漁獲量が制限されるという鮪ですが、中国本土の人が本格的に食べだしたら大変な品不足になると言われています。日本だけではなく、アジアや欧米も鮪好きが増えているということでしょうが、私はスシ店を訪問していつも疑問に思うことがあります。
ここ数年の鮨ブームで増殖の一途をたどる「独立スシ店」。3万円超える超高級店から1万円台半ばの店までかなりの確立で赤身や中トロを出すとき「どこそこで獲れた鮪です」と主人は囁いてきます。いかにも「近海の生本鮪」であるとのイメージを与えてくれますが、本当に全部「生鮪」なんでしょうか。
築地市場が扱っている「生鮪」は鮪全体のごく一部のはずです。数%ではないでしょうか。それほど希少な「生鮪」がどうして数ある沢山のスシ屋に登場できるのか。大半の冷凍マグロはどこへ行っているのでしょうか。スーパーや百貨店にも出ているでしょうが、主体は「メバチ」や「キハダ」のはず。「クロ」や「ミナミ」といった高額鮪の冷凍や、アイルランドだかの「畜養マグロ」はどこへ消えているのか。
最近は、スッポン料理店(『江ぐち』です)でもわずか2貫でてくるマグロが「久兵衛」と競ったと言っていましたから近海生マグロなんでしょう。高級スシ屋でない店でも「近海生」を名乗るマグロが出てくるのですから、その原資がどこにあるのか、私は不思議でなりません。
偶然私は築地のマグロ問屋のHPを見て気がつきました。都内の高額鮨店が仕入れていることで有名な「石司」、「石宮」、「樋長」なのですが、立派に冷凍物を扱っているのです。インドマグロ、メバチマグロ、アイルランド産なども扱っています。
仕入れは「石宮」だ、「石司」だと言われても、近海生鮪ではない可能性があるということです。
全国に売り出されている「魚沼産こしひかり」と名乗る米を集めたら、実は「魚沼産こしひかり」の生産量の数倍になる、と言われていたことを思い出しました。
私もどう味わっても「冷凍物」としか思えない「どこそこの鮪」を食べた経験があります。
希少な「近海生鮪」がこんなに多くの鮨屋に登場できるものなのか、納得できる業界の具体的な説明を受けてみたいものです。