鮨屋は相変わらず出店ラッシュのようですが、実はピークを越え鮨バブルの終焉へ向かいだしているのかもしれません。数年後には淘汰される鮨屋も多いと予想する店主の話を聞いたことがあります。
独立して客単価を高額鮨屋といわれる1万5千円以上に設定し、適度な質のタネを仕入れ、雑誌でチョイ紹介されれば、修行店や修行経験に関係なく客が殺到しています。夜でも「お決まり」を数千円で出す住宅街の寿司屋が集客に苦労しているのに、繁華街で4倍、5倍の高額鮨屋が一杯なのですから異常といえます。「次郎」、「久兵衛」、「小笹寿し」など有名店ではない普通の街場の店出身、いや鮨屋での修行経験のない料理人でも、タネ質さえある程度のレベルを保てば、客が満足できる鮨を提供できるほど、鮨の職人仕事の習得は早い。今のバブルを支えているIT関連の若い客の存在も大きいでしょう。
今日は先日行った、若い客が多い西麻布のマンション鮨屋「きたむら」の簡単な感想です。
雑誌ではマンション一室の鮨屋と紹介されていますが、星条旗通りに面した古い小さなビル4階。エレベーターから外階段を使わないと入り口へ行けません。どう見てもマンションには見えない。
主人は30歳チョイ。マンション鮨の先駆け、広尾の「すし家」に数年修行していたと言っていました。
靴を脱いであがるカウンター6席と座敷1つの小さなキャパは予想通り「隠れ家」風です。
ハラスや鰆の炙り焼き、アン肝、蛍烏賊など江戸前鮨タネとは違うツマミが10種ほどでてから握りに入ります。
若い人相手が主体だからか、酢飯は砂糖を感じる甘さが口に残ります。酢飯とやや強めに〆たコハダが合わない気がしますが、タネ質がまずまずで客単価は2万円弱。
主人とバイト風な女性の二人でやっていますが、流行っているのかひっきりなしに予約の電話がかかってきておりました。
煮切りを含めてすべてが甘めの味付けは、最近のトレンドなのでしょうか。
「隠れ家」が大好きな業界人には居心地良い環境ですが、赤身、煮はま、鮑がないなど江戸前タネがありません。マンション(古ビル)鮨屋と話のタネに一回の訪問で充分でしょう。