再開発ビルへの出店はレストラン側に何ら利益をもたらさないと友里征耶はデビュー当時から訴えてきました。
オープン後長くて数年、はやければ半年持たず、いやひどいところではオープン当時から客が途絶えてしまうビルの事例は枚挙にいとまがありません。
アク?ヒルズ、恵比寿ガーデンといった古株から、六本木ヒルズや交詢ビルの中堅どころ、そして東京ミッドタウンなど挙げていったらキリがありません。勿論この銀座三越新館も例外ではなかった。
郊外型のショッピングモールではないのですから、都心のビル内にかたまって存在するレストランへ行きたがるまともな客がいると思うのか。特に高額店へ行く客が、そんな環境を好むはずがないのはサルでもわかると思っていたのですが、飲食店経営者には理解できなかったようです。
デヴェロッパー側は、純粋無垢なレストラン経営者を丸め込み、彼らが苦手な契約書で縛って入店させれば良いわけですから、あとは客が入ろうが来なかろうが知ったことではない。
何年も高い賃料を絞りとり続け、契約期間中に堪らず撤退するときは高い違約金をもぎ取る。
こんな理不尽な商売が飲食店業界相手に長年通用しているのですから、私は甘い業界だと言わざるを得ないのです。
そしてこの銀座三越新館のレストランフロア。昨秋のオープン時はTVで取り上げられ、連日満席で特に昼は2回転でも収容できないほど純粋無垢なランチオバサンが並んでいたものでした。
ところがその集客効果は半年も持たなかったようで、夜だけではなく昼もごく一部の例外を除いて店内は空席が目立つようになったのです。
集客が苦しくなったからでしょうか、メニュー構成を見直し、実質的には値下げで落ちた客を呼び戻そうと無駄な対策をとる店がでてきました。
本日取り上げるその店は以前のブログで取り上げました京都の摘み草料理(ミシュラン2つ星?)の東京支店の位置づけである「石楠花」であります。本店は知る人ぞ知る「美山荘」でして
ポルシェ・カイエンにまたがって摘み草をする
主人がTVで放映されていたのは記憶に新しい。
私が夜に訪問したときは、たしか5000円くらいから上は1万5000円までと、それはCP悪いコースを揃えていたのですが、なんと天然大鰻や天然鮎をメインとしたコースを夜に
3980円
で提供するようになったのです。詳しくは以下の写真をご覧ください。
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カメラではなく、携帯で撮ったので画質がよくないことお詫び申し上げます。?
拙著「グルメの嘘」(新潮新書)でも詳しく書いておりますが、オープン当初の料理価格(コースも)の決定は非常に重要であります。客が来ないからと行って安易に値下げしたら客は
流行っていないんだ
と察知して、値下げにも釣られないからであります。
流行っている店だから無理していきたいと思うのが人情。流行らず値下げした店にわざわざ行きたいと思う客はそうは存在しないのです。
天然鮎コースは、先付、向付、油物(揚げ物のことか?)、鮎寿司に天然鮎が2匹、そして
生ビール2杯かグラスワインがサービス
と正に出血大サービス。
きょうび流行っている店なら生ビールやグラスワインだけで1杯1000円近く請求してきますから、石楠花の集客の苦しさが身にしみるほどわかるというものであります。
天然大鰻のコースも先付、小吸物、炊き合わせにデザートまでついて3980円ですから驚きです。野田岩なら養殖の蒲焼くらいの価格でありますから、本来ならば鮎や鰻の釣りで野田岩なみの千客万来となるはずですが、外からみただけではそれほど集客に効果があるようには見えません。
再開発ビルにCP良い店なし
は友里征耶の定説でありますが、CP良い料理を出しても客が来ないようですから
再開発ビルではどんな努力をしても廉価店以外は客が来ない
という新しい定説を思いついた次第であります。
飲食店、とくに高額に位置する店の経営者に私は言いたい。決して
デヴェロッパーや仲介業者の甘い誘い水に乗ってはいけない
直ぐに泣くことになるのは経営者自身であります。