比較的新しい店へ初めて入店したときのことです。最近特に多いのですが、ホールスタッフを見て、「どこかで見たことあるなー」と思うことがしばしばあります。ホテルマンほどではないでしょうが、レストランのスタッフも店を変わるごとにキャリアアップしていくようです。
しかしそれにしても、最近は1店に居つく期間が短すぎるのではないか。スタッフの回転がかなり速いように感じます。
シェフの個性が強すぎて厨房スタッフが居つかない店というのはたまに聞きますが、ホールスタッフ、特に管理職や責任者が変わるのは尋常ではありません。
読者の方から先日、「久々に『アピシウス』へ行ったら、『ナリサワ』に居た永井氏が働いていた」と聞いて驚きました。最近梃入れでニューオータニからソムリエを引き抜いたとは聞きましたが、ディレクターの職にあった永井氏も移店しているとは思いませんでした。「ロオジエ」はまだしも「EKKI」の勤務期間は結構短かったはず。「ナリサワ」の立上げからまだ3年も経っていません。
色々調べてみましたら、「ナリサワ」はもう一人の管理職、確かマネージャーという職でしたか、そして専門職のソムリエまで辞めてしまっているということですから、非常事態ではないか。
相変わらず人気で流行っているようですが、客を回転させるのではなくスタッフを回転させている「ナリサワ」。オーナーシェフといわれている成澤氏やマダムの個性になかなか合わないのかもしれません。現在、サービスのベテランがいるのか、育っているのか、レストランは個性的な料理だけでは成り立ちませんからファンには心配なことでしょう。
その他、「ガニエール」には「ロオジエ」にいた人が、「ベージュ」には「オストラル」や「ラビラント」でソムリエをやっていた人が入っているそうです。当初女性ソムリエをウリにしていた「ベージュ」ですが、当人の去就はどうなっているのか。
「オストラル」を移店前にやめたスタッフが「ブノワ」の支配人に、「カンテサンス」にもイタリアンにいた人がディレクターとして就任とか。
辞めても(辞めさせられても?)次に行く店が確保されるほど新店が立ち上がる、埋没した老舗の梃入れがある、プレッシャーに負けて辞めた後の欠員がある、とフレンチ業界ではサービス陣は引く手数多のようです。
その点、厨房スタッフ、特に次にシェフを目指す「スーシェフ」の立場の人は独立が厳しいのではないでしょうか。最近は海外星付レストランで働いていたスーシェフが凱旋帰国して店を任されたり、イヴェント企画に持て囃されています。「カンテサンス」の若きシェフは人気店「アストランス」の元スー、「アルページュ」の元スーだといわれている狐野女史も本業の出張料理人以外の副業に忙しいようです。でもこれでは地道に2番手、3番手で頑張っているスタッフに活躍の場が回ってくるものなのか。まだまだ海外修業熱は冷めないことだと思います。
それにしても昨年末、TVでも取り上げられた「ガニエール」の3番手として入った元「キュイエール」のシェフ。38万の給料で就任したことが話題になりましたが、半年前後で辞めてしまったのは待遇面で耐えられなかったのでしょうか。