裏方が表にしゃしゃり出てきたらダメだろ!

銀座の「ラ・ソース 古賀」というカレー店を覚えていらっしゃるでしょうか。代々木上原のフレンチ「コム・シェヴ」の裏メニューであったカレーが好評だったそうで、そのカレーを引っさげて銀座にカレー専門店(末期はビストロ料理も提供していた)を出してきたのです。
さとなお氏や彼の盟友?である伊藤章良氏がオープン当初絶賛していましたが、私は当時から掲題のフレーズを使って疑問を呈しておりました。最初は混んでいましたがすぐさま閑古鳥となり閉店に至ったのをご存じの方も多いでしょう。

先日、読者の方から昨年12月に出版された「あまから手帖」が「裏メニュー」を特集していると教えていただき、アマゾンから購入しました。最近はどんどん便利になって、注文当日に配送されたのには驚きです。

早速中身をチェック。ほとんど知らない店ばかりでしたが、各店の裏メニューを大きな写真と共に紹介する企画であります。
鰻屋の裏メニューが「ハリハリ鍋」には驚きましたが、フレンチ、広東、そして割烹の裏メニューが「カレー」というのには逆にありふれていて能がない。
後半には「裏メニュー」ではなく「まかない料理」の特集までありました。
裏方はあくまで隠れた存在で力を発揮するもの。表に出てきたらそれはもう「裏」ではなくなり、存在価値や力がなくなるものなのですが、編集主幹の門上武司さん、いくらネタがないからといって「裏方」を表に引きずり出して良いのでしょうか。

裏メニューというもの自体私は好きではありませんが、この存在はいつもの料理に飽きた常連客の目先を変えたい料理人が苦肉の策で考え出したもの。
「裏メニュー」を要求する常連客に私は言いたい。その店の料理に飽きるくらい通うより、それなら他のジャンル、違う店へ行ってみろ、と。
引き籠もりのように一ヶ所に留まることなく、内弁慶にならず、色々な店の料理を食べることが視野の広がりになるのではないでしょうか。ジャンルが偏るどころか、裏メニューが食べたくなるほど一店に通い続けるディープな常連客の考えが私には理解できません。他の世界を知る事により、あらためて自分が懇意にする店の再評価が出来るというものです。

そう言えば鮨を毎日食べ、場合によっては連日同じ鮨店に通う鮨オタクもいましたね。彼も実際は食べ飽きるから、鮨屋の後にモツ鍋やラーメンを欲してしまうのではないでしょうか。無理して鮨を食べ続けるのをやめ肩の力を抜くと、違った世界が見えてくると思うんですけど。
だいたい割烹などのカウンターで、カレー臭を漂わせること自体が迷惑。カレーが食べたいなら店を変えればいいだけのことです。

以前交詢ビルの「よねむら」で、初訪問の客が「裏メニュー」を要求して断られている光景を見たことがあります。「何回か通っていただかないと出せません。まずは本メニューを味わって下さい」と店主は言っておりました。
店としては当然の行為だと思いますが、今回の「あまから手帖」を読んでミーハーで純粋な読者たちが「裏メニュー」に興味を持ち、同じような愚行に奔るのではないか。ネタがなかったからといって「あまから手帖」も罪なことをしてくれたものです。

今テレビで、昨日の築地の鮪の競りの結果を放映しておりました。今年も「久兵衛」が香港のチェーン展開寿司屋と競り合って大間の鮪の落札価格を上げてしまったそうです。1000万円を超えたとか。(正確には1628万円?)
出血サービスで1ヶ2000円で提供するそうですが、競り初日の大間の鮪が良質である可能性は低いのではないか。「久兵衛」には売名行為なだけのこの競り上げ愚行、そろそろ辞めていただきたいものです。