野田岩よ、いい加減に真実を公開せよ

またまた読者の方から情報をいただきました。城南地区に広く展開している「モリモト」というデヴェロッパーが発行している「SUMAU(すまう)」(vol.025)という情報誌で、相変わらず「野田岩」の五代目が「冬場以外は天然鰻を使っている」と豪語している、とのこと。そしてわざわざその情報誌を送ってくださったのです。
すぐに目を通したのですが、正確には「野田岩」五代目が書いているわけではなく、「原寸グルメ録」という連載物に「野田岩」が取り上げられてそうのように紹介されていたのです。グルメな写真家といわれるリウ・ミセキ氏の写真と、記事は稲垣緑氏という人のシリーズ物。このグルメ写真家も野田岩の鰻をべた褒めしたコメントを載せています。今回はその部分を引用させていただきます。
ここにある「兼次郎さん」とは「野田岩五代目」の方です。

納得できる食材を追求することは、歴史ある暖簾を受け継ぐ兼次郎さんにとって、決して譲れない部分。養殖でも上質な鰻を見つけることができた現在は、4月頃から12月頃までは利根川や東京湾の天然鰻、そしてそれ以外の期間は、南アルプスの美しい水をたたえる静岡・焼津港から養殖鰻を仕入れている。

この写真家とライターのお二人は、営業時間中に店を訪問したことがあるのでしょうか。五代目が炭火台の前でポーズを作っている写真がありましたが、厨房の中へ入ったら次から次へ捌いている鰻が「天然」か「養殖」かわかるはずです。
彼らが見た目で天然か養殖かがわからないとしても、天然鰻の漁獲量が養殖に比べてはるかに少ないということは知っているでしょう。もしそんな知識もなくて、グルメな写真家、グルメ物の記事を書くライターと名乗るなら厚顔無恥というものです。
行列ができるほど賑わい、次から次へと捌いている鰻がその希少な「天然鰻」であるはずがないのは、ちょっと知識があれば誰でもわかることです。そして店内で女性スタッフに聞いてみればすぐ確認できます。「この鰻重や蒲焼は天然ですか」の問いに、彼女らは「白焼きだけが天然で、あとはあるかどうかわかりませんが時価で用意させていただいております」と答えます。
つまり、年中ほとんどの客が食べている鰻はぜーーんぶ「養殖」なのです。それを、雑誌で引用文のように紹介してしまっては、「野田岩」は冬季を除いて全部「天然鰻」なんだと純粋な読者は騙されて店を訪問するではないか。まさに「偽装天然鰻」と言っても過言ではないインチキ宣伝。「野田岩」は今回だけでなく、以前から各雑誌やガイド本にこのような言い回しを紹介させていますし、店内でも「針がある可能性があるから注意」といった表記をしていますから、罪は深い。
料理人とお友達になりたがるランチ限定、自称食通のAKIKOさんも天然だと思っていたくらいです。素人とは思えない食べ歩きや活動、そして立派なHPを主宰している人でも「天然鰻」と思い込んでいたのですからその「インチキ宣伝」の効果は絶大ですが、彼女、ホントに食材知識は充分なの?
http://2.suk2.tok2.com/user/bishokudou/?c=014
(2004年9月20日コラム参照)
私は3年前からこのことを指摘し続けてきました。あたかも店で出している鰻が全部天然と受け取られるような店内表記、雑誌宣伝をするな、と。
また、野田岩レベルで仕入れる天然鰻なら、下手すると養殖鰻のほうがおいしい場合が多い、とも言ってきました。当たりはずれが多い天然より安定した養殖のほうが美味しい確立が高い。何が何でも天然ではない。産卵するため川を下って河口付近でプランクトンを沢山食べた「下り鰻」が最高というのが定説ですが、東京湾(川でなく海)や川を上って痩せた鰻が美味しいはずがありません。
この間違った「天然伝説」を世に広めた罪ある人がもう一人います。自称料理評論家の山本益博さんです。彼の著書「東京・味のグランプリ 勝ち抜いた59軒」(講談社)では、「野田岩」は天然鰻が取れない冬季はアイルランドから天然鰻を仕入れるほど拘っていると店宣伝していますが、日本は「アンギュラ ジャポニカ」という種。欧州方面の「アンギュラ アンギュラ」とは種が違います。ぶつ切り赤ワイン煮に使用されるような「欧州の種」が蒲焼で美味しいものなのか。最近は「野田岩」でもそんな事(アイルランドから仕入れる)と言っていませんから、アイルランド産輸入は失敗に終わったのでしょう。
私は「野田岩」の五代目店主、そしてその6代目になる婿養子に言いたい。
書いてあることはまったくの嘘ではないかもしれない。詐欺ではないでしょう。確かに天然鰻も仕入れている。しかし、どう読んでも主力製品が養殖鰻だとは受けとれない、あたかも天然鰻しか仕入れていないように読者に受け取らせる言い回し、自分が食べているのは天然鰻だと勘違いしている客が多い現実を見て、胸が痛まないのか。子孫に胸をはれるのか。こんな「ひっかけ」や「釣り」、はっきり言うと「詐欺まがい」をやってまで客を集めて利益を上げたいのか。卑しいことだと思わないのか。
今すぐにでも、「天然鰻は希少なため、当店も入手量は限られております。当店は以前から品質が安定している「養殖鰻」を主体に鰻重、蒲焼を提供しております。天然鰻は必ずしもすべて美味しい物ではありません。時期や収獲場所、個体差により当たりはずれが多いものです。しかしそれでも天然鰻の風味を試されたい方は、有無をスタッフにお尋ねください。入手しているときは時価で提供させていただきます。」と改めるべきでしょう。
老舗や職人としての「矜持」、人としての「誠実さ」が少しでも残っているならの話ですが。
煽り雑誌を出す出版社の編集者、そしてライターたちも猛省してもらいたいものです。
最後に。持ち帰り用の真空パックの蒲焼は、「野田岩」では捌いていないでしょう。焼津の養鰻業者から捌いたものを仕入れているのが、以前店先に積まれた仕入れ梱包でわかりました。有難がって頼むような物ではないようです。