ミシュランに掲載されるべきではないお店

いくつかのマスコミからミシュランガイド発刊に関する取材依頼を受けました。単に民間の一ガイド本の発売を取り上げて紹介するだけでは宣伝の片棒を担ぐだけであり報道機関として未熟ではないかとの考えで、アンチな意見も合わせて報道したいとの意図のようであります。確かにこのミシュランガイド東京版に問題提起しているのは私の知るところ伊藤章良氏と私くらいなものであります。
昨日は友里流星付き店を紹介させていただきましたが、本日は、ミシュランに掲載されてはならない店を考えてみたいと思います。
飲食店関係者の情報から、フランスの3つ星の支店、提携店ははずせないとの出来レースから、「ロブション」、「ガニエール」、「デュカス」に「トロワグロ」は3つ星を獲得するのではないかと思います。でもこれは調査員たちがそうしゃべっていたという情報をもらっただけですから、友里の予想ではありません。
私はミシュランガイド東京版の調査員たちを軽く見ているというか、ナレ氏も含めて信用していませんので、彼らがどんな評価をするかわかりません。漏れ聞いた情報では、基本的には来栖けい氏のようなヨイショ系ライターの嗜好に似ているとか。つまりよく味がわからないということでしょう。結局は、和食系では数ある日本のガイド本で評価の高い店を無難に掲載、NY版と同じく、フランス系の店に甘く最高評価を与えると予想します。
それだけでは何ら違いがないと言われるのを避けるため、今は埋没してしまった昔「東京いい店うまい店」などで評判だった店を掘り起こしてくるのではないか。学芸大学の小さな割烹「すずき」をリストアップしていることからもこの手の店を取り上げることが想像できます。もしかしたら広尾(地番は元麻布)の「酒飯庖正」も載せるかもしれませんね。
数年前から星の評価は「皿」からだけと評価基準を変えたようですが、それでも発足当初からの基本は守っているはずです。その基本とは、ミシュランガイドは「旅行者」のためのガイド本という位置づけであります。
本日は、この「旅行者」の立場を考えたらミシュランに載るべきではない店を考えてみたいと思います。
1、クレジットカード使用不可の店
日本では未だに現金主義の方もいらっしゃるでしょうが、海外ではもう常識のシステムです。クレジットカードなく現金だけを持って旅行している欧米人はいないのではないか。セキュリティ上、何万円もの現金を持ち歩かない旅行者にとって、「カード不可」の店はまったく無意味。
そういう意味では「すきやばし 次郎」(ただし六本木店は驚くなかれ使用可になっていました)、「京味」その他和食系の店や老舗と言われる洋食屋は選から漏れなければならないでしょう。確か「楽亭」も使用不可だったと記憶しております。
もちろん、使用可でもカード手数料を上乗せるあの麻布十番の天婦羅屋などあくどい店もダメであります。
2、不明朗会計の店
旅行者が安心して店を訪問するにはガイドにしっかり料金が明記されることが必要です。
相手の態度や座っている時間によって請求額を変えると公言している「次郎」の営業スタイルは海外旅行者には理解できないものでしょう。カラオケのように、時間単価を明記すれば話は別ですけど。
お酒の値段をはっきり書かない店も勿論不掲載にしなければなりません。
3、価格をはっきり明記していない店
同じく旅行者にとってわかりにくい店であります。
かなりの和食の有名店、鮨屋の有名店がひっかかるのではないでしょうか。
前述の「次郎」、「京味」に加えて「久兵衛」を除く多くの高額鮨屋がひっかかるはずです。
だいたいの予算は載せられるでしょうが、その日の客数や訪問頻度(常連になるほど高くなる)で請求額がブレる鮨屋などは外国旅行者にとって理解できないはずです。
その日の仕入れ値、季節の食材などによって請求額が大きくブレるのも問題。イタリアなどでは、高額食材の白トリュフも追加値段が明記しているはず。丹波のマツタケのグラム単価、大間のマグロの単価、松葉蟹のグラム単価などを開示している高額な和食、鮨屋はないと思います。
4、必要以上にせかす店
旅行者にとって当地での食事は最大の楽しみの一つ。ホテルで荷を解いてシャワーを浴びてからの夕食は特にゆっくり味わいたいものです。
そんな旅行者に対して矢継ぎ早に握りを出して30分かからず終了させる店をガイドに載せていいのか。もちろん「次郎」であります。
日本の高額鮨屋がみな20分ほどで終了させているならこれも日本の文化でしょうが、そんな店は「次郎」しか知りません。
5、接待族、同伴族が主体の店
「交際接待」なる会計処理が欧米には存在していないと聞きました。私も昔、海外に本社がある日本支店と関係があったのですが、日本から本国工場を立会する客の食事代などは日本支店が受け持っていました。
おなじく日本の「クラブ」のシステムも欧米では見かけないもの。
年配常連客がメニューにないカレーなどの賄い料理を食べている、紫煙が狭い店内に漂っている、香水プンプンの派手な服を着た女性を伴った年配客が多い、というような店も掲載できないのではないか。
そうなると銀座を中心にした多くの割烹、鮨屋が除外されることになります。
このいくつもの条件に一番引っかかるのがご存じ「すきやばし 次郎」。旅行者にはもっとも向いていない店であるのは明らかですが、果たしてナレ氏やミシュラン調査員は「次郎」を外すことができるかどうか。
もし掲載していたとしたら、ミシュランは旅行者向けという基本概念を捨て、利益を上げることだけを考えて拝金主義に転向してしまったと言えるでしょう。
タイヤの販促の目的はありましたが、旅行者のためのガイドという社会貢献を捨てて発売部数などガイド発売による営利のみを追求するとしたら、またフランスのビッグネームシェフと陰で手を結び、アメリカや日本などフレンチ後進国へのフランス資本の進出の手伝いをしようとしているならば、ミシュランガイド総責任者へのナレ氏就任は、古くからのファンを裏切る選択だったのではないかと考えます。