先日都内のフレンチ(友里は過大評価店と判断)で働いていたという方からメールをいただきました。私の指摘の通り、驕った店だったとのことですが、その労働環境を聞いてちょっと考えてしまったのです。前から気づいていましたが深く考えなかったのがこのレストランスタッフの就業時間を含めた労働条件であります。
はっきり言って、堂々と「うちの店は労基法をしっかり順守している」という店がどのくらいあるでしょうか。たいていの店は週に一回しか休みません。ランチをやっている店でしたら、スタッフは遅くとも9時には出ているでしょう。夜は早くても22時くらいまでか。
仮にスタッフのローテーションを組んでおらず1チームだけでやっていたとしたら、労働時間は週72時間くらいになる計算です。(昼休みなど休憩があったとして)これで、時間外手当や有休が満足に確保されていないとしたら、完全な違反となるわけであります。
メールされた方は16時間無休だったと書いてありました。さすがに無給ではないのでしょうが、想像を絶する労働環境だと言えると思います。
普段、料理が内容の割に高すぎる、手抜きで業務用を多用している、と指摘している友里ですが、CPが悪いと判断される店でもスタッフのサービス残業など過酷な労働搾取で成り立っているとするならば、飲食店のビジネスモデル自体が成立していないことになります。経営者やオーナーシェフへだけ利益が還元されていたら別ですけど。
以前私は「レストランは真面目にやったらそうは儲かる商売ではない」と述べた事があります。連休もそうは取れないでしょうし、余程の人気店でない限り長期休暇も無理。従業員へ充分に配慮して、客にも還元してしまってはまったく残りがなくなるかもしれないのです。
残り(取り分)を多くする手っ取り早い方策は、スタッフをこき使い、調理レベルを如何に下げて見かけだけで勝負するか。また、セントラルキッチン化、マニュアル化して技量のないスタッフ(安い賃金)で対応できるようにする、などなど。多店舗展開もその一つの手段でしょう。
しかしそれらの方策がことごとく客の食後感と相反する結果になるのが皮肉であります。
独立して運よく人気店になると、高級外車や絵画、陶器を集め、他店の調査と称して日々食べ歩いて厨房にあまり入らなくなるシェフがいると聞くことがあります。そこへ行きつくまでの厳しい環境を考えると気持ちがわからないわけではないのですが、客の満足度とのマッチングは非常に難しい問題であると考えます。