飲食業界だけではなかった納入偽装

大型台風がやっと去ったかと思ったら新潟県中越沖の大地震、被災地の方々にはお見舞い申し上げます。わずか3年間で大きな地震が3回も起きてしまいました。
嫌なニュースが続いているのですが、一時大きな話題になったミートホープの牛肉偽装、中国の段ボール肉まん偽装など飲食ではない業界でも納入偽装が先週発覚したのには驚きました。
フジテックのエレベーターで強度不足の鋼材が使用された問題、今の段階ではフジテックと鋼材を納入したJFE商事ホールディングス(株)の子会社、JFE商事建材販売の間で事実認定が真っ向から食い違っています。
JFE商事側はミルシート(材料検査証明書)を偽造したことを認めながらも「フジテックと担当者レベルで合意があった」と主張、「まったくその事実はない」と反論するフジテックに責任転嫁をしようとしています。しかしこんな主張でJFE商事は罪一等を減じられると思っているのだとしたら、認識が甘いというかモラルがないというか、実に幼稚な言い訳であります。
JFE商事はエレベーターを使用する人たち、すなわちエンドユーザーのことを考えた事がないのか。万が一製造メーカーであるフジテックの担当者が認めていたとしても、ミルシートを偽造したということは対外的には納入鋼材を偽装したことになります。合意の上での納入なら、堂々とSS400ではなくSPHCのミルシートを添付すればいい。
これでは、「国産牛(オス乳牛)でいいけど納入請求書には『和牛』と書いてね。客には『黒毛牛』として売りつけるから」と飲食店の要求を飲んで客を騙す手伝いをする業者と同じではないか。(こんな事をする店や納入業者はないと思います。あくまで「例え」であります)
納入先さえ了解していれば、その先の客を騙しても罪にならないというのか。
「ミルシート」を偽装して違う材料を納入するということは、ミルシートの添付で材料を確認するという我が国の検査システムを根底から覆す行為であります。大会社ならいざ知らず、中小規模の会社では検査設備も人員もなく、納入材料の正誤の判断ができないからです。こんなことを輸出でも行っていたら世界中から総スカンを食らうでしょう。
JFE商事は「ミルシート偽装」を認めた瞬間にもうこの事件の罪からは逃れられない、コンプライアンスも世間常識も何も持っていない会社であると言っているようなものだと考えます。
しかし私も数十年前まで理系の仕事をしていて機械装置の材料をなどに関わっておりました。たいした経験はありませんが、JFE商事の言うようにSS400は市場流通量の少ない鋼材なのでしょうか。SS400は「一般構造用圧延鋼材」と言われ、その名の通り鋼構造物にごく普通に使われている材料だったはずです。どちらかというと広く普及していて安い部材。一時はトン当たり軽く5万円を切っていたと記憶しております。私の浅い知識では、問題となっているSPHCという材料の方が知名度や流通量が少ないと思っておりました。両材料の価格差もトン当たり数千円あるかどうか、ミルシートを偽装するリスクをおかしてまでコストダウンする意味があるとは思えません。
どの業界にも言えることですが、矜持を捨て無理な儲けに奔る人、店、会社が絶えない現実。不明瞭な事務所経費の領収書も出さないで逃げ切る代議士といい、規模が大きな会社には社会奉仕、社会への還元が求められるのに、この国には「ノブレス オブリージュ」というものがないのでしょう。こんなことでは、「美しい国、日本」など絵に描いた餅、永遠に拝むことはできません。