創作料理の成れの果てか、エル・ブジ閉店

昨日読者の方からいただいた情報には驚きました。なんとあの一世を風靡した「エル・ブジ」が閉店。
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012701000050.html

私は来るべきして来た結果、つまり奇を衒う「サプライズ料理」の考案に疲れ果てついにネタ切れしたと思ったのですが、報道では

?1日15時間労働を続けてきて疲労困憊(こんぱい)した

とありました。
そんなに15時間もフェランが鍋振っていたとは思えず、本心は「1日15時間創作ネタを考え続けて疲労困憊した」ではないかと推測します。

2012年、2013年と2年間休養して、14年には「今とは違う店」を再開するとありますが、私はこのままフェードアウトして引退するか、ロブションやデュカスのように築き上げた名声を利用して「プロデュース業」に専念するのではないかとも思いました。

最初は雇われシェフ的な立場だったと聞いておりますが、大成功でオーナーと同等の立場になったフェラン。世界中から「タダ働き」希望の厨房・サービススタッフが押し寄せたはずですから、人件費はほとんどかからなかったことでしょう。
かなり蓄えたと思いますので、2年も休んだら現役に戻るモチベーションなんて吹っ飛んでしまうと私は考えます。しかもこの移り変わりの早い時代、2年も休んだら世間から忘れ去られてしまう可能性もあります。

再開は90%ないと思っておりましたら、現在スペイン在住の料理人の方から同じようなご意見をいただいたのです。

現地で報道されたインタビューでは、フェランは何回も

創作に疲れた

と言っていたのが印象的だったそうです。日本の報道とはかなりニュアンスが違います。2014年に再開するとも言っていたそうですが、

?こちら(スペイン)で店が閉店する場合、必ずみんな再開すると言いますが、実際、再開した店を見た事ありません。

?とその料理人の方は言われておりました。

人間はすぐ飽きるものです。サプライズだけがウリの料理(私は一度しか行っておりませんが、面白いけど美味しいとは思えないものばかりでした)ですから、次々と他店と違ったものをひねり出さなければ客は満足しません。
創作は最終的には「やり過ぎ」になって行き詰まるものですが、ついにネタ切れとなり、そのプレッシャーから疲労困憊に陥ってしまったのでしょう。

「エル・ブジ」はわずか一回の訪問でしたが、その時の旅行でセビリア郊外の通称「エル・ブジ ホテル」に連泊しまして、併設のレストランで何回か食事をしました。
「エル・ブジ」のヴィンテージ料理というのでしょうか、リストアップされた昔の評判料理を選べるシステムで、本店のように「多皿」ではなく一皿のボリュームもまずまずでした。
しかも、本店の奇を衒う料理と違って、私はいずれの皿も「美味しく」感じたのです。

「なんだ、昔はまともなレシピで美味しい料理を造っていたんだ」と変に感心したものでした。

もしフェランが、再び自分の手でレストランを再開するようなことがありましたら、初心にかえった料理を提供した方が、客も喜び本人も疲れずと、八方丸く収まると私は考えます。