「ワインプライス革命」と自称していますが、業界では「革命的な話題」になっていないと思われる「ひらまつグループ」。
ここ数年で、ASOブランド、ボキューズブランド、コンランブランド、リルブランドでいくつ店を増やしたでしょうか。
調理人やソムリエなどサービススタッフの質低下なく増員できているのか心配なのですが、今後もまだまだ増殖を止めないようです。
まずは2008年9月期中間決算説明会資料をご覧ください。
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10102764/20080512152496.pdf
今期の売り上げ目標を100億円とし、既存店の増殖に加えて新たなブランドとの提携で5年後には150億円、低価格業態への進出、周辺事業へのM&A、更に「ホテル事業」への進出をも視野に入れて最終的には売り上げ300億円、経常利益30億円を目指すとしております。
まだまだイケイケ路線を終了して軟着陸をはかる気はないようです。
しかし世界的に見通しが立たないこの経済事情で、こんな強気の姿勢、大丈夫なんでしょうか。
今期9月期(中間)の数字を見てみますと、売り上げは50億あまり。前年度と比較して売り上げは33億円から50億円と急増しています。増収は、昨年度以降売り上げに貢献してきた新店(ボキューズ系、アイコニック系、リル系など5店舗)が稼ぎ出した数字で、既存店は売り上げに変化なし。
これはキャパ営業(箱物営業)の宿命でして、ゴルフ場もそうですが大幅な客単価の値上げを断行しない限り売り上げは頭打ちになります。成長性を見せたいため売り上げ増が欲しい経営陣が多店舗展開に踏み切る大きな理由なのですが、既存店(つまり古くなっていく店)の集客力の低下を考えると両刃の戦略と言えるでしょう。
集客数を見てみますと、新店のおかげで10数万人から30万人と3倍近くの増大ですが、売り上げは5割増ですからグループ全体としてはかなり「客単価」が低下していることになります。しかも「ブラッスリー ポール ボキューズ」が集客数の増大(17万人くらい)の70%を占めるという偏りです。
一般営業(普通のレストラン営業だと思います)と婚礼営業の割合は5:5から6:4と粗利の稼げる婚礼営業の割合が低下。
婚礼が出来ない「ブラッスリー」が集客増大の主体ですから当たり前です。
今後もブラッスリーを名古屋に出し、低価格業態に進出したらますますこの傾向は強くなるでしょう。粗利の稼げる婚礼事業の箱として「ジョージアン クラブ」は喉から手がでるほど欲しかったのだと思います。
今回「ワインプライス革命」で、集客増の貢献店「ブラッスリー」の更なる集客強化を狙わなければならないお家の事情を図らずも露呈してしまったわけですから、単純に客だけ呼ぶため店数を増やせば良いというわけではないようです。
昨年「カフェ デ プレ」からビストロ料理店に変更した「カフェ&ビストロ デ フレール プルセル」は今年になっていつの間にかビストロをやめてしまっておりましたが、この24日より1階を「カフェ デ プレ」に戻し、地下を「キャーヴ ド ポール ボキューズ」として再出発することになっております。
西麻布の「レゼルヴ」もいつの間にか「キャーヴ ひらまつ」に変更されています。既存店の中には厳しい店もあるようです。
スクラップ&ビルドという言葉もあります。ただ単純に増やせば良いというものではない規模に「ひらまつグループ」は達してしまっていると私は考えます。
イケイケ路線は、増殖による調理人やサービススタッフの質低下、既存店の陳腐化、ブランド同士の客の取り合い、多店舗展開イメージからの飽和感による客離れ、などのリスクをどう回避して規模の拡大を続けていけるのか。
まずは5年後の150億円売上、ROA10%以上の高収益な企業集団になっているか、お手並み拝見であります。