明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年は2週間ほどダウンしてしまった咽頭炎など体調不調が何回かありました。もう歳だから無理をするなというサインだったのかもしれません。年末には身内の不幸も重なりまして予定していた旅行のドタキャンもありました。
今年は平穏無事な1年をおくりたい(友里征耶をやっているかぎり無理か)と思っております。
政治の混乱が収束せず景気は相変わらず不透明なまま。一部の大会社だけが利益を上げ、その経営陣(特に社長)の年俸だけが億単位と派手になるだけの日本。アメリカの悪いところだけ模倣してしまったこの不毛な10年、果たして取り返すことが出来るのでしょうか。
料理業界も曲がり角に来ているのではないか。一世を風靡した「エル・ブジ」もやっと閉店。この10数年は味わいを軽視した奇を衒うサプライズ料理が全盛でありましたが、そろそろ純粋無垢な一般客も気付いてきたのではないか。
料理は見た目の盛りつけや意外性、そして皿数の多さ(小ポーション)より肝心の
食材や調理技術による味わい
が重要であるということであります。
別に高額で高質な食材を使えば良いというのではなりません。せっかくの素晴らしい食材も
生焼けの低温ロースト
で提供しては意味がないからであります。なんとかの一つ覚えというのでしょうか、似非料理評論家や似非フードライターだけではなく、素人のブロガーまでが
完璧な火入れ
とか称して、中身が赤い(魚の場合は妙に照りがでている)生焼き調理を絶賛している不思議。低温ロースト、もしくは長時間ローストは、食材の良さを最大限に生かす調理法ではなく、火入れの失敗を限りなくゼロにすることができることによる
仕入れ食材を無駄なく最大限に利用できる
という店側の都合が隠れているのです。
露出がかなり減った過食のオコチャマ・来栖けい氏がブログなどで盛んに自慢している肉料理ですが、換言すれば彼のような素人でも時間をかければそれなりに仕上げることが出来るのが
低温ロースト 長時間ロースト
であると証明しているわけです。
しかしここ数年、日本だけではなく本場欧州でも
ビストロ(トラットリア)回帰
が目立つようになってきたはず。パリではネオビストロと称しておりますが、多皿、低温ロースト、フルーツピュレやエスプーマを封印し、低温調理人が提供できない
ソースや煮込み
に力を入れた料理を提供してきております。東京でも新規オープンする店は自称も含めて
ビストロ
が大半を占めるようになってきております。
原則前菜とメインの2皿で完結の料理単価5000円しない店が連日満席のパリ。確かに料理単価数万円のグランメゾン系3つ星店も客は入っておりますが、日本では中途半端な規模の
多皿・低温(長時間)ロースト・ソースなし・煮込みなし
だけに頼る店は厳しい時代に突入すると私は考えます。
昨年末の訪問で脱カンテサンスに舵切りしたと感じたフロリレージュに加えて、ユニッソン・デ・クールなどソースを造れる料理人の台頭により、一世を風靡した
カンテサンス Hajime カ・セント
などのシェフ達は方向転換を余儀なくされる年になるのではないか。はっきり言えば
ソース造りや煮込み料理を習得するための再修業
の必要性を感じ始める転換期がこの2011年であると予想します。
最後に今年の抱負と言いましょうか、予定を挙げてみます。
4月頃に友里征耶初のオススメ本を鉄人社から出版予定。6月過ぎには宝島社から飲食店(飲食業界)の問題点を更に掘り下げた問題提起本を予定しております。
今年も一年、読者をかえりみず魂を売って店宣伝に明け暮れる自称料理評論家、自称フードライターたちの駆逐を目標に、剝がれかかった覆面を手で押さえながら店評価を続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。