。量を減らして価格を下げろといった野暮は言いません。量が多いことをウリにしたいのでしょうが、残してしまっては本末転倒。家に持って帰って食べてもおいしいはずがありません。
そして8種の前菜も問題です。ほとんど知られた料理が出てきますから、一度に味わえるのはいいですが次回に行く気がしなくなります。シチリア料理は好きなものを選んで仲間とシェアして食べたいものです。前菜8種を丸ごとしょっちゅう変える事は不可能でしょう。初めての客には知られた料理を出さなければならないからです。二度目以上の客用に別の8種を用意することは出来ますまい。メインに牛や子羊といった別の食材を用意しているようですが、この量を味わってしまうと、メインの食材の違いだけでリピートする気がでるかどうか。
多皿前菜とビッグポーションのコース料理、その戦略がかえってリピート客を限定して自ら首を絞めることになるのではないかと私は考えます。