「東京いい店うまい店」は使えない 1

拙著「グルメバトル」とほとんど同時期に2007?2008年版を出版した「東京いい店うまい店」。飲食店ランク付け本としての歴史は40年とかなり古い本であります。当初から執筆人の覆面制を強調した「匿名取材」をウリにしています。顔が割れた取材では、一般客の目線を確保できないと巻頭で宣言していますが、果たして内容は一般客、一般読者にとって為になる、使い勝手の良い本なのでしょうか。
答えはノー。私は毎回購入しておりますが、食に造詣の深い著名ライターを含めて40人ほどの探偵が一夜漬けでない知見を披露していると自慢していますが、私に言わせると「ガイドでもなく店評価でもない中途半端な本」でしかない。
1967年から続いているのですから正に「継続は力なり」でしょうが、その継続に敬意を払いながらも昔ながらの(愛)読者としていくつかの問題点を挙げて改善を提案したいと思います。
今日はまず評価とコメントが矛盾しているという点について。以前も問題にしたことがありますが、この本は味、値段、サービスの3項目に関して、2つ星から5つ星までの4段階評価をしております。味に関していえば3つ星から5つ星の3段階。つまり、最低の味の店が3つ、最高の味の店が5つ星の評価であります。
味が3つ星の店は、取り上げた店の中で最低ランクに位置するわけでして、その中には「小十」、「キオラ」とちょっと首を捻るものがあります。反対に5つ星店には「ブノワ」、「かどわき」、「京星」などが挙げられております。
味わいの感想は人それぞれですから、こんな評価の本があってもいいのでしょうが、問題はそのコメントであります。読者としては、3つ星の店は、料理のどこが良くないのか、どういう点が評価できないのか、当然期待するのですが、この本は昔からまったくその説明をしておりません。どの店のコメントもよく言えば前向き、はっきりいえば無難な応援文に終始。星のランクを見ず、コメントを読んだだけでは3つか5つかまったく判断できない内容なのです。最低ランクの店を褒めまくって読者に何を伝えたいのか。
どういう理由で最低ランクにしたか、最高ランクにしたかを公開しない評価本なんて、信じられるでしょうか。評価基準を明確せず、問題点をまったく記していない「自称 評価本」。まったく使い道がない本と言私は考えます。
大手出版社がこんな「緩いガイド本」を隔年で出し続けて読者は何も文句を言わないものなのか、私は不思議でなりません。
まじめに批評しているのですが、こんな事を書いてしまうと「文藝春秋社」系列の雑誌からのオファーはまったく来なくなるでしょうか。度量を期待してオファーを待つのはむなしいものです。