皆さんは正月におせちを食べますか。私はまったく食べたいとは思わないのですが、日本の伝統と言うか家族の教育上の問題もありまして、我が家では用意しております。優雅に海外で新年を迎えられれば、この「造り置き料理」を食べることはないのですが、この3年、外食率が倍増してしまいわずかな依頼の原稿料ではとうてい補填できず大赤字。正月は家にじっとこもるのが慣例になりました。
だいたいこの「おせち」、昔は正月休みで食材が買えず、また飲食店もやっていないので造り置きで凌ぐためのものとしては便利でしたが、今は元旦でもファミレスはオープンしているはずです。焼肉屋なんか、満席で行列が出来ていました。ホテルも年中無休ですから肉系だけでなくスシも食べられるようですが、街場のスシ屋でも、奥沢の「入船」は大晦日、元旦も営業している本当の意味での年中無休店。ほかのタネはさておき、マグロだけをつまむのでしたらいいかもしれません。
さて、いつものようにイントロが長くなってしまいましたが、我が家は「出来合い」のおせちです。家で一々造る手間を惜しみ、コスト的にも歩留まりが悪いので、一見無茶高く見える百貨店経由の「おせち」を頼んでいます。しかしなぜ一気に大量生産できる造り置き料理がこんなに高いんでしょうか。上は20万から最安値で2万円前後。勿論参加することだけに意味を感じる我が家は当然「最安値もの」です。
家人が選んでいたカタログをみてぶったまげました。吉兆、金田中などのビッグネーム、百貨店の食堂オリジナルなどはわかりますが、聞いたこともない和食屋が競って出品しています。ここまでは許容範囲内。
驚いたのはフレンチやイタリアンの店が進出して来ていることです。
石鍋さん、脇屋さん、陳さん、植竹さん、落合さんなどなど。多店舗展開やレトルト食品進出など利にさといこの人たちは、「おせち」が儲かる商売だと気づいたのでしょう。そして極めつけと言うか、キワモノが「XEX」と「アロニア ド タカザワ」でしょうか。
アメリカ和食でなぜ鉄板ステーキなんだ森本さん、ワイズに身を寄せてよかったねクオモさん、料理長なんかいるような店ではないぜ「An」の谷川さん(初めて知りました)、世に売れる前にプライベート会社をなぜ造れるのか本の経歴と実情が違うようだぞ辻口さん、などなど。
写真では、森本氏の鉄板ステーキは確認できませんでしたが、辻口氏のマカロンやバリスタチャンピオンだかがブレンドしたコーヒー豆までついている「XEXプレミアムおせち」は、10万5千円ですよ。
彼らの店の普段の料理が美味しくないのに、このようなはったりに感心し、マスコミのつくった過大評価を信じて購入する人がいるのでしょうか。
一日2組しか入れていないイタリアンのポッと出のシェフのおせちに5万円も払う人がいるのでしょうか。
以前からよい商売しているなと思っていたこの「おせち料理」。やはり膨張主義、儲け主義の料理人や運営会社の格好の標的になったようですが、わざわざ彼らの懐を温める必要はありません。こんな暇あったら、(実際クオモさんや辻口さんは何もやっていなくてロイヤリティだけもらうんでしょうけど)、自分の店の料理を工夫して客に満足感を与えるようにしてもらいたいものです。
私はあらためて考えました。こんなシェフ、料理人、運営会社だけが悪いのではなく、これを企画する百貨店、そして購入するお人よしの客もいけないのではないかと。
客側がしっかりした目と舌をもてば、このような人たちが跋扈することはなくなると思います。