第993回 性格の悪い料理人の店にうまいものなし

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  • 2006年5月29日(月)
いよいよこのコラムも今日を入れて4回となりました。
多分コラム上の回数表示では
あと4回では1000回に達しないと思いますが、
先々週の4回が諸般の都合により欠稿となりましたので、
友里としては木曜のコラムで1000回の区切りと考えております。
卒業とともに微力ながら新しくサイトを立ち上げることにしました。
URLは http://www.tomosato.net(※1)となりましたので
ここにお知らせ申し上げます。
正式なスタートはここを卒業後
(つまり6月2日以降)となりますが、
明日の30日から仮オープンする予定ですので
チェックしてみてください。
いくつか新しいものを用意しております。

さて、今日から3回、友里征耶として拙著やコラムで当初より
「なんとかの一つ覚え」のごとく唱えてきたフレーズの
3年経ってからの検証であります。

「性格の悪い料理人の店にうまいものなし」
言葉が足りなかったようです。
正確には「性格の悪い料理人は、客のことを考えないので、
美味しい料理やCPのよい料理を造らなくなる」

性格に難のある料理人でも
選んだ良質な食材で本気で造ったならば、
人がビックリするくらい美味しい料理を造れるでしょう。
TVなどのコンペやマスコミを接待してのイヴェント、
親しい仲間内での料理など
コスト意識がない場合だけ当てはまることであります。
しかし日常の店営業ではそうはなりません。
ここでいう「性格の悪い」とは、
料理評論家、フードライター、
レストラン・ジャーナリストたちの持て囃しで勘違いし
我を失った料理人、
客を客とも思わず傲岸不遜な態度をとるようになった料理人、
流行っているからですが
手を抜けば簡単に利益がより上げられることを知り
それを本能にまかせて実行してしまった料理人、
などであります。
美味しいというか
他店よりレベルの高い料理をそれなりの価格で出すが、
その場(ホール)の空気を読むことが出来ず、
客に不快な思いを与え続けてどんどん客を失ってしまった料理人
(皆さん、すぐピンと来ますよね)もこの範疇であります。

私は、飲食店経営はそれほど儲けられるものではないと考えます。
原価率が3割だ、2割だと低いといっても、
地代や人件費など他の経費がかなりかかるからです。
そして、キャパは限られていますから売上には限界があります。
高額化を狙っても、
客単価は高額店でも料理だけでは3万円が限界でしょう。
(一発を狙ってステーキで10万円つけると客は当然入りません)
スケールメリット、量産効果はとりにくい業態です。
多店舗展開はそのスケールメリット、
売上増と利益増を受けられる飲食店の唯一の手段でありますが、
高レベルを店で維持することはできないので
高額店、高級店にはまったく向きません。
確立したレシピ通りに造れるだけのスタッフで充分な
客単価数千円の店にし、
多店舗展開して原価率をかなり落とさなければ
大きな利益を上げることは不可能でしょう。

ちょっと流行ったからといって、ポンと数千万円の絵画を買い、
高級外車に乗れるということは普通に考えたら不可能。
どこかにしわ寄せが来ているということです。
調理の手抜き、食材のレベル低下、
客回転をあげてのサービスの低下などですね。

私は以前から
「料理人や飲食店経営者は儲けるな」とは言っておりません。
客が満足する店、支払いに見合った店にしようとしたら、
そんなに儲けられないのが
この飲食店経営だと言っているだけであります。

料理人は何に生き甲斐を見つけるか。お客の満足顔を見ることか、
福沢諭吉の顔を沢山見ることなのか。
後者を選ぶ料理人や経営者が多いのが残念です。

※1 http://www.tomosato.net