本日12時間後に帰国の途につきます。あらかじめ予約しておかなければ乗れないタクシー(地方ではその地の最高級ホテルでも周りにタクシーはスタンバイしていませんよ、朝倉さん)で空港まで行き、ドイツの空港を経由して日本へ戻ります。乗り継ぎ時間を入れてホテルから自宅まで20時間以上の長旅。歳を考えると結構つらいものがあります。
さて本日は久々のワインネタです。前々からフランスを訪問する度に気になっていたのが、ワインの取り扱いの粗雑さであります。
今回も訪問した3つ星2店で手荒い作法にあいました。別に日本人だからと特別に手抜きをされたわけではなく、他の客にも同じような作法でしたから、ワインサービスは日本の方がはるかに丁寧ではないでしょうか。
まずは空飛ぶ料理人プロデュースのパリ店。
値付けが高く古いワインがないリストでしたが、リスト外からのオファーで了承したのが
‘90 シャンボール・ミュジニー ヴォギュエ
1990年から復活したと言われているヴォギュエでありますが、造りが変わって早飲みタイプのはずで乗り気はしなかったのですが、予算的にもこれくらいしか頼めず渋々承諾。
一応20年ものですから、フレーム型のパニエ(正式名称知らず)に入れて来てパニエ抜栓したまでは良かったのですが、グラスに注ぐとき一々垂直にボトルを立てるんですね。
ソムリエの2次試験(実技)で一番重要視されるのは、抜栓からデカンタージュまで、一度パニエに固定したらその角度以上にボトルを立てないこと。特にデカンタージュ中は、一気に流し込んでボトルを少しの角度でも上に戻すことは許されなかった。
ボトル内の澱の飛散を防止するためなのですが、空飛ぶ料理人の店のソムリエ達は、平気で何回もボトルを立てるのです。これならパニエに入れる意味がないと言うものでしょう。
もう1つは、私の好きなクラシックな料理を出す3つ星。頼んだワインは
‘79 リショット・シャンベルタン Bonnefond
全く知らない造り手でしたが、ワイン自体は美味しかった。でもここのソムリエも私には驚きの作法だったのです。
30年ものワインなのですが、まずは垂直に立てて抜栓。しかもソムリエナイフではなく、素人用のねじ式?のスクリューを使ってであります。
この方式だと、スクリューがコルクの下面を貫通するので、コルクの粉がワインに混ざってしまいます。フランスのソムリエはコルクの粉に対して寛容なのでしょうか。
15年ほど前に「ギイ・サヴォア」で61年ピションラランドを頼んだ際も、ソムリエはねじ式スクリューで抜栓しておりました。日本では考えられないアバウトさであります。
しかもこのソムリエ(今回訪問の店)、己のテイスティングのため注いだ後すぐボトルを垂直に立ててしまったのです。かくして私に注がれた最初のワイン(テイスティング用)から澱が混ざっておりました。
ワイン自体は美味しいものでしたが、古めのワインでありながら注ぐ度にボトルを垂直にしますから(他の客も同じ扱い)、日本のサービスに慣れた人には、気が気でない食事となったのです。
パリだからといって値付けが安いわけでもなく、レアなワインが揃っているわけでもない3つ星ワインリスト。10数年前までは魅力的なワインがリストアップされていましたから、ことワインに関してはフランスへわざわざ来る必要はなくなったのかもしれません。
最近は料理人希望者だけではなく、ソムリエなどサービス希望者も海外へ修業に行っていると聞きますが、ことソムリエに関しては、わざわざ海外へ行く必要があるのか。少なくともパリなどフランスの大都市へ行く必要はないと考えます。日本では通用しない作法を身につけてしまうでしょう。
ちなみにイタリアのワイン産地での値付けは相変わらずお安かったです。