かなり昔のブログに書いた記憶があるのですが、イタリアンに押されて低迷していたフレンチ業界が生き残るにはパリの現状を見るまでもなく
ビストロしかない
との予想、結構当たったかなと思うようになりました。提供される料理がビストロ料理かどうかは別にして、そして完全アラカルト対応ではないとしても、今それなりに客が入っている店形態(フレンチ限定)は
中途半端なフレンチ(客単価2万円前後)より客単価1万円前後の店
ではないでしょうか。フレンチで食べログ1位のバカールを例に出すまでもなく、スペース(カウンター導入で省スペース化)、スタッフ数(厨房はせいぜい2名)、キャパ(15名前後)、内装などを節約して結果的に客単価を抑えた店であります。
女性だけのグループ(一人客も)が入りやすいのも有利。寂しい独身女性(ご免なさい)を癒やせる接客担当のトークがあれば更に鬼に金棒ではないでしょうか。
ちょっと注目を浴びたソムリエがシェフを雇って独立するパターンをよく見ますが、成功しているのは
カウンター付きの比較的廉価な店
だけではないか。己のトーク(人気)で女性客を呼べると思っていても、最近の外食を支えているのは
30代から40代にかけての独身女性
が中心のはず。しっかりした店構え(内装やスペース、スタッフ数)にして客単価1万円台後半以上(ワインを入れて)のオーナーソムリエの店で、集客が順調なところを私はあまり知りません。逆に順調でない店は簡単に挙げることができます。
この傾向は、フレンチだけではなくイタリアンにも言えることだと思います。
この現象はソムリエだけではなく、料理人の独立の際にも当てはまるのではないでしょうか。オーナーシェフの店も、店構えを立派にしてしまうと集客が難しくなると思います。
下積みや雇われで長い間頑張ったシェフが独立を考えたとき、確かに厨房で何人も仕切る、そしてホールも立派な店を目指したい、という気持ちは理解出来ます。
一人で調理しサービス(ワインサービスまで)までやらなければならないカウンター型式
なんて今までの苦労が台無しになると考えるのもわからないではありません。プライドもあるでしょうし。
しかし現実を見てみると、どこまで続くかわからない不景気の中、そのような店構え(中途半端に豪華)を出せる
資金手当
がつくのかどうか。資金集めが難しく、オープンしてからの集客も厳しい可能性がある店よりも、資金負担もランニングコストも楽なビストロ形式の店の方が気も楽ですし安定すると思うのですがいかがでしょうか。
フレンチシェフやフレンチソムリエ(こんな言い方があるのでしょうか)と違って、和食の料理人は割り切りが早い。
同じく現在集客が割と順調な店はカウンターメインの
小キャパの1万円和食
であります。先日アップした店評価ブログで紹介した「車力門ちゃわんぶ」を訪問した読者から、
CPよく満足した
とのメールをいただきましたが、客単価2万円以内の和食の場合、客のCP感を満足させるには
カウンター形式でスタッフはせいぜい主人と女将いれて数人
でないと無理ではないか。「くろぎ」のように大箱でも成功している店がありますが、ある意味特殊な位置づけだと私は考えます。
たいていの店は人気が出てきて1万5000円コース(料理だけ)を常連客の要請だとのエクスキューズで出すようになるのですが、客単価を上げて勢いを持続している店は少ないはずであります。
なんちゃってフレンチを嫌うフレンチ料理人はビストロ、高額居酒屋とは一線を画したい和食料理人は1万円和食、この割り切りで独立を目指すのが現在の経済状況では一番であると友里は考えるのです。
最後に。和食で厨房スタッフではなく、ホール担当(フレンチやイタリアンでいうソムリエみたいなもの)が板長を雇って独立したという話を私は聞いたことがありません。フレンチやイタリアンで存在できて、なぜ和食には存在しないのか。(友里が知らないだけかも)それは
板長の給料の負担が大きい
からだと思います。そのため原価を抑えなければならずCPが劣化する。これは和食に限らずフレンチやイタリアンにも言えることでして、オーナーソムリエがそれなりの報酬を望んでしまった場合、雇われシェフにも満足する給料を与えてしまっては
店の経営が難しくなる
のであります。レストランは何と言っても料理が一番。そのためにはシェフにある程度の投資をしなければなりません。オーナーとシェフの両方が満足する報酬を得ることは
客のCP感を満足することとは相反する
可能性があるのは誰でもわかること。オーナーかシェフか、それとも客の誰かが犠牲にならなければ存続が難しいのが
オーナーソムリエの店
と断言してしまってはまた怒られるかもしれません。